2020/12/26 -刈谷・あいおいホール- セミファイナル、ファイナル(中日本ボクシング観戦記) ボクシング選手名鑑ピックアップ!

2020/12/26 -刈谷・あいおいホール- セミファイナル、ファイナル(中日本ボクシング観戦記) ボクシング選手名鑑ピックアップ!


【スーパーバンタム級6回戦】
テル のび太(緑) vs ヤノ・ジョン(駿河男児)

テル のび太 9戦5勝(2KO)3敗1分
ヤノ・ジョン 11戦5勝(2KO)6敗


1R、詰めていくファイターのテルに対し、小さく鋭く撃ち込んで迎え撃つヤノ。
短い距離を走るショートブローは見た目以上に致命的なダメージを与えることがある。
ピノイ(フィリピン人)の血統を持つヤノ、天性のものとも思える柔らかさで
テルの攻撃をかわしながら、鋭くテルを捉えて行く。

しかし、ラウンド中盤からテルがヤノをロープに押し込み始めると、
ボディを強烈にえぐる…見ていて吐き気が湧きそうな程痛烈。

ラウンド終盤、右ボディから右アッパー、左フックとテルを捉えたヤノ。
しかし次の瞬間、テルは下がることなく、逆に押し込みながら右ストレートを炸裂させる。

顔面へのコンビネーションでヒット数ではヤノが上回っているように見えるが…
テルのボディもインパクトの強いもの。
好みで判定が別れそうなラウンド。


2R、開始直後、お互いに危険なミドルレンジで大砲のストレートを交わし合うシーン。
一歩間違えれば試合が終わる…そんなスリリングな攻防からスタート。
僅かにパンチが届かない距離を維持するヤノ。
テルが飛び込んで来た瞬間にアッパーを突き刺すが、
テルは被弾承知のように全く怯まず、強烈に左フックでやり返す。

ヤノの迎え撃つパンチは何度も強烈にテルを捉えているはずだが…
ビクともしないテルがそのまま飛び込みボディを炸裂させる。
時折テルの右ストレートがヤノの顔面を強烈に捉るシーンも


3R、ずいずい前る生粋のファイター、テルに対し、ヤノが足を止めて応戦。
押し合いに下がらされながらも、コンビネーションで的確にテルを捉える。
激しい撃ち合いの中、中盤には逆にテルを下がらせて見せる。

しかし、テルの右ストレートがカウンターで突き刺さった瞬間、
明らかにヤノの動きが停止…ここで一気に襲い掛かるテルだったが
ヤノはガードを固めてなんとかこの場面を乗り切る。

ファイトはテルの土俵…しかし、ラウンド終了間際に撃ち合ったシーンでは、
コンビネーションで撃ち込むヤノのパンチが数多くテルを捉える。


4R、お互いに一定の距離を維持しながらの展開へ。
カウンターを狙い合う二人、突き刺さるときのタイミングはヒヤリとするものばかり。
試合が後半に入り、展開が少しずつ変わり始める。
終盤にはテルが足を使うシーンも。


5R、またもカウンターを狙い合う展開。
静かに見合うわけではなく、鋭く手を出しながら、その瞬間を引出しにかかる。
中盤、テルの右ストレートがかなりいいタイミングで突き刺さると
動きを落としたヤノに対して、テルが一気に攻めてかかっていく。

テルがヤノをロープ際に追いつめ、ラッシュを仕掛けるが、ヤノがなんとか脱出。
ここを追いかけたテルは、下がるヤノに強烈に左フックを叩きこんでコーナーに追いつめる。

ヤノはいくつも被弾しながらもガードを固めながら耐える。
テルのビッグチャンスに思えたが、ヤノはパンチの隙間に小さく右を撃ち込んで
テルを捉え、一気に周りこんで逆にテルをコーナーに押し付けてのラッシュ。
…譲らない。


6R、テルをジャブで突き放そうとするヤノ。
柔らかくテルの攻撃をかわしながら…しかし、圧力を弱めることのないテル。
それはヤノの左フックが強烈にカウンターで突き刺さってもなお…。

ヒット数で行けばヤノだが、下がらされているようにも見える展開。
そんな中、リング中央でお互いの右が交錯した場面…ヤノの膝がガクっと折れる。
明らかに効いた大ピンチ…ヤノはテルに組み付いてサバイブする。

一旦自ら距離を置いたテル、動きを落としたヤノに一気に突進し
ロープ際まで追い詰めると、ここでもヤノはなんとかクリンチで逃れようとする。
しかし…力を失ったそのクリンチを振りほどくと、
右ストレートを突き刺し、ヤノが腰から崩れ落ちてのダウン。

立ち上がったヤノだが、足元のおぼつかない姿にレフリーはテンカウントを数え上げた。


KOタイムは6R 3分1秒。

 


上体の柔らかさ、瞬間的なスピード…3年前、がむしゃらに突っ込んで
倒された中日本新人王戦の頃を思い起こし、本当にいい選手に成長したように感じた。
なによりも、身体的なこと以上に、少しずつ積み上げて来たテクニック。
ヤノが前の試合からパフォーマンス下げたような場面は記憶にない。

少しずつ、少しずつ積み上げて来た選手。
それこそがヤノの一番の魅力にも思える。
まだ強くなれる、もっと強くなれる。


そして、この日のヤノにしっかりと勝ち切ったテル。
地力を引き上げて来たようにも思える。

ファイターでありながら、引く場面もしっかり作り、
「試合を作る」ことができていたようにも思える。
これでA級昇格…ここから8Rの戦いにもしっかり対応してくるだろうと感じる。

 

■日本ライトフライ級タイトルマッチ
【ライトフライ級10回戦】
矢吹 正道(緑) vs 大内 淳雅(姫路木下)

日本ライトフライ級王者
WBC3位/IBF8位/WBO13位/OPBF1位
矢吹 正道 14戦11勝(11KO)3敗

OPBF12位/日本1位
大内 淳雅 34戦22勝(8KO)9敗3分


お互いにフェイントをかけ合う立ち上がり。
どっしりと構える矢吹に対し、細かくステップを踏み、踏み込むタイミングを探る大内。
お互い手数は少なく、見合う時間が長い中、時折大内がボディにジャブを伸ばす。

ラウンド後半に入って、矢吹がジャブを刺し始めるが、大内はガードを高く上げて対処。
静かな静かな1R。終了間際、矢吹の大きな右フックが大内のボディにヒット。


2R、立ち上がりから矢吹の左ボディから右ストレートがヒット。
入る瞬間を探す大内に、矢吹がジャブを突き刺していく。
中盤、やや強引に大内が入ると左アッパーを突き上げ、さらに強烈に右フックを撃ち込む矢吹。
さらにラウンド終了間際には右ストレートのカウンターで大内の体を泳がせる。


3R、開始直後にぐっと踏み込んで右フックを撃ち込んだ大内。
しかし、次に入ったところでは、矢吹の右がスマッシュ気味に大内の顎をえぐる。
入る度に、矢吹のアッパーが、右ストレートが…終盤には右ボディに襲われる。

大内のトライは止まず、入っては矢吹のパンチに右を合わせる仕草を見せる。
既に一方的になりつつある展開の中、タイミングを測っているようにも見える。


4R、入ろうとする大内にジャブを突きたて続ける矢吹。
中盤には強烈に右アッパーをヒットさせ、このラウンドのポイントを明確にさせる。


5R、変わらずジャブを突きたてる矢吹だが、大内はそのジャブにクロスの右を合わせる。
タイミング的には捉えた…瞬間、矢吹はスリッピングアウェイでパンチを逃がす。
中盤にも、終盤にも同じパンチを放つ大内。
明らかに狙っている分、手数は少ない…ポイントは度外視か。

矢吹の強烈なボディや右ストレートを被弾する場面も。
しかし、効いた素振りは一切見せない大内。


中間採点は50-45で三者とも矢吹


6R、展開は変わらず…しかし中盤、大内が踏み込んだ所に撃ち込んだ矢吹の
右ボディに合わせて大内の右が顔面にヒット…。
ここに来てようやくのしっかりとしたヒットだが、一発で試合展開が変わるのもボクシング。

しっかりとした感触があったか、大内のステップの店舗も上がる。
しかし…矢吹はその大内の右を誘い出して、カウンターの右を何度も突き刺す。
強烈にヒットしているはずだが…大内はダメージを感じさせない。


7R、変わらず右のカウンターを狙い続ける大内。
展開は全く変わらずだが、大内が上に撃つと見せかけてボディを突き刺す場面も。
試合終盤に差し掛かるも、両者ともまったくペースは落ちず。


8R序盤、大内の右のオーバーハンドがカウンターで突き刺さる。
しかし、矢吹は落ち着いてジャブを刺し、後続打の機会を与えず。
終盤には、左ボディ、右フックと多彩にヒットを奪ってラウンドを終える。


9R、お互い攻撃のテンポがあがる中、矢吹のボディが痛烈に刺さる場面が目立つ。
大内の左で矢吹のアゴがあがるシーンもあったものの…。
圧を強めた大内の攻撃は、矢吹が目のよさを活かしてひらりひらりとかわす。


10R、倒さなければ勝ちのない大内がペースを一気に上げると
次々にカウンターで捉えていく矢吹、この試合、ここに来て初めて大内の足元がブレる。
終了間際はノーガードでひらりひらりと大内の攻撃をかわしながら試合終了のゴング。


マイジャッジ 100-90 矢吹


公式ジャッジ 100-90、99-91、99-91

3-0 矢吹

 

右のカウンターに賭けて来た大内。
その選択は間違いではなかったと感じるし、それを貫いた心の強さも感じた。
劣勢になれば、自分の選択に迷いが出るのは必然的なこと。
しかし、最終ラウンドまで、右のカウンターを狙い続けた姿に
長年リングで戦い続けて来た男の芯の強さを感じたように思う。

 

そして、これまで11人を沈めて来た矢吹のハードパンチをまともに
浴びるシーンもありながら、まったくと言っていいほど効いた素振りを見せなかった。
効かせた瞬間、獰猛に襲い掛かるのが矢吹のKOパターンでもある。
もし、そんな場面があれば、そこで試合は終わっていたようにも思える。

結果的には大差判定で敗れたが、10R30分で致命的なダメージを
負わせる右は刺さらなかった…それだけのこと。
10Rが終わるまで、可能性を握り続けた…。
日本1位の肩書に相応しい挑戦者だったと感じた。

 

この試合、キャリアで初めての判定勝ちとなった矢吹。
しかし、キャリアで最も多くのことを証明した試合になったのではないだろうか。

10Rまで全く落ちないスタミナ、主導権を握り続けた試合運び、
大ベテランを圧倒的に上回る駆け引きの巧さ。
身体能力の高さをふんだんに活かしたディフェンス能力の高さ。
徹底したリスクヘッジ…数え上げればキリがない。

もう、世界戦に向かって充分なのではないだろうか。
コロナの情勢もあり、簡単ではないだろうが…
矢吹の世界戦に時期尚早という声は、上がらないように感じる。

少なくとも、矢吹が国内で新たに証明すべきことを思い浮かべることはできない。
どうか…世界の舞台へ。








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