2018/02/18 大阪天神興行-ファイナル(中日本ボクシング観戦記【番外編】) ボクシング選手名鑑ピックアップ!
この日、3試合ある公式戦の2試合目。
森定 哲也(天勝) vs 向 裕也(TOP STAR)
森定 哲也(天勝) 11戦6勝(6KO)5敗
2014年度全日本スーパーライト級新人王
向 裕也(TOP STAR) 2戦2勝(1KO)
JBCのリングで全日本新人王を獲得した森定。
その後、2016年を最後に引退し、自身で天勝ジムを開く。
JBCのリングから遠ざかって2年、JBC管轄外のリングに上がる。
対する向はアマチュア時代に、のちに第69代日本バンタム級王者となる大森 将平(ウォズ)に勝利した選手。
2010年度インターハイではライト級ベスト8を記録している。
序盤、攻めていく向に、長身の森定が合わせる形が目立つ。
圧力も手数も向が優勢…森定は後手に回らされる。
それでも的確で鋭利なパンチで向をえぐる森定、
2年のブランクで錆びついたなんてことはなさそうに見える。
1R、2R、向の旺盛な手数と圧力に何度も顔面を跳ね上げられた森定。
鼻血を吹き出し、鮮血が飛び散る。
3R、ビッグパンチを幾度も顔面にもらっていた森定がついにダウン。
立ち上がった森定だが…ダメージは明らか。
しかし、ここから逆襲が始まる。
三重の鈴鹿ニイミジムでキャリアを積んだ森定。
中日本でよく見る”三重のボクサー”は毎回そうだ。
追い込まれれば追い込まれるほど前に出ていく。
4R、向の強烈なボディにフックを合わせる森定。
向のコンビネーションで顔面を連続で跳ね上げられながら前に出て
鋭利なフックを効かせると、一気にコーナーに追い込んでラッシュ。
なんとか手を出してコーナーを逃れた向だが…
森定があわや逆転TKOかとも思わせる山場を作る。
2度もマウスピースを吐き出してしまい、向にとっては明らかに苦しい展開。
その後、森定も1度マウスピースを口からこぼす…まさに死闘。
5R制で行われたこの試合の最終ラウンド。
二人は猛烈な撃ち合いを展開する。
技術的には向が勝っているように見えるが…
森定がまたコンビネーションで顔面を跳ね上げられ、反撃に転じようとしたところ…レフリーが割って入る。
レフリーストップによるTKO。
納得できないように悲しそうに首を振る森定。
森定の手が止まったわけではなかった。
その場面だけ見れば、ストップは早かったように思う。
ただし、あの場面まで立っていた森定が異常だった…。
4Rの森定の奇跡的な逆襲があったこともあって、
レフリーにとっては止めるタイミングがない試合になりつつあった。
僕は、あのタイミングで止めたことを英断だと思う。
森定は危険なパンチを幾度も幾度も浴びすぎていた。
その試合に賭ける男たちの戦い。
これは、まさに僕が刈谷あいおいホールや後楽園ホールで見ているものと遜色ない…。
それどころか、一度失ったリングに縋りつくような思いが伝わってきそうな戦いぶりは…。
これこそボクシングだよ…なんて思わせてくれた。
これでデビュー3連勝となった向。
実力を証明した形になったと思う。
…本当に強い選手だった。
自分が見ていなかったリングに、こんな選手がいたのか…。
そんな思いが沸き上がる。
続いてこの日のファイナル。
安井 克年(大阪天神) vs 本山 亮徳(TOP STAR)
・安井 克年 3戦3敗
・本山 亮徳 4戦4勝(4KO)
事前にもらっていた情報…
「本山 亮徳、2戦連続の体重超過」
今回は3キロ弱らしい。
ファイトマネー没収、罰金、さらにグローブハンデ。
処分はかなり厳しいものに思える。
思わぬ形でケチがついてしまった試合。
安井のセコンドには大阪天神ジムの会長、山口 賢一(大阪天神)がつく。
1Rから丁寧に攻める安井。
しかし、前の試合で飛び散った血が原因か、リングで足を滑らせるようなシーンが目立つ。
丁寧に崩しにかかっていた安井だが…。本山の強烈な一撃にダウン。
単純に体重差によって生まれるものとは思えない…本山はかなりパンチ力があるよう。
立ち上がった安井だが明らかにダメージを残しているように見える。
残り時間を何とか乗り切ってこのラウンドが終了。
2R、やはり丁寧に行く安井を…本山の一撃が粉砕する。
安井がもらった瞬間に投げ込まれたタオル。
しかし、勢い良すぎたタオルはリングを飛び越え反対側の客席へ…。
「マズい!」と思った瞬間に、タオルを投げた当人の山口が
凄まじいスピードでロープの間に体を滑り込ませて安井の元へ。
背中からばったりと倒れた安井。
レフリーは試合をストップ。
ピクリとも動かない安井に、リングに担架が運び込まれるが
意識を取り戻した安井は、担架を断り立ち上がる。
ふらつく足で、悔しさを押し殺した笑顔を作りながら、自分の応援に来た観客に”ごめん”のポーズ。
ことの経緯にほっと胸をなでおろす自分。
それにしても、もらった瞬時のあのタオルのタイミングはなかなか見れないものだと思う。
1Rのダウンもあって、準備していたのだろう。
安全に対する意識も高い。
別の試合では照明が眩し過ぎることをレフリーが指摘して
照明を落とすまでの間、試合を中断させる場面もあった。
普段ボクシングに使われる会場ではない為だろうが…見たことのない場面だった。
しっかりと管理・運営・進行されている。
本山の計量超過に関しては、ただただ残念としか言いようがない。
「計量超過で勝った卑怯者」と罵られても仕方がないとは思うが
その強さは否定できない事実だと感じた。
関係者も、ファンも、計量超過を喜ぶ人間はいない。
許容する人間はいたとして…その胸中は複雑だろう。
この選手がリングを失うのはあまりにも勿体なく感じる。
体重を守れないボクサーを繰り返し使いたいと思うプロモーターがいるだろうか。
世界的ビッグネームの中では、失態を繰り返しながらも、
その商品価値をつないでいる選手もいるにはいるが…。
その選手が稼ぎ出すビッグマネーがあって初めてそうなる。
…それはそれで汚さを感じてしまうけれども。
既に2度の失態を連続で犯した本山。
続きのストーリーを見てみたいと思うからこそ、今後まだチャンスがあるのであれば
同じことが起こらないようにしてほしいと願うばかりだ。
全興行が終わり、挨拶できるタイミングがあればと思い山口を探してみるが…。
自分のところの選手が失神KO負けしたばかり。
やることはたくさんあるだろうと思い、携帯でメッセージを送って会場を後にする。
色んな課題はあるだろう。
開催の告知や、情報に関してはかなり得にくい興行だ。
しかし、そもそも課題のない物事など存在しない。
コミッションとしての歴史はまだまだ浅い部類だが、歴史は継続して積み上げられるものである。
10年や20年を浅いと否定するのではなく、
30年先、40年先にある姿を想像して、応援すればいいんじゃないだろうか。
何よりも自分の知らなかった場所に、まぎれもないプロボクシングがあった。
宝物をもう一つ見つけた気分だった。
狭い会場に密集した観客の声で、スマホのボイスレコーダーに残した自分の声が
どれだけ聞き返せるかが、わからない。
今日見たものを、記憶が薄れる前に文字に残したい。
慌ててタクシーに飛び乗って新大阪に向かう。
この日見た新しい世界…興奮を引きずりながら、頭の中を色々な考えが巡る。
過去の日本IBFもまた、調べ直さなければならない。
この目で見たABCジャパンのリングは想像以上だった。
日本IBFも、ABCジャパンのリングを見た後では感覚が違うように捉えられるかもしれない。
そして、ABCジャパンのリングを人目に触れさせなければならない。
こんな面白れぇもん、大阪の一部のファンに独占させてたまるか…。
書きたいことが溢れて出てくる。
記憶が薄れる前に、早く帰ってPCの前に辿り着きたい。
…新幹線に飛び乗る。
22:45頃帰宅。
とりあえずシャワーだけ浴びて、PCに貼り付く。
すべて書き終えた現在、2018/02/19 3:15。
興奮のまま、書き上げたこの文章をじっくりと読み返しながら、少しずつブログにあげる予定。
明日はいつも通り朝から仕事だが…眠れそうにない。
行き過ぎた興奮に包まれたままだ。
僕が今日この目で見た一つの答え。
ABCジャパンのリングは、糞面白かった。
まだまだ分からないことだらけだけど、それだけはわかった。
一番大事なことだと思う。
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