2025/09/14 -愛知・名古屋IGアリーナ- セミファイナル、ファイナル(中日本ボクシング観戦記) ボクシング選手名鑑ピックアップ!

2025/09/14 -愛知・名古屋IGアリーナ- セミファイナル、ファイナル(中日本ボクシング観戦記) ボクシング選手名鑑ピックアップ!

 

■WBO世界バンタム級タイトルマッチ
【バンタム級12回戦】
武居 由樹(大橋) vs クリスティアン・メディナ(メキシコ)

立ち上がりから鋭く右ジャブを突くサウスポーの武居に対し、
メディナはその撃ち終わりに渾身のフックを振り回す。
武居が踏み込んで強打を叩く場面ではそのフルスイングを合わせに来る。
ヒヤリとするシーンがいくつかあった1R終盤、
メディナがもらいながらも強烈な右フックを叩きつけて武居が痛烈なダウン。
ダメージ甚大なダウンシーンだったが、立ち上がって残り30秒を生き残る。

2R、武居が左を出すたびにカウンターを合わせるメディナ。
武居が強打で捉えてもメディナはびくともせず。
相撃ちも辞さず、武居の腰が落ちる場面も。
ラウンド終了間際、武居のボディにくの字に曲がるメディナ。
攻め込む武居だが、残り時間わずかでラウンド終了。

3R、このラウンドも武居が撃ち込むたびにメディナが合わせていく。
相撃ちでも、体がズレるのは武居の方。
強靭なフィジカルを感じさせる戦いぶり。

4R、撃ち終わりのメディナの右でフリーズした武居。
ロープへ後退していく武居に、メディナは慌てることなくジリジリと追いつめる。
撃ち返しながらコーナーに詰まる武居、倒れないように背中を確保して
覚悟の撃ち合いの準備を整えたように見えたが…。

襲い掛かったメディナ、武居の反撃の拳を浴びても全く動じず、
最後はアッパーを立て続けに浴びせ、コーナーで沈んでいく武居をレフリーが救出。

TKOタイムは4R 1分21秒

これから統一戦、そして期待される那須川 天心(帝拳)戦。
全てがいったん白紙と化す敗北。
思い描かれた未来はすべて崩れ落ちた。

しかし、思い通りに行く人間なんていない。
そう見える人間も「今のところ」。
打ち砕かれて、そこから。
それがボクシングだと思っている。

最初はK-1からやって来た武居を外敵のように扱うファンもいた。
今やもうボクヲタたちの多くが武居のことを応援している。
自分たちの世界王者として認めていた。
それは武居がその拳で成したこと。
拳で成す者、それがボクサー。

武居の復活の日を信じている。
ここからの復活こそ、ボクサーとしてのドラマだ。

そして新王者として栄冠を勝ち取ったメディナ。
一度はその夢破れた日本のリングで、世界のベルトを手中にした。

相撃ちのタイミングで渾身のフルスイングを繰り返す…
メディナに恐怖心は微塵も感じられなかった。
覚悟を決めたような捨て身の戦法。
いくらタフネスに自信があったとして、そんな危険な作戦を敷けるのも
これが世界タイトルマッチだったからこそに思える。

強打の武居を相手に、自分の顔面を犠牲に強打を振るう。
震えがくるほどのマチスム(ボクシング界隈では男らしさと意訳されるスペイン語)。
メキシカンがこれまでの歴史上で何度も魅せてきたもの。
それをまた、日本のリングで見せつけられた。
勇敢で男らしい戦いぶり、強烈な印象を叩きつけて新王者が誕生した。


武居 由樹 12戦11勝(9KO)1敗
クリスティアン・メディナ 30戦26勝(19KO)4敗

 

■WBA/WBC/IBF/WBO世界スーパーバンタム級タイトルマッチ
井上 尚弥(大橋) vs ムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)

最初の一分半、フェイントを掛け合いながらわずかな数のジャブを飛ばす。
井上が右ストレートをボディに飛ばせば、サウスポーのアフマダリエフは
左ストレートをボディへ伸ばす。
ラウンド終了間際、前に出たアフマダリエフに左を合わせた井上。

2R、お互いにフェイントを掛け合い続ける中、井上はボディを叩く。
アフマダリエフが攻め込むと、それを綺麗にかわしてサイドへと動く井上。
飛び交うパンチもわずかな緊張感の高い時間が続く。

3R、井上が鋭く踏み込んで右をヒットさせ始める。
アフマダリエフにほとんど手を出させず、時折刺さる井上の右ボディストレートが目立つ。
ラウンド終盤には井上の撃ち終わりにアフマダリエフがボディアッパーをヒット。

4R、お互いの手数は上がるものの、アフマダリエフのガードは堅く、
井上は素早くアフマダリエフの拳を交わしていく。
上へのヒットはがほとんどなく、井上のボディストレートが目立つ中、
終盤、井上の右ストレートがヒット、さらに入ろうとしたアフマダリエフに
井上が下がりながら右をひっかける。
アフマダリエフも、左ストレートを突き刺して反撃。

5R、ゴリゴリと距離を詰めてヒットを奪い始めるアフマダリエフ。
距離が詰まったところではアフマダリエフが優位か。
井上もワンツーでやり返す。
ラウンド終盤、井上が強烈な左フックでアフマダリエフの顔面を弾く。

6R、駆け引き合戦の時間が続く中、ロープ際でガードを固めた井上に
アフマダリエフが襲い掛かる。
ガードの脇から右を何度もねじ込むアフマダリエフだが、
井上はぐっとこらえた後、強烈なボディを重ねて反撃。

7R、ロープに詰まった場面でコンビネーションを浴びせるアフマダリエフだが
詰めるまでの攻防でははっきりと井上が上回る。
駆け引き合戦の中で、ジャブを叩き、意表を突いた右ストレートを叩く。
アフマダリエフがやり返す場面もみせるが、その多くのパンチをかわす井上。

8R、中間距離の攻防を井上が上回っていく。
手を出せない、出しても当たらない…
中盤のように詰める場面も作れず…。

9R、ラウンド中盤、4連打を叩きこんだ井上。
強烈なボディ、下がりながらのアッパーも叩きつけ、アフマダリエフを突き放していく。
右フックで反撃したアフマダリエフだが、展開は変えれず。

10R、圧倒される中、ボディを撃たれながらジャブを返し左フックにつなげたアフマダリエフ。
手さえ出させてもらえない展開から、時折左ストレートを浴びせる場面を作る。
しかし、ラウンドのほとんどの時間を制しているのは井上。

11R、ここまで来ても、アフマダリエフは手が出せない。
固いガードでビッグヒットは阻むアフマダリエフだが、
タイミングを制され続け、ジャブ、不意を突いた右ストレートを時折浴びる。

12R、ラストララウンドも攻め込めず、一つ目が当たっても二つ目はかわされる。
希望の光さえ奪われたような展開。
しかし、ラスト10秒、飛び込むような右フックで一瞬井上の体がズレる。
何もさせてもらえなかった…そんなアフマダリエフが意地の一撃を浴びせて試合終了。

マイジャッジ 118-100

119-111
118-110×2

アフマダリエフが井上をロープに詰めた場面。
井上のアッパーがカウンターで刺さり、
その後の攻め手を失ったアフマダリエフ。

この試合の動画で切り取り再生され拡散された「絶望のアッパー」と題された場面。
倒れてもおかしくない一撃を浴びながら、
アフマダリエフの体は即座に反撃の体制に戻っていた。

この相手を完封したからこそ、井上の恐ろしさが際立つように思える。
試合後、この試合を戦ったことを
誇るかのように両手を掲げて花道を引き上げたアフマダリエフ。
「何もさせてもらえなかった試合」だった。
しかし、いたるところにその凄みは散りばめられていた。

仮に井上がSBを去るならば、この階級は戦国時代へと突入するはずだ。
最強選手が最上位に君臨しながら、その下に強豪たちがひしめき合っている。
B級から乗り込んでくる気配のある選手も大勢いる。
恐らく、今後の世界戦線でも重要なキャストとなっていくだろうと思う。

日本の有望選手が、彼と頂点を賭けて戦う近未来が楽しみでならない。

そして五輪銅メダリストを技術戦で完封した井上。
KO勝ち以上に圧倒を感じさせる試合ぶりで勝利を挙げた。
これで12月のサウジアラビア、その後に予想され、
さらには本人たちも希望する中谷 潤人(M.T)戦が待ち受ける。

期待された道が実現することの方が難しい。
ただ、この選手に限っては、本人の臨む道を阻むことの方が難しい。
多くのファンが望む場所、全力で期待していたい。

井上 尚弥 31戦31勝(27KO)
ムロジョン・アフマダリエフ 16戦14勝(11KO)2敗

 

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