2019/03/31 -愛知・刈谷市あいおいホール- 見どころ(中日本ボクシング観戦記) ボクシング選手名鑑ピックアップ!
メインのカードが、中日本vs中日本となるのはこの日が今年初。
地方の先を目指す二人が、中央の目が届かない場所で潰し合う。
名を全国に売る資格を得るのはどちらか。
力としては充分にその可能性を持つ二人が、相手の名声を喰いあう。
背筋がゾクゾクする決戦…。
中日本新人王のカードも多数組まれ、選手のボクサーズロードを割かつカードばかり。
いわゆる「渋い」と言われるカードが立ち並び
中日本のファン生唾の興行となっている。
愛知のボクシングのメッカとなりつつある刈谷だが
現在のところ、この日の興行が終われば、次回の刈谷の予定は8月の中日本新人王決勝。
2興行しかなかった春の刈谷を締めくくる日となる。
■中日本ミニマム級新人王準決勝
【ミニマム級4回戦】
一枡 克美(駿河) vs 大畑 龍世(伊豆)
一枡 克美 1戦1敗
デビュー戦は最軽量級らしからぬTheド突き合い。
いきなりの激しい撃ち合いの末、前のめりのダウンを喫しての1RTKO負け。
決してノーチャンスの試合ではなかったと思えるが、試合を見れたのはたった2分24秒。
まだこの選手のシーナリーはつかめていない。
大畑 龍世 デビュー戦
昨年11月にC級プロテスト合格。
デビュー戦の為、もちろん初見。
毎年、新人王戦でデビューした情報のない選手の何人かが輝きを放ち、トーナメントをかきまわす。
大畑がどんなボクサーなのか、そしてどんな活躍を魅せるか…。
新しいボクサーに出会える喜びも大きい。
この試合の勝者は8月4日の中日本新人王決勝に進出する。
待ち構えるのは丁野 拓海(中日)。
僕自身はこの階級のトーナメントの優勝予想に丁野を挙げている。
一枡のデビュー戦の相手でもある丁野、この試合に勝てばリベンジマッチの資格を手に入れる。
一枡がその舞台に辿り着くか、デビュー戦の大畑がそれを阻止するか。
第一試合から運命が絡み合うカード。
■中日本ライトフライ級新人王準決勝
【ライトフライ級4回戦】
ブル 弘師(HEIWA)vs田中 蓮志(トコナメ)
ブル 弘師 5戦2勝(2KO)3敗
その名の通りの熱血ブルファイターから、足を使ったボクシングを展開するようになり、
2連敗から2連勝で、昨年の中日本ミニマム級新人王を奪取した。
今年は1階級上げて新人王にエントリー。
トコナメジムからHEIWAジムへの移籍初戦。
田中 蓮志 2戦1敗1分
未だ未勝利だが、そのスピードは特筆されるものだと感じる。
負けた相手は昨年、激戦を勝ち抜いて中日本ライトフライ級新人王に輝いた太田 アレックス(西遠)。
2戦目は後藤 圭人(タキザワ)との好選手同士の一戦でドロー。
出入りが止まらなければ、勝ち上がっていく可能性を充分に持つ。
これまで戦って来たトコナメジムから円満にHEIWAジムへ移籍したブル。
しかし…その初戦、新人王トーナメントの中で組まれた試合は元同門対決。
ここもまた、運命が交錯するカード。
昨年の中日本・西部日本新人王対抗戦からの新人王再挑戦となるブル。
得て帰ってきたものの大きさを魅せつけるのか…。
今年の中日本ライトフライ級新人王の僕の優勝予想は、田中を挙げている。
この試合の勝者は8月4日の中日本新人王決勝でシードの中村 潔(ARITOMI)と対戦する。
■中日本スーパーフライ級新人王準決勝
【スーパーフライ級4回戦】
菅原 健太(名古屋大橋) vs 永治 悟志(薬師寺)
菅原 健太 1戦1勝(1KO)
名古屋大橋ジム期待のプロ1号選手。
デビュー戦の会場は菅原目当ての客がたくさんいた人気者。
試合はボディから崩しての4RTKO。
昨年11月には、相手のインフルエンザで直前で試合が中止となる不運もあった。
試合を楽しみに待つファンも多いだろうと感じる。
期待を背負っての活躍に期待したい。
永治 悟志 1戦1勝(1KO)
東京の宮田ジムでプロテストに合格するものの、デビュー戦を戦うことなく名古屋に拠点を移した永治。
デビュー戦では既に6回戦のリングを踏む15戦目の森泉 正巳(鈴鹿ニイミ)と対戦。
圧倒的なスピード差での1RKO劇を見せた。
55Kg契約だったデビュー戦と比べると、3kg近く軽くなるスーパーフライ級での参戦。
パフォーマンスに影響がなければ、今年の全日本新人王を期待させる選手。
バランスの取れた好選手である菅原と、スピードに特化した永治。
中日本新人王戦、現行で組まれている中でもかなりの好カードだと感じる。
僕の中日本スーパーフライ級新人王戦の優勝予想は永治。
勝者は8月4日の中日本新人王決勝へ出場。
対抗ブロックには昨年の同階級の中日本新人王ファイナリスト堀井 翔平(トコナメ)が参戦している。
■中日本スーパーライト級新人王準決勝
【スーパーライト級4回戦】
藤田 裕崇(名古屋大橋) vs 鈴木 啓市(とよはし)
藤田 裕崇 1戦1勝(1KO)
早大ボクシング部時代は世界を期待される岩田 翔吉(帝拳)などの超強豪選手と環境を同じくして戦った藤田。
11月には、この日戦う鈴木を相手に1RKOで颯爽とデビュー戦勝利を飾っている。
ヒラリ…ヒラリと相手を交わしながら、仕留めたワンツーからの右アッパーは衝撃的だった。
鈴木 啓市 1戦1敗
トランクスに闘牛の異名を刻む豊橋の人気者。
ファイトスタイルは闘牛そのもの…しかし、デビュー戦はその圧力で捕まえる前に
藤田のワンツーからのアッパーに沈んだ。
初戦、完敗だった鈴木。
しかし…捕まえたとき、押し込んだ時にどうなるかは見れていない。
リマッチのチャンスが手に入るのは幸運なこと。
偶然と言う名のリアルが作り出すドラマのカード。
豊橋の猛牛、今度こそ捕まえるシーンを作り出せるか。
今年の中日本スーパーライト級新人王の優勝予想にに挙げた藤田。
このトーナメントでは力が一つ抜けているように思える。
ただし、一発で勝敗が決まるこの階級を勝ち抜けるのは簡単ではない。
驚きの勝敗が多くあるのもこの近辺の階級。
一度勝っている相手との試合は「勝って当たり前」の視線が向けられることもあり、
リング上以外の強さも求められるもの。
決勝で勝者を待ち受けるのは片岡 晃誠(蟹江)。
昨年の全日本新人王、橘 ジョージ(協栄)とスプリットの判定を演じたこともある選手。
勝者に待ち受ける壁も、高い位置にある。
■中日本ウェルター級新人王準々決勝
【ウェルター級4回戦】
能嶋 宏弥(薬師寺) vs 上原 大樹(伊豆)
能嶋 宏弥 デビュー戦
初見の選手。
最近の薬師寺ジムはデビュー戦時点での好選手が出て来る印象もある。
アマチュア戦績は18戦13勝5敗。全日本社会人選手権で準優勝を記録している。
上原 大樹 デビュー戦
こちらもアマ実績があり、18戦9勝9敗。
アマ戦績の数字的には能嶋に劣るが、中学時代のUJ全国二冠の実績で注目を集める。
高校時代も全国大会の常連としてその名を残している。
デビュー戦同士だが、アマキャリアのある二人の対戦。
中日本新人王の中量級としては大人数の5名がエントリーしたウェルター級。
この試合の勝者は4月28日、岐阜のリングで廣中 大介(とよはし)と対戦。
猛烈な圧力を誇る廣中を上回る可能性を持つ両者なのかどうか…。
そこから確認したいと思う。
【ライトフライ級4回戦】
中村 潔(ARITOMI) vs 丁野 拓海(中日)
中村 潔 9戦3勝(2KO)6敗
今年の中日本ライトフライ級新人王はシードで決勝から登場。
大幅負け越し…だけど、頑張るボクシングの代表格として熱くさせてくれる選手。
センスを感じさせない不器用なボクシング。ただ…頑張るのみ。
プロとは何か…その一つの答えを持つ選手。
丁野 拓海 2戦2勝(1KO)
今年の中日本ミニマム級新人王の決勝から登場する丁野。
デビュー戦では軽量級らしからぬド突き合いで1RKO。
2戦目は中国に渡り、敵地のリングで2勝目を挙げている。
全日本までしっかりと勝負できる逸材。
今年の中日本新人王、ミニマム級とライトフライ級で決勝から登場の両者が対戦。
お互いにこの試合の前に対戦相手が決まっていることとなる。
決勝のカードに思いを馳せるのに、この試合があることで構図も解りやすくなる。
また、中村は見る者に「明日頑張ろう」を与えてくれるボクサー。
新人王戦前のチューンナップ戦にも思われるカードだが、中村にそんなことは関係ないはず。
丁野のセンスもまた見どころの一つ…、様々な角度から魅力が感じられるカード。
【スーパーフェザー級6回戦】
今田 雄大(蟹江) vs 太田 卓矢(とよはし)
今田 雄大 13戦6勝(3KO)4敗3分
2016年の中日本フェザー級新人王。
西軍代表決定戦で敗北後、6回戦のリングに上がり、1勝1分とし、
A級昇格まであと0.5勝としながら連敗で足踏みしている。
しかし、負けた相手は次戦で元OPBF王者に挑む菅原 秀馬(市野)、
西でランク入りを睨む小西 帝士(井岡弘樹)など今にも注目を集めそうな逸材選手。
A級を戦う力は持ち合わせている選手。
太田 卓矢 9戦6勝(4KO)2敗1分
デビューは2012年。5年のブランクを経て復帰すると、2018年度中日本スーパーフェザー級新人王を勝ち抜け、
全日本新人王決勝戦まで勝ち上がった。
その最中、抜群の打たれ強さと、退かぬスタイルで数々の激闘を演出し、
中日本を代表する激闘派を印象付けた。
「漆黒の弾丸」と異名されるその黒い肌は、日焼けサロンで焼いたもの。
昨年、高瀬 衆斗(蟹江)が引退し、入れ替わるように登場した太田が
中日本激闘派の代表格としての印象をはっきりと刻んだように感じる。
しかし、今田が昨年の菅原戦で見せたファイトも、また激闘派の印象を与えるもの。
高瀬がいなくなった今、この二人の対戦は次の中日本No.1激闘派を決める一戦にも見えてしまう。
一つの地方の、現代の立ち位置を決める試合。
「中日本激闘王決定戦」
…そんな冠を勝手につけたくなる勝負の試合。
勝った方が手に入れるものは、たかが1勝…しかし、
この1勝が意味するものはどちらが人々の記憶にその存在をより強く残すのか。
存在証明がかかった試合だと感じる。
【ウェルター級6回戦】
相徳 恒彦(橋口) vs 松井 敦史(薬師寺)
相徳 恒彦 13戦4勝8敗1分
鹿児島の橋口ジムから中日本のリングに3度目の登場。
デビュー2連敗から静岡のリングで初勝利を飾り、西部日本新人王として刈谷にも登場した。
2015年の中日本・西部日本新人王対抗戦では斉木 新悟(コパン星野)に1RKOで敗れている。
残念ながら試合を見れたことはないが、足も使え、手数も出る選手と聞く。
話からは引出しの多い選手との印象を受けるが…その姿を確認できるのを楽しみにしたい。
松井 敦史 5戦4勝(4KO)1敗
デビュー以来、全て1RTKOで勝ち上がった昨年の全日本新人王決定戦。
辻本 純兵(帝拳)にダウンを奪われての判定負けでランク入りを逃した。
デビューが遅く、今年36歳の松井。
昨年、東日本ボクシング協会から年齢制限撤廃の要望は出されたものの、
現行は来年1月をもって強制引退となる。
松井がどこまで辿り着けるのか…今年1年勝負の年となる。
A級昇格まであと2勝、ランカー挑戦のチャンスをつかむことができるのか…。
一戦一戦がフィナーレに向けたドラマとなる。
【フライ級8回戦】
冨田 真(HEIWA) vs 村上 勝也(薬師寺)
日本フライ級13位
冨田 真 17戦9勝6敗2分
勝ち負けを繰り返しながら、昨年A級昇格を決めると二連勝。
出入りのボクシングだった冨田が、熾烈なファイトで日本ランキングを勝ち取った。
元々、小気味いいテンポで試合開始から終了まで走り抜ける爽快なボクシングを見せていたが…
昨年から見せ始めた、近距離で細かくポジションを変えながらのファイトで、
元々のテンポの良さに熱量の高いファイトを付加している。
日本王座挑戦権がある12位まではあと順位一つ。
この試合に勝てば、その境界線を越えることが濃厚となる。
村上 勝也 8戦6勝(2KO)1敗1分
A級昇格の権利を手にしたのが一昨年の7月。
そこから眼底骨折で試合が流れるなど、なかなか試合が成立せずのブランクとなった。
日本ランキングを獲る実力はある。
涼しい顔でシレっと勝ち切るセンス豊かなボクシングは魅力的。
A級初戦はランカー挑戦となった。
日本ランキングを所持する冨田が格上の試合。
しかし…僕には、センスと相性で村上有利と思えている。
元々センスで言えば、村上はベルトまで期待できていい選手。
まさかランカーになると思っていなかった冨田。
持ち合わせで言えば、村上が圧倒的に大きいと感じる。
ただし…「まさか」のランカーとなった冨田である。
A級に上がってからのファイトは冨田の開花を思わせる。
たまたま手に入ったランキングではなく、
ランカーとして相応しい強さを手に入れてその立ち位置にいる選手である。
“ランカーになると思えなかった”選手が、ランカーになるほどに強くなった。
だからこそ、この試合は分からない。
1年半ぶりの試合、村上にとってはチューンナップでもいいタイミングで、
メキメキと頭角を現し、登り調子の勢いもある冨田との対戦。
右肩上がりの上昇期に入っている冨田が、次の試合
どこまで力を伸ばしてリングに登場するかは予測がつかない。
冨田にとっては手に入ったランキングを守りに入りたくなるタイミングで
実力の高いノーランカーを迎える気の強いカード。
お互い、ここで潰し合わなくても誰も文句はないタイミング。
ここであえて潰し合う…。
見たくない…だけど見たくない。
そういう感情を抱くカードであることが、好カードの証明と感じる。
全カードに中日本の選手たちの運命を分かつような魅力を持つ興行。
中日本新人王の優勝候補たちも多く登場する。
中日本の色味が濃い一日になりそうだ。
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