2019/08/11 -神戸常盤アリーナⅡ- (中日本ボクシング観戦記番外編) ボクシング選手名鑑ピックアップ!
【51.0kg契約6回戦】
見村 徹弥(千里馬神戸) vs 中村 圭吾(フュチュール)
見村 徹弥 8戦7勝(1KO)1敗
中村 圭吾 10戦5勝(1KO)5敗
1R、お互いに距離の遠いところからスタートした試合。
長身の見村が足を使い、届かないところからでもジャブを飛ばして行く立ち上がり。
そこからわずかずつわずかずつ、距離を近づけて中盤には頻繁にそのジャブが中村を捉える。
近付かなければ届かない中村は踏み込むタイミングを測るも
その切っ先を見村のジャブがことごとく潰していく。
2R、ジャブを突きながら、時折ダイレクトの右を撃ち込む見村。
中盤にようやく中村が踏み込んでジャブを当て、撃ちながら飛び込み、
組み付いて左フックを当てるなど、アタックの中で単発ながら何度か拳を当てるが、
見村のジャブと遠い懐に入り込める頻度は少ない。
ラウンド終了直前、飛び込んできた中村に右のビッグヒットを狙った見村。
ここは空を切るも、緊張感の高い中、ゾクッとさせる一瞬。
3R、距離は維持されたままだが、見村が足を止め始める。
その分、距離が近づく頻度は増え、中村が左右フックを振るうも、見村は上体柔らかく躱す。
中村が飛び込んでの左フックを当てる場面もあるが、
近い距離でも見村がディフェンス能力の高さを魅せる展開。
強く撃ち込む場面を作りに来たか、見村が頻繁にジャブを突きながらクロスを狙い始める。
しかし、中村もうまく外しており、お互いに強烈な被弾は少なく、
やはり見村のジャブの多さが試合を支配している状況は変わらず。
4R中盤、飛び込んで左フックをヒットさせた中村だが、
その撃ち終わり、見村が右フックを強烈にヒットさせる。
さらに数多くジャブを撃ち込まれながら、そのジャブに右クロスを合わせた中村だが、
やはり見村の懐は深く…少し遠いか。
終盤、中村が入ってくるところに左フックを鋭利に合わせた見村。
さらに見村の左ボディと、中村の左フックが相打ち。
依然、見村のジャブが試合を制しているが、見村が足を止めていることで
単発ながらも中村のアタックが成功する場面が少しずつ増え始める。
5R、これまで以上にぐっと距離が近付いた二人。
見村は左右ボディを強烈に捉えると、中村のパンチがわずかに届かない距離を維持しながら
入ってくるところを襲う。
中村が近い距離に入る頻度は増えるも、見村は上体柔らかく躱しながら
左フックから右アッパーなど、自らのパンチを強烈に撃ち込んでいく。
6R前半、圧力を強めたのは後がない中村ではなく、見村の方。
しかし、そこに強烈に右のカウンターを合わせた中村。
攻撃的に出る見村に対し、コンビネーションをもらいながら
右ストレートを差し込む場面を作る中村。
終盤には中村が見村の肩越しに右ストレートを撃ち込む場面を作るも、崩すには至らず。
試合終了のゴングが鳴る。
マイジャッジ 60-54 見村
公式採点
60-54、60-55、60-55
3-0 見村
18分間の間、様々なチャレンジを試みたものの、
そのチャレンジを成功させる事の出来なかった中村。
相手が足を止めた場面でさえ常に遠かった距離。
詰めなければ勝負にならないフレーム差の中、詰める事さえさせてもらえなかった。
「前に出る事」は、言うは易しの典型的なものだと再認識させられた。
A級昇格まであと1勝としながらの3連敗。
勝つまでやる…それができれば必ずA級昇格はつかみ取れる。
この日の敗北を、ボクサーとしての濃厚な物語の一部として昇華させてほしいと強く感じた。
A級昇格を決める勝利を完勝で飾った見村。
フルマークでの連戦連勝で西日本新人王戦を勝ち上がり、老けた風貌と併せて
「ミスターパーフェクトおじさん」と呼ばれた23歳が本領を発揮。
足を使っても足を止めても、常に頭の位置が相手のパンチが当たりにくい場所をキープし、
卓越したディフェンス能力と常に出続けるジャブで試合をはっきりと制した。
常に試合をコントロールする側にあったからなのかもしれないが
全く失速しなかった6R…ここからもう2R増えるA級戦線でも不安は感じない。
静まり返った会場が息を飲むかのようにその姿に見とれた18分。
ここから先、ランキングをつかみ取るような試合にも挑んで行くのだろう。
力としては、充分にある…しかし、一筋縄ではいかない奴らが並ぶランキング。
この若きおじさんの美しきボクシングが、国内ボクシング戦線でどのような道のりを描くのか。
楽しみで仕方ない。
【51.0kg契約8回戦】
鷲尾 樹貴也(千里馬神戸) vs 田中 公士(三迫)
鷲尾 樹貴也 11戦7勝(2KO)3敗1分
田中 公士 11戦6勝(1KO)5敗 サウスポー
1R、緊張感高い駆け引き合戦の静かな立ち上がり。
先に先に鷲尾がジャブを飛ばしていく。
徐々に二人の距離が縮まっていく中、お互い踏み込んで捉え合う場面が早くも出始める。
2R、前の手の攻防…フェイントを掛け合いながら、田中が前の手である右拳を突き刺す場面を2度作る。
このラウンド、田中が先に距離を掌握したか、ダイレクトの左が何度も何度も鷲尾を捉える。
鷲尾にとっては少し遠いか…手数も大幅に減ってしまう。
3R、踏み込んでボディジャブを飛ばしていく鷲尾に対し、
ダイレクトに左を撃ち込んでいく田中。
鷲尾がその左に合わせてお互いの大砲同士が相打ちする場面も。
序盤、鷲尾が踏み込んだタイミングで田中の左ストレートが刺さると
ロープに詰めてコンビネーションを撃ち込む田中。
その後も、左ストレートをヒットさせながら、ラウンド終盤には
またも鷲尾をロープに詰めて田中が的確にコンビネーションを浴びせる。
4R、鷲尾の右ストレートが田中を捉える場面を2度作るが、
距離が近付いたところで田中が左フックを鷲尾のテンプルに叩きつける。
入ろうとする鷲尾に対し、ジャブで出鼻を挫きながら、
ダイレクトの左ストレートを何度も叩き込んでいく田中。
鷲尾が踏み込んだところに田中の左フックが刺さるが、
鷲尾はもらいながら左ボディを撃ち込む。
さらに鷲尾がダイレクトの右を突き刺すが、田中は無理せずクリンチできっちりと遮断。
遠い距離では田中のダイレクトの左にさらされる鷲尾…
潜り込んでも左フックで捉えられる場面が目立つ。
5R開始早々、強烈な左フックを撃ち込み、田中の頭がズレるが
返す刀の左ストレートで、今度は鷲尾の腰が落ちる。
ジャブをもらいながら強引に右ストレートを撃ち込んで、
左ボディから、さらに左右フックと続けた鷲尾。
ダッキングしたところに左アッパー、
さらに近づいたところに左右フックを撃ち込む田中。
ラウンド終盤、チャガチャした場面になると、
鷲尾のボディが強烈に田中を襲う場面が出始める。
密着したシーンでボディを襲った鷲尾だが、田中もボディをやり返してラウンド終了。
6R序盤、距離を詰めた場面でボディを襲った鷲尾。
さらに肩越しに右ストレートを突き刺し、左フックもしっかりと捉える場面も目立つ。
鷲尾が泥臭く戦う場面を作り始めることで、
田中のダイレクトの左が刺さる距離に立つ時間が減り始める…。
7R、鷲尾がもう少し近付きたいところを近付けず、田中のダイレクトの左を合わされる場面が目立つ。
距離が近づいた場面では鷲尾がオーバーハンドの左から右ストレートを突き刺すなど有利に進める。
ガチャガチャした場面の中、田中がこれまで以上に深く踏み込んだ瞬間、
両者の頭がクラッシュし、鷲尾が右目上をカット。
8R、足を使い、こまめに距離を調節しながら左ストレートを突き刺していく田中。
飛び込みながら左フックを撃ち込む場面を作る鷲尾。
踏み込んでボディを叩くなど、状況を打開しようと試みる鷲尾だが
右フック左ストレートなど、次々と田中のパンチが襲っていく。
ラスト10秒、連続で田中が捉えて試合が終了。
マイジャッジ 78-74 田中
公式ジャッジは79-73、79-74、78-74
3-0で田中
終盤になり、田中の右のガードが下がったことで、鷲尾の左フックが当たるようになった場面
左を見せかけて右を撃ち込むなど、鷲尾がペースを盛り返しかけた場面があったが
次のラウンドになると田中は距離を修正。
結局は田中が左ストレートが当たる距離を維持し続けた試合となった。
ガチャガチャした場面では鷲尾が上回ったが
その時間はほんのわずかだったようにも感じる。
不利な局面はすぐに田中が修正してしまった。
まさに試合巧者…2度の新人王戦、B級トーナメント、
いずれも決勝に残る事さえ出来なかった選手が、これ程とは…。
東日本の層の厚さを見せつけられる気分だった。
鷲尾にとっては不完全燃焼を感じる一戦だったようにも感じる。
A級昇格後2連敗とはなったが、この試合が出し切れていない試合だったのだとすれば
出し切れるようになるだけで、ここから残る結果は大きく変わるはず。
試合後、SNSで「俺はこんなもんじゃない」と発信した鷲尾。
自分の強さを信じる気持ちは、強くなる事に対する栄養価の高い材料だ。
鷲尾はこんなものじゃない。
その言葉を、僕も観客席から信じていようと思う。
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