負け越し?世界王者 アキレス・グスマン(ベネズエラ)② ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2016/02/29

負け越し?世界王者 アキレス・グスマン(ベネズエラ)② ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2016/02/29

 

本日はアキレス・グスマン(ベネズエラ)の2日目。

戦績が14勝14敗3分。
元世界王者としての戦績としては珍しいイーブンの戦績。
彼が、世界王座を獲得後、初防衛戦で陥落したところまで。 

ここまで、16戦7勝(4KO)6敗3分。
わずか1勝勝ち越しています。

しかしながら31戦を戦ったグスマン。
この時点はまだまだ彼のレコードの折り返し地点。

世界王座陥落後の、彼のレコードを追って行きましょう。

初防衛戦に散ったグスマン。
この時まだ27歳。
半年ほど期間をおいて再起します。 

1年半の間に格下相手に2勝を重ね、王座陥落から1年半で世界王座に再挑戦。
相手はグスマンを破ったダビド・グリマン(ベネズエラ)から王座を奪っていた、
タイのセーン・ソープルンチット(タイ)

この試合でも顕著な身長差ですが、好戦的なタイプのセーン。
以前も書いたと思うんですが、この頃のセーンは本当に強かった。
真っ向からの撃ち合いで身も凍るような強打をガツンガツン撃ち込んでくるわけです。

しかしながら、そんなファイターだけに、グスマンの弱点であるリーチ差はそれほど不利にはなりません。 

1Rから展開される撃ち合いの中、体格差のある二人。
計量後のリバウンドで体重を増やしたセーンに押し負けるのが普通ですが、全く押し負けないグスマン。
しかし相手はこの後、名王者へとなっていくセーン。
強打の威力はセーンに分があり、怒涛の撃ち合いはセーン有利に進んでいきます。

しかし中盤あたりから、近距離で丁寧にブロックしながら驚異的な手数で盛り返すグスマン。
試合は一進一退の根性の打撃戦へ。
撃ち疲れを見せても、休憩もそこそこにお互いが撃ち合いの渦を作り出していく。
永遠に続きそうな拳の交換…36分の制限時間が水を差します。 

2-0の判定で、勝者はセーン。
この時代のセーンに対して倒されないだけでも凄いし、ジャッジ1人がドローを着けるだけでも凄い…。

戦績などアテにならない。
よく言われることですが、まさにその代表格がグスマンだということが分かります。
しかしながら、再挑戦で敗北…。

当然遠回りを余儀なくされます。 

格下に2勝を挙げ、WBAラテンアメリカフライ級王座決定戦に挑むグリマン。
相手はのちの4階級制覇王者で、この頃既に2階級を手に入れていたレオ・ガメス(ベネズエラ)

この試合、かなりの接戦になったそうな。
…というのも海外で行われた古い時代の試合。
世界タイトルマッチでもなければ、わずかに情報が残っていればいい方。
残った外国語の文章しか見つけられず。

同国人の元世界王者同士が戦った試合…さぞ盛り上がったことでしょう。
グスマンは、この試合判定を落としてしまいます。 

これで遠回りかと思いきや、1戦格下への勝利を挟むと…
幸運のグスマン、ここでまたチャンスが転がり込みます。
これまでのフライ級から1階級上、WBA世界スーパーフライ級王者の
アリミ・ゴイティア(ベネズエラ)への挑戦。

超強打者でありながら、負けっぷりも相当だったゴイチアですが…
この試合は強打者ゴイチアの独壇場。
撃たれ強いはずのグスマンがわずか5Rでリングを這います。 

再起戦では、少しでも早い再挑戦を目指して世界ランカーを選びますが…
WBCカリブ海スーパーフライ級王者だったアドニス・クルス(ニカラグア)に敗北。
世界が遠ざかってしまいます。 

ここで前回接戦を演じたWBAラテンアメリカフライ級王者のレオ・ガメス。

前回のグスマンとの対戦で獲得した王座を保持したまま、
WBA世界フライ級王者のセーン・ソープルンチットに敗北。
元世界王者がお互いに再起を計る一戦…つまり生き残りマッチですね。 

のちに4階級を制覇することを考えると、ガメスが制しそうなこの試合。
なんとグスマンが判定で手に入れます。

大きく遠のきかけた世界をグッと引き寄せたグスマン。
この星が大きく、どこまで運がいいのか、次戦での世界再挑戦が実現します。 

WBA世界スーパーフライ級王者のヨックタイ・シスオー(タイ)との一戦。

ヨックタイは以前挑戦したゴイチアから強烈なボディでベルトを奪った選手。
ムエタイ王者からボクシングへ転向し、わずか2年半。
グスマンとは対照的に、レコードは12戦12勝とパーフェクト。
この試合が2度目の防衛戦ですが…。

この試合、圧倒的な差をつけられ判定で沈みます…。

この時、グスマン32歳。
今よりずっとボクサーの消耗が早かったこの時代。
下肢の衰えはグスマンにとって致命的。

身長差を補う鋭い踏み込みを失い、ダメージを逃がす膝の柔らかさも失って、
それが撃たれ強さを削ぎ落とし…。
再起を図ろうと、世界戦前に返上していたWBAラテンアメリカスーパーフライ級王座へ再度挑みますが、
地域王者クラスのヒルベルト・ゴンサレス(ベネズエラ)に6RTKOで敗北。

この試合からしばらくリングを遠ざかります。

しかしながら諦めがつかなかったか…35歳でリング復帰。

復帰戦は階級を上げて、WBAラテンアメリカバンタム級王座への挑戦。
…が、王座を守るのはのちの2階級制覇王者であるラファエル・マルケス(メキシコ)
相手が悪く7R棄権で敗北。

次戦こそ格下相手に勝利しますが…、
かつて国内タイトルを争ったエジソン・トーレス(ベネズエラ)と10年ぶりの対戦。
この試合に4RTKOで敗北し、自身の衰えから目を背けられなます。

ここで引退したグスマンは、世にも珍しい戦績イーブンの世界王者となりました。

復帰が無ければ、わずか1勝…白星先行してたんですが…
この復帰後の1勝2敗が無ければここで取り上げることも無かったでしょう。

アキレス・グスマン…ピックアップして、「戦績がアテにならない」なんて
ありきたりなことを言いたかったわけじゃなくって…。 

ボクサーは変わるよってことを言いたかった。

キャリア初期の敗戦続きの時期と、5連勝で世界を獲った時期。
まるで全く違うボクサーのキャリアのようなんですよね。

その後、世界のトップ選手たちと拳を重ね続け、
最後の灯火のように、4階級制覇王者のレオ・ガメスに勝利するも…
そのあとは1勝4敗…。
衰えが急激にグスマンを襲ったわけです。

僕が見に行く国内の試合では、戦績が負け越しの選手もいくらかいます。
しかしですね、彼らは決して噛ませ犬でも無ければ、試合を投げている訳じゃない。
今後、彼らが変身しない保証はどこにもないわけです。

変身していきなり強くなる…グスマンほどの例は極端ですが、
もう少しスケールの小さいところでは、僕自身が何度も目にしています。 

負けの混んだ選手を見るとね…いつも思うんです。
きっとどこかのタイミングでこの選手も世界王者に憧れたんだろうな…と。
決してね、あきらめないで欲しいな…と。
自分の可能性を自分で小さくしてしまわないで欲しいな…と思うんです。

ちょっと負けが続いたくらいで引退する必要はないし、楽しみにしてる人間は間違いなくいる。
だからね…負け越し選手だって、あきらめずに前を見て、ボクシングを続けてほしい。
プロボクサー相手に殴り合っての戦績…多少負けても弱いわけがないんだから。 

ただし、体に異変を感じたら、すぐにリングを降りる。
健康でリングを降りるのも、ボクサーの務めだと思うんですよ。 

まぁ、なんてことを書きましたけど、ボクサーが続けるって言ったら頑張れ…辞めるって言ったらお疲れ様…
そうやって声を張り上げることしか、僕らファンにはできないんでしょうけど…。

その選手の人生、心から応援したいな…と。
アキレス・グスマンの戦績を追いながら、頭を巡ったのはそんなことばかりでした。 

頑張れ!ボクサーたちよ!!

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