2018/02/18 大阪天神興行-幕開け(中日本ボクシング観戦記【番外編】) ボクシング選手名鑑ピックアップ!
打ち鳴らされたゴング…エキシビジョンと言うには
あまりにも真剣そのものの表情を見せる両選手。
ヘッドギアをつけた両選手の拮抗した好試合が展開される。
プロとして遜色があるような内容の試合ではない。
なぜ公式戦として行われないのか…今度質問してみよう…なんて考えているうちに3分3Rが終了。
エキシビジョンのため、判定結果などは発表されない。
次の試合もエキシビジョンだが、赤コーナーは既にABC管轄や海外のリングで戦っている選手。
青コーナーは…多分プロとしての戦績はない選手。
ゴングが鳴ると、青コーナーの選手が突っ込んでいく。
完全なファイター型…スピードも身体能力も高く、パンチも重そうに見える。
ありがちな表現で言えば、小型タイソン。
赤コーナーの選手は、キャリアの差もあってか自由に撃たせているようにも見える。
「…抜いてるのか?」なんて感じる。
エキシビジョンで、経験差のある二人。
赤コーナー側の選手がレッスンするような形にも見える。
どんどん勢いに乗って攻めたてる青コーナーの選手。
すると時折、赤コーナーの選手がパンチを合わせて青コーナーの選手の顔面を跳ね上げる。
そのパンチの種類は少し特殊で多彩…いや、多彩という言葉がもったいなく思えるほど。
様々な軌道からパンチを飛ばしている。
徳山 昌守(金沢)のように突き上げるジャブを使いながら、フックを合わせ、オーバーハンドで合わせ…。
柔らかい体と、豊かなテクニック…。
しかし、それを飲み込まんとする青コーナーの選手の勢い。
2R、赤コーナー側が反撃を強めると、バチバチの撃ち合いに。
普段見るより少し狭いリング…当然選手たちの撃ち合いの頻度は増し、迫力は増幅する。
大きなグローブにヘッドギアをはめているが、それを忘れてしまいそうなほど。
赤コーナー側がある程度自由に攻めさせた結果、青コーナー側は完全に勢いに乗っている。
うまく合わせていく赤コーナー側だが、その勢いは止まらないところまで…
ここは少し誤算か…、激しくラッシュする青コーナーの選手に
赤コーナーの選手は何度も顔面が跳ね上がり、飲み込まれかける。
3Rに入り、青コーナー側が失速して最終のゴングが鳴るが…。
なんてレベルのエキシビジョンだ…なんて思う。
赤コーナー側の巧さも、それを飲み込まんとした青コーナー側の力強さも…。
想像以上の選手レベルに「なんだよこれ」なんて言葉が漏れてしまう。
あとで聞いた話だが、このエキシビジョンはプロテストだったそうな。
あのボクサーたちがこれからABCのリングで躍動するのか…そう考えるとどうしてもワクワクしてしまう。
エキシビジョン2試合が終了し、ここでようやくこの日の第1試合。
石角 悠起(大阪天神) vs 守屋 秀亮(チーム侍)
・石角 悠起 18戦12勝(3KO)7敗1分
タイ国スーパーフェザー級王者
WBFアジアスーパーフェザー級王者
大阪天神ライト級王者
・守屋 秀亮 1戦1敗
肩書的にはミスマッチにも思える試合。
しかし、守屋はシュートやキックのリングにも上がる選手。
単純な比較はできない。
ゴングが鳴ると、静かな立ち上がり。
お互い距離を測りあいながら、パンチを試していく。
スピードでは石角が上回るが、守屋のフックが石角を捉えるシーンも多い。
どちらかと言えば好戦的なのは守屋の方で、先手を取ってわずかながら1Rを獲ったように見えた。
2Rに入り、両者は撃ち合いに突入する。
1Rとは撃って変わって激しい攻防は拮抗…アジア王者に1戦1敗の選手がいい勝負を見せる。
いい角度でもらってもお構いなしに攻める石角。
猛烈に攻め込んでいく守屋。
お互いの顔面が跳ね上がり、どちらについてもおかしくないラウンド。
3R、石角が上下へ撃ち分け始める。
守屋も合わせるようにボディ撃ちの頻度が増える。
すると…石角の強烈なボディに「うぅ…」という守屋のうめき声が響く。
直後、前傾姿勢だった守屋の上体が「ぶはぁ!」と持ち上がる。
絶好のチャンスをアジア王者が逃すはずもなく、守屋をコーナーに追い詰め一気のラッシュ。
苦しい表情を浮かべて手を出せない守屋を、レフリーが助け出す形で試合はストップ。
3RTKO。
他格闘技からボクシング2戦目の守屋。
それでも、アジア王者に拮抗する力を見せた。
結果的には石角の貫録勝ちにも思える試合だったが…。
充分過ぎる抵抗を見せたように思える。
パンチ力もスピードも…強さを見せつけた石角だが、
ディフェンスは少しおざなり気味か…それが魅力なのかもしれない。
これまでを知らない分、初見の浅はかな感想になってしまうかもしれないが、
見ている人間を惹き付けるポテンシャルは間違いなく持ち合わせていると感じた。
JBCでは他格闘技とボクシングを並行して行うことを禁じている。
基本、他のものや新しいものは排除するのがJBCの姿勢だ。
ABCとJBCの大きな違いは、この試合からも感じ取れる。
この試合のあと、もう一つエキシビジョンが挟まれる。
赤コーナー側は、ヘッドギアに裸足。
青コーナー側は、ヘッドギアなし、裸足…そして柔道着、ヘビー級にも見える大きな体。
青コーナーは明らかにボクシング出身ではなさそう。
試合のルールは1分2R。
体重差と言うボクシングにおける絶対的アドバンテージを、ヘッドギアのありなしで補い
経験差のアドバンテージをラウンドの時間で補う。
…そんなエキシビジョンだろうか、なんて空想をしてみる。
詳しくはよくわからない。
試合は、一気に攻め立てた青コーナー側の勢いと圧力に押される形で
赤コーナー側は1Rと2Rにダウン。
自分に情けなさを感じたように目を真っ赤に、泣き出しそうになりながら立ち上がる。
実際、両者の間にもうけられたアドバンテージが、どちらに有利になり、どちらにどれだけ不利になるか…。
それははっきりとはわからない。
ただ、両者合意したルールなのだろう。
始まった試合にその辺りのことを言うのは意味のないことだと思う。
もちろん、階級制のボクシングとしては成り立たないルールのため、エキシビジョンとして行われている。
異種格闘技戦のような試合。
赤コーナー側の選手が立ち上がるときに見せた表情は、真剣そのものだったからこそ見せた表情に見えた。
大人は、いい加減に取り組んでいることに涙なんか見せない。
これは公式なボクシングではないし、そこからは逸脱はしている。
だけども、エキシビジョンと言う名の”戦い”であったことは間違いない。
他格闘技に疎く、ボクシングばかり見ている自分にとっては、
両者とも、公式なルールの中での試合を見てみたいと思った。
格闘技全般が好きなファンの意見も聞いてみたいが…。
少なくとも、感動できないリングではなかった。
真剣に取り組む男たち二人の姿が見れたように思う。
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