2025/04/13 -愛知・刈谷あいおいホール- 第4試合~セミファイナル(中日本ボクシング観戦記) ボクシング選手名鑑ピックアップ!
【スーパーバンタム級4回戦】
荒島 梨球(三河) vs 冨田 遼平(天熊丸木)
じりじりと前に出る荒島。
距離を維持しながら迎え撃つサウスポーの冨田。
両者ともガードが固く、ほとんどヒットのない立ち上がり。
ガードの上からでも連打を撃ち込む冨田が手数で上回るか。
ヒットでもジャブが出た分、冨田か。
2R、右を撃ち込みながら踏み込んでくる荒島だが、もらっても単発に留める冨田。
冨田は右フックをひっかけてまわり、荒島が入ってくるところにまとめる場面も作る。
綺麗なアウトボクシングを展開し、はっきりと主導権を握る。
3Rに入ると、より踏み込む頻度を増やしていく荒島。
徐々に右が冨田を捉える場面も増え、ガチャガチャしたシーンも増え始める。
鋭利なパンチがカウンターで刺さっても前へ前へ、少しずつ押し込んでいく。
4R、撃ち合いとなるシーンが増える。
荒島がアウトボクシングをしていた冨田を巻き込み始めた構図。
ただ、この撃ち合いも互角以上に戦う冨田。
さなかリングにしゃがみ込む荒島。
レフリーはスリップを宣告するが、立ち上がれない荒島にボディが効いたと判断しダウンを宣告。
カウント8で立ち上がった荒島だが、再開後に攻め込んだ冨田が
コーナーでボディを叩くと、こらえきれずにしゃがみこみ、レフリーはTKOを宣告。
TKOタイムは4R 2分59秒
決定打となったボディははっきりと見えなかった。
レフリーもそうだったからこそ、いったんはスリップを宣告した。
アウトボクシングでほぼほぼ完ぺきに支配し、斬って落とすようなボディでのKO劇。
成長著しい選手たちがそろう天熊丸木の選手たち。
その中でも冨田の安定感は抜群だ。
ムラのない仕上がりは、マッチメイクのし易さも産む。
振れ幅が大きい選手は、試合を組む側の目測を誤らせることもある。
適切な課題、適切な試合を引き出す安定感は
成長速度も密度も高くすると思っている。
B級まであと1勝、順調に力を伸ばせば、
ランキングボクサーとなる絵も見えるように思えた。
対して、この日は完敗と言える敗戦を喫した荒島。
同じ4回戦と言えど、このクラスの選手とは差があったと言える。
ただし、そこには”今は”という注釈を加えたい。
冨田以上の速度で成長すれば、その差は必然的に埋まる。
簡単ではない、簡単なわけがない。
冨田もまた、ここから強くなっていく選手だ。
さすれど、為せば成る。
完膚なき敗北を喫したからこその荒島を期待したい。
荒島 梨球 2戦1勝1敗
冨田 遼平 4戦3勝(1KO)1敗
【ウェルター級4回戦】
鳥居 翔太(LUSH緑) vs 中川 侍武(陽光アダチ)
鳥居が中川の撃ち終わりに左ストレートを突き刺した立ち上がり。
小刻みなテンポでリズムをとる中川に、左を強烈にヒットさせる鳥居だが
時折相撃ち気味に中川の右フックも飛んでくる。
1R終盤、鳥居が左ストレートが強烈にヒットさせると、
パンチをまとめて押しつぶすようにダウンを奪取。
2R、相変わらず細かくテンポを刻む中川、ボディを強烈に襲う。
撃ち終わりを狙いながら、強烈にヒットさせると一気に攻め込む鳥居。
中川は回転よく強烈にボディを叩き、
相撃ち気味に飛ばす右で鳥居の顔面を跳ね上げるシーンも。
3R、鳥居の左ストレートに、右の打ち下ろしを合わせる中川。
手数の減った鳥居に回転よくボディを撃ち込みながら顔面も襲う。
鳥居の顔面が跳ね上げられる場面も多く、ここに来て中川が主導権をはっきりと持っていく。
しかし終盤、鳥居が起死回生の左ストレートを効かせると、
次々とその顔面を跳ね上げていく鳥居。
連続する強打の被弾に、レフリーが中川を救出。
鳥居のTKO勝利を宣告した。
TKOタイムは3R 2分50秒
独特のタイミングと回転で鳥居を襲った中川。
電々太鼓のように襲うボディ、小刻みなリズムとフェイントは
かなりやっかいなものにも思えた。
危険なパンチも幾度もあった
一気に手数が減った3R、振り絞るように左強打を叩きつけていった鳥居。
底力を見せてのTKO劇だったように思う。
中川の細かいテンポに付き合ってのガス欠か、
倒れない中川に撃ち疲れたか、ボディが効いたか…
8月3日に中日本新人王決勝を控える鳥居。
怪我でないことを祈るが…。
何せよダウンを奪いながらも、3R後半には手が出ず、窮地だったことは確か。
ここでしっかりと倒し切る姿に地力を感じさせた。
4ヶ月後に控える決戦の日。
大きな経験値を手に入れて鳥居がその名を浮上させる舞台へと臨む。
鳥居 翔太 4戦2勝(2KO)2敗
中川 侍武 2戦1勝(1KO)1敗
【スーパーフライ級4回戦】
片桐 頌斗(中日) vs 樋田 大知(タキザワ)
細かく足を使いながら、片桐を中心にまわる樋田。
撃っては離れを繰り返し、片桐を襲っていく。、
樋田が左右ボディから右の打ち下ろしを叩きこむと、
クリンチに逃れた片桐ともつれあってのスリップ。
明らかに効いているか、ジャブでも膝を揺らす片桐。
2R、劣勢の展開の中でも右を強く返して反撃する片桐。
展開は変わらず、樋田の強打を浴びる場面が目立つが、
撃ち合いの中で、右フックを叩きつける。
ラウンド終盤、樋田の右がカンターで刺さり、
足を揺らした片桐に襲い掛かった樋田。
ダウンを拒否して粘る片桐を少し押すような形でダウンを奪取。
3R、樋田のカウンターが刺さり、何度も膝を揺らす片桐だが、
粘り強く耐えに耐え、ダウンを拒否し続ける。
コーナーに詰め、細かくラッシュしても、手を返して止めさせず。
完全劣勢の展開の中でも、右強打をカウンターで返してあきらめず。
4R序盤、またも片桐をカウンターで捉えた樋田。
そこから強打をまとめていくが、片桐はここも粘りに粘って耐え続ける。
しかし、ここでたまらず、レフリーが試合をストップ。
TKOタイムは4R 1分12秒
片桐が圧倒される中でも耐えに耐えて粘った。
これまで、誰にでもできるわけではない狂ったような突貫ファイトを見せてきた。
4戦目でようやく初勝利となったが、勝利はなかなか遠く、
丁寧にジャブを突く場面も見せたが、それでも結果には遠かった。
この日の戦い、片桐に戦いの選択権は与えられなかったように思う。
樋田の猛攻の中、それに耐えながら手を返し、それがカウンターで刺さる。
強打に顔面を跳ね上げられ、膝をガクガク揺らしながら最終ラウンドまで耐えた。
膝を着けば楽になれる…なぜそこまでやれるのか。
被弾恐れぬ特攻、最後の最後まで耐え抜く執念。
異常なまでの精神力…片桐はやはりこの日も狂戦士だった。
8戦目の片桐を圧倒して樋田が2勝目を挙げた。
前回のTKO負けから、しっかりと力を伸ばし、
抵抗する相手からTKO勝利を勝ち取った。
相手は大幅負け越し選手だが、それは戦績だけの話。
プロのリングで試合を重ね、勝利への渇望も強い。
最後の最後まで逆転を信じて抵抗するタフな相手。
この日の片桐を仕留めたことに強い意味があるように思えた。
前回の1RTKO負けからの再起戦で相手を圧倒。
さぁ、ここからといったところ。
来年は新人王へのエントリーはあるのか。
ないにしても、B級昇格がかかるか、B級初戦となるかの
大事な時期に差し掛かる可能性が高い。
キャリア最初の勝負どころが近いところに控える樋田。
このまま力を伸ばし、より高い位置で勝負してほしい。
片桐 頌斗 8戦1勝(1KO)6敗1分
樋田 大知 3戦2勝(1KO)1敗
【ライト級6回戦】
秋山 星也(名古屋大橋) vs 久松 大輝(とよはし)
ワンツーを叩き合う立ち上がり。
お互い少し遠い位置に立ち、警戒しながらの戦い。
ラウンド中盤、久松の右ストレートがカウンターで突き刺さる。
パンチを交錯させる場面でも、久松が内側から捉えて数で勝るか。
2R、久松のジャブに秋山が右をかぶせて先制。
変わらず緊張感の高い戦いだが、秋山が積極性を増したか、
攻め込む場面が増える中、久松が踏み込んだところに左フックを突き刺し
久松が尻もちをつくダウン。
再開後、強烈なボディを突き刺して攻め込んだ秋山だが、
撃ち合いの中で久松が強烈な右を返して窮地を脱出。
3R、お互いに強打を警戒し合いながらの展開は続く。
秋山がロープに押し込んで、強引に拳をねじ込む場面を作るなど攻勢は秋山の方か。
ラウンド中盤、大砲の右ストレートが交錯した瞬間、返しの左が出たのは秋山の方。
完璧に久松を捉え、リングに崩れる久松。
一度は立ち上がったものの、そのまま気を失うように後ろへ倒れた。
レフリーは試合をストップ、秋山が鮮烈なKOシーンでB級初勝利を挙げた。
独特のタイミングと、信じられない度胸。
強打の応酬の中でのKOは前戦に引き続いてのものだった。
右ストレートの交錯は背筋が凍り付くもの、その次の瞬間に返しの左フック。
自然と出たようにも見える一撃…秋山に恐怖心はないのか。
本人が勝利者インタビューで「今回もラッキーパンチ気味」と話したが、
前回に引き続き、頭で考えるより先に体が反応しているようなKOシーン。
これを天性と言わずにはいられない。
鎌首をもたげて待ち構え、隙を見せた瞬間を逃さず相手を捕食する。
まるで毒蛇の捕食シーンを見ているようだ。
「毒蛇」は数々の名ボクサーがとった異名。
有名どころで行けば、フロイド・メイウェザーJr(米)の叔父、ロジャー・メイウェザー(米)。
ブラックマンバと言われた元WBA世界スーパーフェザー級王者だ。
中日本のリングに、この異名を携えるボクサーが現れるのも面白い。
この日、久松が屈したものは、秋山の天性だったようにも思えた。
当たり負けしたわけでもなく、ただただ瞬間を制された。
その瞬間を制するものこそがボクシングと考えれば、完敗と言っていいだろうと思う。
ただ、天性ならばまだ勝ち目はある。
がむしゃらな努力が天性を上回っていくシーンはこれまで何度も見てきた。
上を行く相手に同じ努力を重ねられれば、その差は永久に埋まらないもの。
相手も6回戦に上がる選手なら、簡単には落ちてきてくれない。
恐らく、単純な量だけでなく、工夫やボクシング外での経験も含め、
様々なものが必要になるだろうが、成してしまう選手はいる。
そして、そういった選手はマニアたちの間という狭い世界であれ、しっかりと名を残す。
同門の森村 怜司(とよはし)と並んで、リングの上で飛び切りの頑張りを見せる選手の一人。
久松なら、やってしまうのではないかと思ってしまう。
簡単なハードルではないが…いつか大きく飛躍した久松のリベンジマッチが見たいと感じた。
秋山 星也 8戦5勝(5KO)3敗
久松 大輝 6戦4勝(1KO)2敗
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