2019/08/04 -愛知・刈谷市あいおいホール- 5試合目、6試合目(中日本ボクシング観戦記) ボクシング選手名鑑ピックアップ!
■中日本バンタム級新人王決勝
【バンタム級4回戦】
木村 天汰郎(駿河男児) vs テル のび太(緑)
木村 天汰郎 3戦3勝
テル のび太 7戦4勝(2KO)2敗1分
1R、先に右ストレートを当てたのは詰めて行くテル、更に左ボディを撃ち込む。
しかし、木村はサイドに飛びながら右フックを突き刺し、タイミング抜群の右ストレートを撃ち込む。
テルが入ってくるところに右ストレートを突き刺し、更に左右フックを突き刺す。
突っ込んで来るテルの頭が当たりそうな場面では、間にグローブを挟んで衝突を回避。
2R、テルの入り際を強烈に叩いていく木村。
延々と捌かれ続けるテルだが、ただひたすらに追いかけ続けていく。
被弾し続けるテル、生粋のインファイターに選択肢は一つしかない。
単発のヒットしか奪えぬものの、それでも愚直に愚直に前に出る。
3R、より足を使い始めた木村に対し、テルはさらに空転し始める。
木村は決して逃げ回るわけではなく、テルの顔面にスピードに乗った左右フックを
叩きつけてサイドに飛び、何度も何度もテルの顔面を叩き続ける。
4R、このラウンドもまた同じ展開。
常に動き回り続ける木村、追いかけ続けるテル。
激しい運動量の中、二人は一切ペースを落とさず…。
しかし、テルにとっての不利な局面は打開されぬまま、試合終了のゴングが鳴る。
マイジャッジ 40-36 木村
公式ジャッジ 40-37 テル
…会場にどよめきが響く。
前に出続けたという意味でアグレッシブを獲ればそうなるが、
木村が完璧にシャットアウトした内容…この採点ではアウトボクサーに生存権はない。
残り二名、39-37、40-36 木村
2-1で勝者は木村。
ホッと胸を撫で下ろす。
ただひたすらにテルが殴られ続けた試合。
「生粋のインファイター」という生き物の儚さを見たようにも感じる。
木村は、グレードの違う相手だった…ただそれだけなのかもしれない。
しかし、これまでの相手は、木村がその場からいなくなってから
パンチを撃ち込むような…まさに置き去りの試合を見せていた木村。
テルは詰め続けることで、そうはならず、単発でもその拳をヒットさせた。
自分のスタイルが通用しなくても、ただそれを貫くしかない。
ファイトスタイルそのものが生き様…。
黄色いTシャツ姿でドラえもんの歌で入場するいかにも弱そうなこの男は、
昭和が香り、無骨な生き様をリングで体現する。
このギャップはきっと、テルの魅力…この男を中日本に閉じ込めておくのは勿体ない。
既にB級の資格は手にしている。
近いうち、後楽園ホールで東京のファンを虜にしてくれることを願う。
判定は2-1だったが、完勝だった木村。
12分間で木村を止めれる選手がいるのか…、僕には想像がつかない。
のび太がダメだったとなれば、もう中日本にそれができる選手はいないだろう。
間違いなく、今年の中日本の目玉選手だと感じている、少し領域が違う選手。
ただし、トーナメントは運の要素も多分に絡む。
主役級の選手が怪我やトラブルで脱落するのも常。
確実に全日本新人王を獲得し、木村が戦うべきステージに上がって欲しいと感じる。
■中日本スーパーバンタム級新人王決勝
【スーパーバンタム級4回戦】
中村 龍明(市野) vs 阿部 史也(タキザワ)
中村 龍明 3戦2勝(1KO)1分
阿部 史也 5戦3勝(2KO)1敗1分 サウスポー
1R、距離を詰めていく阿部…右フック、左ストレートと先手でヒットを奪っていく。
しかし、龍明も入ってくるところに左フックを強烈にぶつけていく。
踏み込むときはお互いに思い切り踏み込み合う…
オーソドックスとサウスポーがこうなると、どうしても頭の衝突が起こる。
お互いに踏み込む間合いを測り合う中、龍明が右ストレートを強烈にヒットさせると
両者が猛烈に撃ち合い始める中、阿部の左右フックで龍明が膝を着く。
再開後、ラウンド終了直前には阿部が中村をコンビネーションで捉えると、
中村はなんとかその場をエスケープしてラウンドが終了。
コーナーで凄まじい形相で対角線上の阿部を睨みつける中村…。
悔しさ全快のその表情に、負けん気の強さを感じる。
2R、インターバルの表情とは裏腹に、いったん落ち着いてしっかり立て直す中村。
しかし、阿部は左ストレートを突き刺す度、そのままコンビネーションで襲い掛かる。
中村も右ストレートでやり返す…お互いに奥の手のストレートが当たるが
その後をまとめる阿部の方が印象がいい。
3R、距離を潰して中村が逆襲に出る。
もらいながらも、強引に荒々しいフックを叩き込み、
中盤には、巻き込むような左右フックでグラついた阿部。
押しつぶされるようにリングに膝を着いたが、ここはスリップの裁定。
直前にフックが入っていたが、押されたようにも見え…これはどちらともとれるか…。
中村、攻め込むものの距離が潰れすぎてクリンチになる場面が頻発。
若干中村が失速を見せる。
4R序盤、激しく撃ち合う中、1Rと同じような形で阿部の左右フックを浴びてまたも膝を着く中村。
しかし、ここも裁定はスリップ…よく見えなかったが押し倒したということか。
お互いバチバチの撃ち合いとなり、効かせ効かされの激闘のままラウンド終了。
マイジャッジ 39-36 阿部
公式ジャッジ
39-36×2、40-36 阿部
例年なら、阿部は周りに差をつけて中日本新人王を制していておかしくない存在だったと感じる。
今年のスーパーバンタムは激戦区だった。
阿部にここまで対抗できる存在…それだけで、中村の強さが証明されるようにも感じる。
阿部はきっと全日本を獲って帰って来る。
この試合を難しく考える必要はないと思う。
1R終了後のインターバル、鬼のような形相を見せた龍明に
「本当は自分の方が強い」と思っていて欲しいなんて思う。
先に進んだ阿部に追いついて、やり返せばいい。
ただ単純にそれだけの話…負けん気はこのボクサーの大きな魅力だ。
バチバチに撃ち合い、押し合う場面もあり、お互いに効かせ、効かされ…。
終盤、中村に押された場面もあったが、中村の失速に助けられたようにも見えた。
ただ…この試合展開なら失速するのが普通だ。
わずか12分間を走り切る4回戦の試合…。
ラウンドが短いからスタミナが持つとかそういう話ではない。
12分で使い切るペースで走るため、想定以上の試合展開になれば当然スタミナは切れる。
ボクサーは試合で頑張ればいいわけではないし、試合で強くなるわけではない。
日々の積み重ね、その試合に向けた積み重ねがそのボクサーを強くする。
その努力はファンの見えないところだが、それがリング上で垣間見えることがある。
阿部の積み上げたものが大きかった…そんな試合に感じた。
今年の中日本新人王戦の最激戦区を勝ち抜いた阿部。
決して圧倒したわけではなかったが、好選手ばかりと対峙し、力を証明した。
彼が全日本新人王を獲れば、阿部と対峙した選手たちには
「全日本新人王と接戦を演じた選手」という解りやすい売り文句ができる。
今後の道のりにも影響があるかもしれない。
阿部ははっきりと強いと言い切れる選手…必ず全日本の肩書を獲ってきて欲しい。
最後に、阿部の勝利者インタビューを掲載。
「刈谷工業高校のボクシング部は今、顧問の先生が転勤になってしまって
廃部になってしまう危機にあります。
皆さん少しでも刈谷工業高校のボクシング部を知ってもらって
部活が存続できるように応援お願いします。」
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