2019/6/9 -花博記念ホール 大阪天神興行Ⅰ- (中日本ボクシング観戦記番外編) ボクシング選手名鑑ピックアップ!
鈍行列車に揺られながら目指す大阪。
今年初の遠征はJBC管轄外のABC興行。
一国一コミッション制度。
有名無実化したその言葉を頭から信じているボクシングマニアも多い。
米国では各州にコミッションがあり、韓国には5つものコミッションが存在する。
コミッションが複数存在する国は多数あり、実は一つしかコミッションがない国は少数だ。
JBCという日本国内最大のコミッションが「勝手に謳っているだけ」のその制度。
日本国内のプロボクシングを管轄している団体は、JBCのみではない。
一国一コミッション制は20年以上前に独占禁止法違反という最高裁判決が下っており、
ルール第1条が以下のように書き換えられている。(Wikipedia[日本IBF]より)
変更前:
「日本ボクシングコミッション・コミッショナーは日本での全ての
プロフェッショナル・ボクシング(以下プロボクシング)
(試合公式試合場におけるスパーリング及び慈善試合を含む)を指揮及び監督する権能を有する。」
変更後:
「日本ボクシングコミッション・コミッショナーは(財)日本ボクシングコミッション
(以下JAPAN BOXING COMMISSION=JBC)管轄下で行われる日本での全ての
プロフェッショナル・ボクシング(以下プロボクシング)
(試合公式試合場におけるスパーリング及び慈善試合を含む)を指揮及び監督する権能を有する。」
この文言は別のコミッションの存在を示唆し、
JBCはそちらに対しての指揮及び監督する権能は有しないことが読み取れる。
山口 賢一(大阪天神)が、JBC管轄を飛び出し、ジムの会長兼選手として海外でボクサーとしての道を切り開き、
そして、現役中に開催し始めた自主興行から、さらにコミッションの設立を行った。
「アジアボクシングコミッションジャパン(ABC Japan)」
設立までの流れは映画「破天荒ボクサー」に記録されている。
ぜひ鑑賞してもらいたい作品だ。
映画はエンディングしても、現実は継続している。
映画の続き…
ABC管轄のボクシングは、毎年数回、定期的に開催されている。
現在ABC管轄で興行を主催するのは大阪天神ジムのみ。
そこにはJBC管轄外のプロボクサー…「フリーボクサー」と言われる存在のボクサーがリングに上がる。
所属ジムとの軋轢から、海外ボクシングへの憧れから、何かしらのワケあり。
他格闘技を主戦場にする選手(JBCは他格闘技との競技平行を認めていない)などなど。
様々な理由で、様々な背景の選手がリングに上がっている。
ボクシング専門誌からも半ば無視されるような形となっているそのボクシングの実態を
先入観なしにつかんでいるボクシングファンには僕はわずか数名しか出会ったことがない。
大阪天神興行の本場、大阪在住であったなら、そういったファンとの出会いも
もっと沢山あるのだろうけれども…。
現状をつかむには、そこに存在する「プロボクシング」をこの目で見るしかない。
「ボクシングを見る」
そのワクワク感と、事前にカードさえ知らされないことからくる不慣れな感覚。
どことなく落ち着かないまま、のんびりとした鈍行列車。
普段読めずにいたボクシングの資料を読みふける。
ボクシング専門誌の記者でさえ、きっとここにあるプロボクシングは何も知らない。
それを知れる…そんな喜びも感じる。
朝早くに出発し、昼前に大阪難波駅に到着。
所用を済ませて、17:00開場の大阪天神興行に向かう。
きっかりに会場入りすると、既に客席が半分程は埋まっている。
リングの上ではスパーリング大会が行われている。
出場しているのはプロ否加盟のジムの練習生たちか。
プロの試合ではなくとも、この大会にそれぞれが期するものがあってリングに上がっているのだろう。
熱く激しい戦いが繰り返される。
スタートは17:30となっていたが、スパーリング大会が長引いた影響からか。
第一試合開始が18:15開始と発表される。
パンフレットに目を落とすと、そこに掲載されているのは
4回戦3試合とWBFアジア太平洋王座決定戦の10回戦が1試合。
合計22Rのスモール興行だ。
しかし、わずか4試合でも第一試合が始まるころには会場が満員。
決して広くはない会場だが、人の密集が作り出す圧迫感で会場内の熱気は高まる。
最低ラウンド数の規定があるJBC管轄の興行では実験的にやってみることさえできない興行形態。
こういったところにABCジャパンの強みを感じる。
出場する選手がわずか8名でも、メインがJBC不認可タイトルでも
興行が成り立つことをあっさり証明してしまう。
そして、密集した観客の熱気は、そのままリングの中に伝わっていく。
いよいよ18:15。
第一試合のゴングが鳴る。
■ライト級4回戦
後藤 心大(大阪天神) vs 渡邊 啓斗(フリー)
後藤 心大 2戦2勝
渡邊 啓斗 デビュー戦
ジャブを突きながらまわって行く後藤。
相手が撃ち出すシーンではしっかりとガードを固めて、左右フックを撃ち込んでいく。
ラウンド中盤には渡邊が、いいタイミングで左ボディと右ストレートを突き刺して反撃。
終盤になるとカウンターの奪い合いになる中、後藤は一発当たると二発三発とコンビネーションで捉えるが
渡邊も背筋がヒヤリとするようなカウンターを撃ち込んでみせる。
2R開始早々、攻め込んできた渡邊をしっかり防ぎ切った後藤は、強烈なコンビネーションを浴びせる。
ラウンド中盤、強烈なアッパーで渡邊を捉えた後藤、しかし渡邊も怯むことなく、
強烈な右ストレートをカウンターで撃ち込む…お互いに一発で試合が終わる可能性も感じる鋭さ。
後藤はその後、腕を一周まわしてアッパー撃ち込むなど、
トリッキーな動きを見せながら、下から上に次々と渡邊を捉えていく。
しかし、ラウンド終盤に渡辺のカウンターがまたも後藤を捉えると、
そこからの撃ち合いは渡邊優勢でこのラウンドを終了。
3R、渡邊の撃ち終わりをコンビネーションで捉えていく後藤。
ここまで失速の見えなかった渡邊だが、
後藤の左フックが強烈に顎をえぐったところで渡邊の手が止まり始める。
後藤は的確に渡邊を捉えていき、ロープに詰めてパンチをまとめようとするが
そのたびに、渡邊のカウンターがそれを阻む。
4R、ポイントでの挽回が難しい中、渡邊はコーナーに詰められて
後藤がパンチをまとめようとするところを狙い済ましたように
力のこもったカウンターを撃ち込む。
渡邊は強烈にもらいながらも、最後の最後まで狙い続ける。
しかし、そのカウンターに臆することなく後藤は次々に渡邊の顔面を襲い続ける。
ロープに詰められた渡邊がマウスピースをこぼし、
レフリーが拾い上げたところでラウンド終了のゴング。
マイジャッジ 40-36
公式ジャッジ 40-36×3 勝者:後藤
後藤、フルマークの完勝。
これでデビュー3連勝とした。
アマチュア経験も豊富な後藤が、しっかりと力の差を見せて勝った試合。
前回の試合に増して、パンチの鋭さを感じるようになった。
少々もらいすぎも感じたが、まだデビューから1年2か月。
ここからさらに洗練されていくだろうと感じる。
ポイント的にははっきりとした敗者となった渡邊だったが、
力の差を感じる中で、被弾に怯まずカウンターを浴びせに行った姿は凄まじかった。
一発でひっくり返るのがボクシング。
強烈に捉えるシーンもあり、その可能性を抱かせ続けた姿は
1Rさえ取れなかったデビュー戦で今後への期待を抱かせる。
この試合は善戦であり熱戦…それを演出したデビュー戦選手。
また面白いフリーボクサーが現れたように感じる。
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