待ち人来たる ドワイト・ムハマド・カウイ(米)⑦ ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2016/07/29

待ち人来たる ドワイト・ムハマド・カウイ(米)⑦ ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2016/07/29
 
 
 

ドワイト・ムハマド・カウイ(米)、7日目。
 
 
 

前回はWBA世界ライトヘビー級王者マイケル・スピンクス(米)との王座統一戦がチラつくカウイが、
WBC世界ライトヘビー級王座の初防衛戦でマシュー・サアド・ムハマド(米)との再戦を制し、
二人の対決が現実味を帯びたところまで…
 
 

 

さて、王座統一戦が期待されるカウイですが、
そこはやはりビッグマッチ…そう簡単にはマッチメイクできず。
空白を避けるため、防衛戦をひとつ挟むことに。
 

3度目の防衛戦は、USBA全米ライトヘビー級のベルトを腰に巻くエディ・デイビス(米)。
当時、共産圏のプロ参戦は今以上に少ない時代。
この頃のボクシングがアメリカを中心に回っていたことは、歴代世界王者の一覧なんかを見ると感じることができます。

USBA全米タイトル…たかだかナショナル王者ではあっても、世界挑戦の資格を手に入れるにおいて
このベルトの価値は計り知れないものがありました。
昨今名前を聞くことは珍しい選手ですが…それでもなかなかな相手なわけです。
 

アフロヘアーのせいもあるのか…これまで以上にカウイとの身長差を感じるフォルム。
ジャブの刺し合いから始まった試合、いつものごとくそう簡単には喰わないカウイ。
しかし、1Rから異変が…いつも独特のウィービングとプレッシャーで相手を下がらせるカウイですが…
なんとデイビスがカウイをプレスで下がらせる。

長い腕をたたんでカウイと撃ち合う気満々…そして劣らない…。
しかしそんな中…褐色の肌から異様に目立つ真っ白なマウスピース。

カウイが笑っている…。
これまではリーチ差を生かして戦おうとする相手がほとんど。
しょっぱなから接近戦を挑んできた相手は、世界レベルではデイビスが最初かもしれません。

猟奇的にも見えるカウイの笑顔…
撃ち合いの最中、カウイの放ったアッパーがデイビスを捉える。
たった一発のアッパーでこの撃ち合いを制したカウイ。
意識の飛んだデイビスに猛烈な強打をいくつも叩き込み…デイビスは背中から痛烈にダウン。
立ちあがったデイビスはこのラウンドをガードを固めてやり過ごします。

カウイの圧倒的な防衛か…?カウイに接近戦を挑んだデイビスは無謀だったのか?
そんな空気の1Rの攻防。
しかし、このダウンはこのあと巻き起こる熱戦の始まりに過ぎませんでした。
 

2R、ダメージの抜けきらないデイビス。
しかし…デイビスは下がらない。
頭を付けての撃ち合いを挑んでいく…ショートレンジでは腕の短いカウイが有利。
一方的に撃たれながらも、決して距離を取らない…。
しかし、ダメージが抜けてきたであろうラウンド中盤以降、
撃ち合いをデイビスが上回る時間も出てきます。

デイビスはこの世界挑戦に向けて研究してきたのかもしれません。
その間、いくつも見たことでしょう。
カウイ相手にリーチ差を生かそうとした選手たちの末路を…。

距離を取る相手に、伸びるジャブとプレッシャー、抜群のディフェンス技術で勝ってきたカウイ。
その特徴をすべて消すのは、体格的にはカウイ有利のインファイト。

カウイ有利の距離でカウイに勝つため…絶対に下がらない。
ラウンド終了のゴングが鳴らされたとき、カウイが見せた爽快な笑顔。
それは、こんな相手に出会えるのを待っていたとでも言いたげ…
 
 

3R、デイビスの強烈なパンチが幾度もカウイを捉えていく…
まさかのデイビス優位…しかしラウンド終盤にはカウイのボディがデイビスに突き刺さる。
それに対して顔面へのコンビネーションを突き刺すデイビス。
試合の熱はポイント計算がバカバカしくなりそうなほど…。
 

4R、デイビスがロープに詰まったところで展開は一気にカウイに傾く。
4発、5発と何度も強烈な右フックを叩きつけ、意識を刈り取ってしまおうとするカウイ。
しかし、デイビスもコンビネーションでやり返す。
ダメージを多くかぶっているのはデイビスに見えますが、
表に出さないカウイもダメージを蓄積させていておかしくないように思える。
 

5Rには逆にぐいぐいカウイをコーナーに押し込んだデイビス。
ボディをコツコツ叩きながら体を入れ替えるカウイ。
コンビネーションを叩き込みながら、今度は反対側のコーナーまで押し込んでいくデイビス。

下がりながら応戦するカウイ…初めてみせる展開。

ラウンド終盤、デイビスの強烈なアッパーがカウイを捉えて、この試合初めてカウイが揺れる。
しかし直後、右のアッパーを4つ…立て続けにやり返すカウイ。

終了のゴングに腰を振っておどけるデイビス…。
どちらが有利なのか…見方によって全く異なりそうなラウンド。
 

6R、プレッシャーで詰めていくのはカウイ。
お互いにコンビネーションを浴びせあうインファイト。
終盤、強烈なアッパーで捉えたのはデイビスの方。
しかし、カウイの撃たれ強さも相当で、効いた素振りを見せもしない。
お互いにダメージを重ね合う中、明確にデイビスが取ったラウンド。
 

いつまでも見ていたくなる撃ち合いは、消耗戦の色も抱え始める。
7R中盤にはデイビスが左右フックでカウイを捉えるも、
ラウンド終了直前、カウイの右アッパーでデイビスの腰が砕ける…。

撃ち疲れとたまったダメージ、お互いが苦しいであろう終盤に突入。
二人の手が緩められることはない…
褐色の肌をさらに真っ黒に内出血させ猛烈に撃ち合う二人。
 

9R、デイビスが新たな選択をする。
距離を取ってジャブを突き始める。
消耗したカウイにはその距離を詰める力はなく…デイビスが優位になるかと思いきや…
消耗しているのはデイビスも同じ。
フットワークを維持できない。
 

「そうじゃねぇだろ?」と言いたげに無防備にスッと近づき体を預けるカウイ。
「しょうがねぇな」と言いたげに撃ち合いに応じるデイビス。
二人はもう、ボクシングの原点でもある…殴り合いで決着をつけるしかないことを再認識したかのよう。

9R終了のゴングが鳴っても二人は撃ち合いを続ける。
レフリーが必死に割って入って終了。
一歩間違えば世界王者の渾身の一撃を喰いかねない…この試合はレフリーも命がけ…。
 

10R、体を預け合う位置でカウイの決定的なパンチがデイビスを捉える。
鋭利な角度の右ボディアッパー。
消耗してきたタイミングでこの強打は、容赦なくデイビスのガードを引き下げる。
そのまま顔面へ強烈なアッパーを4連続で突き刺すカウイ。
撃ち合いが一方的なものになっていきます。

ラウンド終盤、コンビネーションでやり返すデイビスですが、残り10秒を切ったところで
カウイの右ストレート4連打…全て痛烈にクリーンヒット。
意識があるのかないのか…わからない状態でラウンドが終了。
 

11R開始直後、ついに二人の戦いに終焉が訪れます。
一気に襲いかかったカウイの右アッパー一撃で意識を飛ばされたデイビス。
追撃の左フックでたたらを踏んで下がっていく…。
ロープまで一気に後ずさりしたところで、カウイの左が叩き込まれ…
前のめりに崩れるデイビス。

それでも…デイビスはカウント8で立ちあがる。
信じられないその闘志に終止符を打ったのはレフリー。
ダメージの深さを見てとり、ここで試合をストップ。
 

大激戦の勝利に喜びを爆発させるカウイ。

今までの相手は、体格差というボクシングにおける大きなアドバンテージをこねくり回した相手ばかり。
そこに付け込んで、プレスをかけ追い込み、伸びるジャブと抜群のボディワークでテクニカルに勝ってきたカウイ。
真っ向勝負を挑まれた戦いに真っ向勝負で撃ち勝った試合。

「俺は強い!」

ボクシングの原点、殴り合いの結晶のようなこの試合に勝ち切ったカウイの叫びが聞こえてきそう。

今ではそこまで語られることの少ないカウイvsデイビス。
ライトヘビー級という不人気階級に隠れた血がたぎる名勝負です。
 
 
 

【カテゴリ別】
2016年選手紹介一覧に戻る

選手紹介一覧に戻る

カテゴリ別記事一覧に戻る
 
 

【日付別】
【記事一覧】2016年7月に戻る

【記事一覧】2015年~2016年に戻る

【記事一覧】に戻る
 
 

 
 
 

各選手の戦績はこちら。
ボクシング選手名鑑
 
 

 
 

コメント

タイトルとURLをコピーしました