2017/8/6 刈谷あいおいホール-4試合目、5試合目(中日本ボクシング観戦記) ボクシング選手名鑑ピックアップ!

2017/8/6 刈谷あいおいホール-4試合目、5試合目(中日本ボクシング観戦記) ボクシング選手名鑑ピックアップ!
 
 

■中日本新人王決勝
【フライ級5回戦】
近藤 冬真(蟹江) vs かべりーん 祐耶(駿河男児)

・近藤 冬真 5戦4勝(1KO)1敗
・かべりーん 祐耶 9戦4勝(4KO)3敗2分
 

試合開始直後から長いジャブを伸ばしていくかべりーん。
ロングレンジを住処とする静岡の毒蛇が、長くしなるジャブで近藤の飛び込みを誘う。
迂闊に飛び込めば、毒牙のような強烈な右が待ち構える。

しかし、近藤は特筆すべきガードの巧さで、その毒牙さえはじき返し距離を潰す。
多少の被弾にも怯まず、内側から崩しにかかり、鋭利な角度で左ボディを突き刺す。
さらにかべりーんがダッキングしたタイミングで右ストレートをテンプルに撃ち降ろす。

1R終盤には近藤の右フックが強烈にかべりーんを捉える。
明らかに効かされて、ロープを伝ってよたよたと後退。
近藤はかべりーんの頭に追撃の右を撃ち降ろす。

このダウン目前のシーンで、かべりーんは負けん気強く撃ち返し、ラウンド終了のゴング。
 

2R、ガードでかべりーんの強打を殺しつつ、振りの大きなかべりーんの内側にパンチを滑り込ませる近藤。
鋭利な左ボディフックから上にダブルで返す左フックも強烈。
かべりーんがダッキングすると、右の撃ち降ろし…。
相手の態勢に応じて、的確にパンチを選択する近藤…強い…。
 

3R、開始直後にコンビネーションを叩き込んだかべりーん。
その強打に逆転の希望が灯るも、怯まずに撃ち込んでいく近藤…主導権を渡さない。

ボディが効いたか…徐々に失速していくかべりーん。
コーナーに追いつめられて集中砲火されるも、合間には必ず手を返していく。
倒れないかべりーん…逆転を…自分の拳を信じる男は簡単には沈まない。
 

4R、足が死んでしまったかべりーん。
ロングレンジの攻防に秀でたかべりーんだが、もう距離は近藤の思いのまま。
一方的に襲われる中、手を返し、強烈なカウンターに襲われる。
 

5R、展開を打開する手段がなさそうに見える中、それでも逆転を狙って大きく振って行くかべりーん。
クリンチの数が増えた最終ラウンド…ぐずぐずに疲弊しながら、諦めを見せないかべりーん。

ラスト10秒、既に輝きを失っていたように思えたかべりーんのパンチが、一瞬だけ輝きを取り戻す。
最後の最後…逆転に望みをかけた鋭い右ストレート。
しかし、これも近藤に躱され、無情のゴング…。
 

50-45、50-45、50-46
 

3-0
勝者:近藤 冬真

近藤…負ける姿が想像できない…。
凄みを増して来た印象。

一方的な展開の中、最後まで心を折らなかったかべりーん。
最後の最後まで、一発に賭けた。
自分の一撃を信じた。

内容的には圧倒的な敗北…しかし、その姿はプロにふさわしい散り方。
見事…心からそう思う。
 
 

 
 

■中日本新人王決勝
【スーパーフライ級4回戦】
松田 優希(市野) vs 松浦 克貴(岡崎)

・松田 優希 1戦1勝(1KO) サウスポー
・松浦 克貴 4戦4勝 

リングアナウンサーの選手コールの時…
何故か松田だけ”イケメンゴリラ”の愛称が読み上げられると言う…。
そして、ゴリラのマスクをかぶっての入場。

どんどんやれ、こういうの!
 

相手は森 武蔵(薬師寺)と並んで、中日本新人王最注目株の松浦。
距離の支配者と呼びたくなる、距離感抜群の選手。
しかし…松田はそれをひっくり返すだけの両拳を持っている。

攻めて行きたがる松田と、距離を測る松浦。
静かな立ち上がりだが、二人の温度差が凄い。
入るタイミングをうかがう松田…やはり先に当てていったのは松田。

強烈な左ストレートをボディに差し込む。
さらに返しのフックを撃ち込み、好戦的に主導権を握りにかかる。

しかし…思い切って入ったところを、松浦の一撃が奪う。
一瞬堪えたが、そのまま尻もちをつくダウン。
この一撃…左フック、左ストレート、右アッパー…
何が当たった…?と観戦者で割れるほど、鮮烈な一撃。

再開後、ダメージを残す松田に、一気に攻めて出る松浦。
しかし…松田は猛烈に反撃し、激しい撃ち合いに。
有利な流れにもヒヤリとする強打を浴びてしまう松浦。

しかし…揺れるのはダメージを色濃く残す松田の方。
仕留め切るのが正解か…安全策が正解なのか…
自分の中で、その答えが出ないままこのラウンドは終了。

松浦サイドにとってはヒヤヒヤしただろうダウン後の展開。
 

2R、松浦は勝負を選択する。
多少の被弾はおかまいなしに、仕留めにかかる。
ただし、前のラウンドと違い、ガードを固めてまともな被弾は極力避ける。

試合は好戦的な撃ち合いに…逆転を狙う松田のパンチは大きくなり
松浦のコンパクトなパンチが松田を揺らす。

そして、お互いのフックが交錯した瞬間、リングに崩れ落ちる松田。
ここも立ち上がり…食らいついていくが…。
止まない松浦のラッシュに、松田の反撃が出なくなったところでレフリーがストップ。
 

TKOタイムは2R 2:03。
 

松浦は…こんな選手じゃなかった。
抜群の距離感、実力は飛びぬけていたが…
後半に失速する悪癖があり、そこに脆さを感じていた。

いつか日本タイトルに挑戦してくれるのではないか…そんな期待を抱きつつ、
チャンピオンになるようなイメージは持てなかった。

ダウンを奪ってからの猛烈なラッシュ。
あれは、走り込んでいなければできないもの。
無茶な勝負に出れば当然、自爆を誘う。

課題を完璧に潰して来た…そう感じる姿に、この先々ぐんぐん伸びていく姿が想像できる。
もしかしたら、この男…マジでやるかもしれない。

ただし…期待する分、言いたくなるのは…ハラハラさせんなよ…と。
勝負どころなら、イクのは当然…しかし、リスクを背負い過ぎているようにも感じた。
あそこで仕留めなければ危ない試合だったのか…。

僕にはそうは思えなかった。
もし、松浦があそこで”勝つ為”に撃ち合っていったのであれば…。
それは松浦自身が松浦を過小評価してやいやしないか…と思ったりする。

松浦の強さを知らしめるような派手な試合内容だったが…
僕は松浦は…もっともっと強いんじゃなかろうかと思う。

ファンが喜ぶ試合をするのがプロとして当然なのかもしれない。
しかし…無茶をするならそれなりのステージがある。
余分なダメージ、余分な怪我を負わないような選択…そのうえで相手を圧倒する。
そんなことができてしまうボクサーだと思っている。

その点、2Rではきっちりと相手のパンチをリカバーしながら詰めに言った部分は流石と思える。
教訓に変えてくれれば…安心して見ていられるように思う。

まぁ…ニワカの戯言なんだけど。
負ければ終わりの新人王戦で、そんな余裕しゃくしゃくで勝てなんて、
いろんなものをナメているのかもしれないけど。
それ相応の期待をしてもいい選手だと思っている。

彼が戦うのは、日本のトップ戦線に世界ランカーが紛れてしまう階級なんだから…。
 

そして…松田。
強烈な一撃を持った選手。
身体能力はとても高い。

松浦さえいなければ…、中日本新人王として、全日本新人王を争うに相応しい選手だと思う。
来年もエントリーするなら、注目株に上がるだろう。
しかし…勝ち上がって行く先には、今日のような相手が待ち受ける。

松田がリングに這った一撃は、偶然ではないと思う。
「先に松浦のパンチが当たってしまった」なんて声も聞こえてきたが、僕はそうは思わない。

厳しく言えば実力負け。
だからこそ…松田というボクサーにとって幸運な敗北だったのではないかと思う。
ボクシングに負けて良かったなんてありえない。
それは承知の上…今日の負けは、ランカーに勝つ為、タイトルマッチで勝つ為の負け。

素人が偉そうに語って申し訳ない気もするけど…
ここから松田がまくって行くストーリーは格段に面白い。
強打とハート…そして真っ向勝負。

こういうボクサーがボクシングを解りやすく熱くする。
立ち上がり、勝ち上がっていってくれなければ困る。
そんな重要なキャラクターだと思っている。
 
 

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