2024/11/17 -愛知・刈谷あいおいホール- 第1試合~第3試合(中日本ボクシング観戦記) ボクシング選手名鑑ピックアップ!
【フライ級4回戦】
杉浦 元紀(蟹江) vs 片桐 頌斗(中日)
どっしり構えてもぐりこむタイミングを計るような片桐。
じりじりと出る片桐に、フリッカー気味に構えながら、
一定の距離を維持しながら、撃ち終わりにカウンターを浴びせる杉浦。
杉浦の長いパンチにかぶせてクロスを撃ちこむ場面も見せる片桐。
1R終盤には片桐がコーナーに詰めて襲い掛かると杉浦が押され気味に。
2R開始から、片桐が持ち前の突撃を見せる。
ぐいぐい詰めて撃ち合いに引きずり込む。
押しこまれる中でも、巧みに拳を差し込む場面を見せる杉浦だが、
狂戦士、片桐は止まらない。
途中、杉浦がバッティングカット。出血は多そうだがドクターは続行。
2R終盤には杉浦のアッパーに、片桐の右ストレートがカウンターで入ってラウンド終了。
3R、短期決戦も考えられる展開に片桐が攻めを増していく。
入ってくるところを強烈に襲いながら応戦する杉浦。
鼻血を吹き出しながら、被弾かまわず前進する片桐。
勝負は一瞬、なりふり構わない片桐の手数の中、
杉浦が右アッパーを炸裂させ、片桐がダウン。
強烈な一撃に、レフリーは試合続行を許さず。
TKOタイムは3R 1分14秒
丁寧にもぐりこむ隙を狙っていった片桐。
押し込めると見るや、これまで数戦は見せてこなかった
狂戦士の姿で襲い掛かった。
マイジャッジはイーブン、ペースとしては片桐。
そんな風に見ていた中での一撃決着だった。
攻めてくる相手には隙ができている。
当然カウンターのチャンスも増える。
しかし、猛烈な手数の中で、そのカウンターをとるのは至難。
「言うは易し」をやってのけた杉浦がすごかった。
片桐の拳がギリギリ届かない距離を維持し、
小さな前後で出入りを繰り返した杉浦。
きわどいタイミングでのパンチの応酬に被弾もあったが、
この形が完成してくれば、負けづらい好選手になるようにも思う。
何より、ぐいぐい攻め込んでくる片桐の手数に飲み込まれず、
差し込むような強烈なアッパーは見事だった。
2R終了間際、アッパーにカウンターを合わされていたにも関わらず、
さらにあの手数の中を撃ち抜いた。
面白い選手が出てきたように思う。
これからの戦いに期待していきたい。
勝ちが遠く、紆余曲折、スタイル自体も迷いの中にあるように見える片桐。
だからこそ、片桐は面白い。
とがった武器は持っているが、その武器の扱いに迷い苦しんでいるように見える戦い。
誰しもが一度は陥る「自分とは?」を探し苦しむ人生を体現してくれているように見える。
片桐の出す答えが見たい。
長いトンネルの先の勝利に、それがあるような気がしてならない。
大幅負け越しだが、プロとしての表現はできている。
見るものに何かを与える戦いはできている。
まだまだ、あきらめずに次に向かってほしいと感じる。
杉浦 元紀 1戦1勝(1KO)
片桐 頌斗 7戦1勝(1KO)5敗1分
【フェザー級4回戦】
河口 鉄生(尾張水野) vs 三上 卓也(鈴鹿ニイミ)
「馬場 基生」から名前を変えての2戦目となる河口。
細かいリズムを刻みながら前に出ていこうとする河口を
リーチで上回るサウスポーの三上がジャブで入らせず。
時折、左ストレートから入って河口に警戒を植え付け、
コーナーに詰まってもするりと体を入れ替える。
2Rに入ると圧を強めた河口。
思い切って踏み込んで左右の強打を振るう。
強烈にボディを襲いながら上もとらえるが、
三上は落ち着いてクリンチし、後続打を許さず単発に抑える。
より圧を強める河口に、三上のジャブも増えていく。
ジャブの被弾増えるが、相撃ち上等で攻め込んでいく河口。
持て余し気味になる三上、徐々に河口が展開を盛り返す。
最終ラウンド、入ろうとする河口にワンツーを突き刺していく三上。
お構いなしに突っ込んで強打を浴びせる河口。
クリンチでしっかり流れを切る三上。
パンチの交錯の数が試合終了に向かって増えていく中。
スイングラウンドが立ち並んだようにも思えた試合。
マイジャッジ 39-37 三上
39-37 三上
38-38×2
1-0 ドロー
リーチ差で上回るサウスポー。
むつかしい相手にあと一歩まで迫った河口。
「もらいながらでも行ける」持ち味は存分に発揮してくれたと感じる。
ボクサーとしてのシルエットというべき「自分のボクシング」はしっかりと持っている。
磨きをかけて初勝利を飾ってほしい。
三上はほぼほぼジャブとストレートしか撃っていなかったようにも思えた。
たった二つのパンチでプロのリングに乗り込み、これだけの試合を戦った。
これからパンチの種類も増えていくだろうと思う。
楽しみな逸材だと感じている。
河口 鉄生 2戦1敗1分
三上 卓也 1戦1分
【60kg契約4回戦】
渡邊 廉(蟹江) vs ハンマー・タク(岐阜ヨコゼキ)
グイグイと攻め込んでいくタク。
足を使って押し合いはせずとも、撃ち合う場面では頭をつけての応戦。
シャープにパンチをまわして的確にパンチをまとめる渡邊。
時折、思い切った右オーバーハンドを繰り出すタク。
2Rに入ると押し合いながらの撃ち合いに。
回転よく襲う渡邊に、タクはボディを削っていく。
ラウンド終盤、タクの左ショートアッパーで渡邊が前に手をつくダウン。
ダメージか、タイミングでバランスを崩したかはっきりとはわからない形。
再開後、タクは下から攻め上げ、今度は左ボディで渡邊が手をつく。
ガードは挟んでいたように見えたが、その上から効かされたか。
渡邊が立ち上がるとともにラウンド終了。
3R開始から仕留めにかかるタク。
左ボディを重ねたところで渡邊が崩れ落ち、試合はレフリーストップ。
TKOタイムは3R 16秒TKO。
渡邊のデビュー戦は完敗スタートと言える内容だったように感じる。
リングに3度倒され、展開もタクの手中の中だった。
ただし、完敗はいつも逆襲の伏線となる。
負けの数は、自分より強い相手に挑んだ数。
タクが刻んだ6敗はまさにそれそのもの。
挑み続けて力を伸ばしていった。
渡邊に刻まれた最初の敗戦。
まずは強い男に挑んだことを誇りとしてほしいと思えた。
すべてのダウンシーン、派手なパンチではなかった。
そもそもそのパンチが効いたのか、それまでの蓄積かも判別がつかなかった。
「これで?」というパンチでのKOはハードパンチャーの真骨頂。
タクがその強打に磨きをかけてB級昇格を決めた。
試合直後、「ビバリー 塚田(LUSH緑)」はどうだろう?という声が聞こえた。
負け越し選手ながらメインイベントを戦い、すさまじい倒し合いを見せた選手。
実現するなら、メイン6回戦の小さな興行にはなれど、
二人のスタイルを知る人間なら、メインを張ることにも納得の超期待カードになるだろう。
不器用な右一撃”だけ”だったタクがここまで来た。
負けるたびに強くなり、メインを夢描かれる選手になった。
デビューしたころのタクに誰がこの未来を描いただろう。
たった二つの拳で、すべてを切り開く…これぞプロボクサーだ。
ここまで歩んだ物語含め、見事なB級昇格劇だった。
渡邊 廉 1戦1敗
ハンマー・タク 11戦4勝(3KO)6敗1分
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