2019/08/10 -尼崎インキュベーションセンターⅡ- (中日本ボクシング観戦記番外編) ボクシング選手名鑑ピックアップ!

2019/08/10 -尼崎インキュベーションセンターⅡ- (中日本ボクシング観戦記番外編) ボクシング選手名鑑ピックアップ!
 
 

【50Kg契約4回戦】
新生 佳弘(勝輝) vs 川井 稜(石川ジム立川)

新生 佳弘 4戦1勝2敗1分
川井 稜 4戦2勝(1KO)1敗1分 サウスポー
 

駆け引き合戦の色が濃い立ち上がり、新生の肩越しに川井が左フックを撃ち込んだのがオープニングヒット。
さらに同じパンチをもう一度…新生も左ストレートを突き刺すが、川井がもう一度肩越しの左フック。
さらに顔面へのジャブから右ボディストレートも突き刺し、この局面では川井が駆け引き勝ちか・・・。

すると両者が交錯した刹那、川井のフックがかする様に新生のアゴを捉え、新生がダウン。
立ち上がったが、ふらつき完全に足に来ている新生。
なんとかファイティングポーズをとって試合は再開されるが、
川井が一気にパンチをまとめたところで、レフリーが割って入って試合をストップ。
 

TKOタイムは1R 1分15秒
 

アゴ先を掠める一撃は脳を揺らすと聞くが…ここまで典型的なシーンは初めて見たように思う。
たった1分弱ではあるが、そのシーンが訪れるまでの間、川井ははっきりと上回っていた。
ただし、12分間もあれば、あの手この手でお互いに主導権を奪い合うもの。
新生としては、何かアクションをする前に試合が終わってしまったようにも感じる。
もう一度、試合を見てみたい…この日の新生を指して、何かを言うことはできないと感じた。
 

駆け引き合戦の主導権をいきなり握った川井。
肩越しの左が当たると判断した途端、そのパンチを積極的に狙い始めた。
ボクシング頭脳の高い選手のように感じる。

あっという間に終わってしまった試合…やはり、川井の全貌は見えていないが…
それでも、1分に満たない時間に放たれた川井の魅力は
KOシーン以上に、主導権を奪う速度だったように思えた。

両者とも、また遠征観戦に訪れた先のリングでもう一度出会いたい。
叶うことなら、中日本のリングへも…。
 
 

 

【バンタム級4回戦】
横山 真音(勝輝) vs 森下 嵩弘(エディタウンゼント)

横山 真音 2戦2勝(1KO)
森下 嵩弘 14戦3勝(1KO)11敗1分
 

1R、お互い足を止めて見合う中、先に踏み込んだのは横山…右ストレートを強烈にヒットさせる。
さらに長い距離からジャブを突き刺した横山だったが、森下も潜り込んで強烈にボディを襲う。
お互いに左フックを相撃ちすると、ラウンド中盤には密着して押し合う中、
森下が左フックを強烈にヒットさせ、横山がクリンチに逃れる。
以降、押し合いながらのフィジカル勝負となる中、お互いに強烈なヒットを奪い合う。
 

2R、左フックを撃ち込みながら飛び込んでパンチをまとめる横山。
密着したところで、強引にパンチを捻じ込んでいく森下。
お互いに踏み込んでの勝負になり、頭が衝突する場面も多いが、両者消極的にはならず。
ラウンド終盤には入ろうとする森下に対して、横山の左フックが刺さる場面も。
 

3R、ジャブから入って一気に手数を増やした森下。
しかし横山はいなしながらカウンターで捉えて行き、森下をロープに詰める。
中盤、押し合いの展開になると、わずかにできた距離に強烈にフックを走らせる横山。
いったん下がって距離を作った所から、踏み込んで撃ち込み始めた森下。
横山は腕と肩でいなしていく。
 

4R、激しく撃ち合う中、わずかにできた距離に先にパンチを走らせるのは横山。
さらに森下が入るところにもしっかりとパンチを合わせて行く。
密着した押し合いの時間が長くなった試合、横山は押し負けず…左右フックで森下を襲う。

距離ができたところ、飛び込みながら左ボディを突き刺した森下。
試合は次第に森下が押し込めば、森下のパンチが刺さり、横山が押し込めば横山のパンチが刺さる展開へ。
押し勝った方が相手を捉える…お互いが鍛え上げたフィジカルのぶつけ合い。

ここまで、数多くのパンチをぶつけたのは横山…判定的には横山有利か…。
試合終了直前、カウンターの右ストレートを強烈に撃ち込んだ森下だったが
逆転の一撃とはならず…試合終了のゴングが鳴る。
 

マイジャッジ 39-37 横山

公式ジャッジ
39-37、39-38×2

勝者:横山
 

4回戦で10敗以上の選手が、デビュー2連勝の選手に迫った試合。
1Rで強烈に効かせ、最終ラウンドも逆転の光を感じる右ストレートを撃ち込んだ森下。
横山が窮地の中で、フィジカル勝負に勝って泥臭く判定をさらった試合に見えた。

戦績から見れば、横山勝利予想が立つ試合だっただろうと感じる。
しかし、11敗の戦歴を刻んだ森下は、簡単な相手ではなかった。
ここで泥臭く勝ちきった横山に、勝負に対する強さを感じる。

試合としては面白くないと言われてしまう類の、押し合う時間の長い試合。
しかし、それはお互いに鍛え上げた体をぶつけ合う、純粋な肉体の勝負でもあった。
試合のリングに向かう前、数週間に及んでお互いが創り上げた肉体の…。

ポテンシャルでは横山…しかしその展開に持ち込んで試合を拮抗させた森下。
経験という積み上げしもの、肉体という積み上げしもの…
様々なものがぶつかり合った試合展開…背景のドラマが垣間見えるよう。
両者に「ナイスファイト」の声が自然に出た。
 
 
 

【54.8Kg契約4回戦】
竹嶋 海刀(勝輝) vs 濱口 稜生(エディタウンゼント)

竹嶋 海刀 8戦5勝3敗
濱口 稜生 13戦6勝(2KO)5敗1無効試合
 
 

1R、お互いにどっしりと構えてスピードに乗ったパンチを交換する立ち上がり。
竹嶋がいきなり右のオーパーハンドで横倒しのダウンを奪う。
立ち上がった濱口…ダメージはどうか…。

再開後、圧力を強めて攻めて行く竹嶋だが、
竹嶋が左フックを強烈に撃ち込んだその撃ち終わりに濱口が左フックを撃ち込んでの反撃…。
竹嶋も踏み込んで左ボディで濱口の腹を強烈にえぐる。

タイミングよく右のオーバーハンドを撃ち込んだ竹嶋、
左フックも何度も強烈に突き刺す竹嶋だが、濱口はダメージを表に出さず。
 

2R、丁寧にジャブを突いていく濱口、立て直しにかかる。
近い距離では回転よく竹嶋が捉えて行くが、濱口はもらいながらも左フックを返して反撃。

足を使って一定の距離を保つようになった竹嶋は、何度も強烈な左ボディを突き刺す。
それでも丁寧に丁寧に左を突き続ける濱口は、ラウンド終盤、ジャブから右フックに繋げる場面を作る。
 

3R中盤、竹嶋の左フックがカウンターで突き刺さり、濱口が足元をフラ付かせて後退。
圧力を強める竹嶋だが、濱口はバランスを立て直してここを耐えきる。

ラウンド終盤に差し掛かる頃、濱口が劣勢の場面で逆に手を出していく中
竹嶋は右ストレートを強烈に2度ほど突き刺してみせる。
近い距離での撃ち合いは、上体柔らかく濱口の攻撃をいなしながら、自らの拳を撃ち込む竹嶋が上回る。
 

4R、左を外してワンツースリーと撃ち込んでいく竹嶋。
それでも、濱口は愚直に丁寧に左を出し続ける。
中盤、愚直に出してきたジャブから繋げた濱口の右が竹嶋に突き刺さる。

強烈にヒットしたように見えたが、竹嶋はダメージを感じさせず。
ラウンド終盤にも竹嶋のコンビネーションの合間に濱口の右が刺さる場面が…。

濱口をいなしながらボディへ顔面へ…回転良く、鋭く撃ち込んでいく竹嶋。
竹嶋が数多く捉える状況は変わらないものの、
残り2R…濱口は愚直に出してきた左から繋げる右で、状況打開の光を感じさせる。
 

5R、常にコンビネーションで捉えて行く竹嶋。
ヒットでもダメージでも、ポイント的には圧倒的に上回っているように見えるが、
もらいながら撃ち込まれる濱口の右のタイミングはヒヤリとさせる。

左を刺しながらプレスをかけ続ける濱口に対し、竹嶋は足を使って強烈にボディを突き刺すと
さらに顔面にパンチをまとめていく…。
 

6R、コンビネーションを撃ち込んでいく竹嶋のパンチの隙間に右を差し込む濱口。
しかし、その右に合わせた竹嶋の右ストレートが突き刺さり、濱口が腰を落とした。
ここで一気に攻め込んだ竹嶋…ロープに押し付けて一向に止まぬ手数でラッシュ…
濱口は手を返す隙間なく、レフリーがここで試合をストップ。
 

TKOタイムは 6R 35秒
 
 

濱口がしっかりとガードしているパンチも多く、残り2分半…最後までやれたようにも思う。
しかし、ここまでの被弾の多さと、手を返せないままの中、止まらぬ竹嶋のラッシュ。
竹嶋がまさに「TKOを呼び込んだ」決着シーンだったように思う。
 

最後のラッシュは20秒以上に及んだように思えたが、
勝利者インタビューでは全く息の切れていなかった竹嶋。
今後の8回戦も悠々と戦って行けるだろうと感じる。

上体が柔らかく、被弾も最小限…タイミングと回転のいいコンビネーション。
持ち合わせの多い中、攻め込むときも、しっかり判断した上で。
引くときもしっかり判断した上で…。

ベテランの領域に入って抜群に力を発揮する選手の、若かりし頃の試合を見ているようだった。
経験則が積み重なれば積み重なるほど、その判断の精度とスピードは上がり、
そしてそれは確信を得たものとなっていくだろうと感じる。

これでA級昇格、ここからランキング獲得、そしてタイトル戦…。
そのたびに力を増すような想像ができてしまう。
最終的に、周りが思っている以上のところに辿り着く選手だと感じた。

トラブルがなければ、数年後、国内トップ戦線に浮上する選手…。
「またまた、せきちゃんは…」なんて言われてしまうかもしれないが、
そんなことお構いなしに断言しておきたい。

まだ、その力はない。
ただし、その力を必ず着けてくる。
その時を楽しみに待っていたい。
 
 

濱口の一方的な敗戦だった試合、不器用そうな濱口は見た目そのまま不器用なボクシング。
スピードも切れ味も感じない…それでもB級1勝の位置にいるボクサー。
様々なもので竹嶋に上回られていた…しかし、愚直に丁寧に左を出し続け、
勝利の可能性を最大限に引き上げていたように感じる。

反復と、自分の積み上げたものを信じる強さ。
ボクサーがどれだけ練習しているかなんて、客席のファンには見えない。
しかし、それをリング上で垣間見せるボクサーはいる。
そんな時、ボクシングの強さではなく、そのボクサーのもっと内側の強さに触れるような気持ちになる。

敗れてリングを降りる濱口に…「強いボクサーを見た」。
そんな思いが沸きあがった。
 
 
 

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