2018/11/11 -城東区民センター 大阪天神興行Ⅲ- (中日本ボクシング観戦記番外編) ボクシング選手名鑑ピックアップ!
■スーパーライト級6回戦
石角 悠起(大阪天神) vs 平澤 宏樹(チーム侍)
石角 悠起 23戦14勝(5KO)8敗1分 サウスポー
平澤 宏樹 2戦1敗1分
大阪天神ライト級王座、タイ国スーパーフェザー級王座、WBFアジアスーパーフェザー級王座…
3つの王座を獲った石角と、ボクシング未勝利の総合格闘家の平澤の一戦。
石角はチーム侍の選手とは3度目の対戦。
入ってきたところに合わせるとコンビネーションをまとめる平澤。
細かく回転のいい連打に、石角が後手にまわる展開。
2R終盤、石角が圧力を強めると二人は激しい撃ち合いに。
4R、左ストレートから入る石角、これが何度も平澤の顔面を跳ね上げるが
ラウンド終盤には平澤が細かく撃ち出したパンチをまとめてペースを引き戻す。
5Rには平澤のフックで意識を飛ばしたようにたたらを踏む石角。
最終ラウンド序盤は石角がペースを握るも、後半には平澤が手数でまくって試合終了のゴング。
左ストレートを中心に、効かせるようなヒットが多かったのは石角。
細かくヒットを重ねた平澤…際どいジャッジになりそうに思えた。
マイジャッジは58-56で平澤。
59-58 石角
58-57 平澤
ジャッジ2者の採点は1-1…
最後の一人は…
58-56 平澤
総合格闘技が中心のチーム侍…これまで2名が石角へ挑んでいたが、平澤が初勝利。
2足の草鞋を2足ともきっちり履いているのだろう。
ボクシング未勝利の総合格闘技の選手が、地域王座を獲得している石角に勝利。
これはちょっとしたアップセットにも思えた。
そして、他格闘技の選手がボクシングで活躍できることを証明したようにも思える。
またもやABCジャパンのリングでボクシングの固定観念に一石が投じられる。
ノンタイトルでチャンピオンに勝った平澤…。
となれば、平澤にチャンスが与えられて欲しいようにも思う。
叶うなら、ベルトを賭けて石角vs平澤のリマッチが見たい。
石角にはリベンジのチャンス、平澤にはベルトを得るチャンスとなる。
■フライ級8回戦
恵良 敏彦(大阪天神) vs ジャック・アミサ(インドネシア)
恵良 敏彦 12戦9勝(6KO)3敗 タイ国フライ級王者
ジャック・アミサ 68戦21勝(14KO)45敗2分
敵地タイでタイ国王座を獲得しての凱旋試合となった恵良。
メインイベンターとして興行のトリを飾る。
ウルトラセブンの曲で入場し、3Rでの予告KOを掛け軸で宣言。
相手は延々と敵地での試合を繰り返してきたインドネシア人選手。
敵地で戦って来た恵良が、逆の立場で相手を迎える。
試合が始まると、カウンターでのKOを狙って強振するアミサ。
倒さなければ勝ちはない…そんな思惑からか、恵良が入って来るのを待ち続ける。
すると、1Rからアミサの狙いがハマる…強烈なフックが恵良を捉えて恵良の足元が揺れる。
2R、3Rもまた、入ったところや、クリンチの離れ際に強烈なフックをもらって、
恵良が足をバタつかせるシーンが訪れる。
以降、なかなか入っていけない恵良…しかし、試合後半には強烈に腹を効かせて見せ場を作る。
7Rに訪れたKOチャンスだったが仕留め切れず…。
7R、バッティングの減点がアミサに…
ポイント的に厳しそうな展開だっただけに救いの減点かにも思えたが、
8Rに恵良のボディが低く入り、ローブローの減点でチャラに…
試合は判定へもつれ込む。
マイジャッジは76-74でアミサ。
はっきりしないラウンドも多く、逆もあり得る状況。
判定は3-0で恵良の勝利。
リング上で、悔しそうな表情を見せる恵良。
アミサは断る恵良を半ば強引に肩車。
潔く、そして快活に恵良を勝者として称える。
敵地で戦い続ける男の信条を見たように思えた。
「俺、今回勝ちじゃないんで。」
そう切り出した勝利者インタビューの恵良。
「普段敵地で戦っているから、KOでしか勝てないとKOを狙ってきたアミサの気持ちがよく分かった。」
恵良の言葉に…恵良を称えたアミサの笑顔が蘇る。
勝利者がコールされたあとのやり取りは、同じ境遇を経験している者同士だったからこそなのかもしれない。
勝者として、メインイベンターとして、悔しさを押し殺しながら…
最後は客席に万歳三唱をリクエスト。
全員での「ばんざいばんざいば~んざい」がこの日の興行の締めとなった。
恵良チャンプ、凱旋試合は悔し涙の万歳三唱。
これはこれでドラマ…そんな感慨に浸る。
判定が明らかにおかしいとは思わなかったが、逆の判定も充分にあった試合。
派手な演出で入場し、負けでもおかしくない試合で勝者となった恵良。
三枚目になってしまった恵良は、勝利者インタビューでインドネシア人の気持ちに言及した。
これは、海外で戦ったボクサーにしかできないことだと思う。
なんだか男はつらいよを見た後のような…カッコいい三枚目を見たように思えた。
この日、中日本から来ていたファンと一緒にかなり遅い時間に会場を出て、梅田へ向かう。
一言、挨拶をしておきたい方が出てくるのを待っていたところ、かなり遅くなってしまった。
夕飯を手短にうどんで済ませた後、夜行バスへ…。
中日本から来たファンも僕と同じ道のり。
このまま、東京へ直行…翌日の後楽園ホールへ向かう。
消灯した夜行バスの中、窮屈な椅子で眠りに落ちそうになりながら、この日の興行が頭を過ぎる。
もし、ジャック・アミサに「敵地ではKOじゃないと勝てない」という思いがなかったら…。
もっと違う戦い方をしたのではないだろうか。
カウンター狙いでの強振を繰り返したアミサ。
アジア人ボクサーが同じような戦い方になる場面は多くある。
地元判定は世界中の問題だ。
だからこそ、敵地転戦するボクサーは、
イチかバチかを含めた倒す形に傾倒してしまうのではないか。
アミサ本来の姿は別にあるのかもしれない。
「アジア人は日本で戦うより現地で戦った方が強い」
そんな風に言われることがある。
もしかすると、世界中の常習化してしまっている地元びいきの判定が、
彼らの敵地での強さを奪っている可能性もあるのかも。
もちろん、他にも理由があるかもしれないし、的外れかもしれない。
ただ、もしもアミサにこの夜と別の姿があるのであれば…。
それを見てみたい…。
インドネシア人ボクサーに思いを馳せながら、眠りに落ちていく。
目が覚めれば東京。
また、ボクシングが待っている。
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