2018/7/9 -後楽園ホールⅢ- (中日本ボクシング観戦記番外編) ボクシング選手名鑑ピックアップ!

2018/7/9 -後楽園ホールⅢ- (中日本ボクシング観戦記番外編) ボクシング選手名鑑ピックアップ!
 
 

■ミドル級8回戦
アーネル・ティナンパイ(比) 3RTKO 福本 祥馬(角海老宝石)

5年前に敗れたティナンパイへのリベンジマッチ。
序盤から潜り込んで猛烈にボディを叩くティナンパイ。
徹底的なボディ攻めから上に返された一撃で福本がダウン。

福本の反撃もティナンパイに強烈に突き刺さるが、ティナンパイの突進は変わらず。
3R、苦しんだ福島の一撃がティナンパイを捉え、グラつきながらクリンチに逃げるティナンパイ。
チャンスに攻勢を強めた福島だったが、ティナンパイのオーバーハンドを食ってまたもダウン。
ここは立ち上がったがダメージは抜けず、ティナンパイのラッシュに晒される中でレフリーストップ。

間違いなく、日本ミドル級のトップクラスの選手である福島だが…。
この日のティナンパイは強すぎた。
既に20敗を重ねている選手だが、これで日本では4勝目。
世界は広い…同じアジアの中量級にもこんな選手がいる。

フレーム差を生かせず、潜り込まれ、序盤から上も下も効かされた。
だからこそ、ティナンパイを効かせた場面では多少強引にでも行った。
逆転のチャンスに賭けたが、そこで背負ったリスクがそのまま降りかかる。
選択としては正解の一つだったようにも思う…ただ「賭けに負けた」。
そんなふうに見えた。

強い男と、強い男が殴り合った。
結果、勝敗に黒がついた…そういう試合だと思う。
 
 

■スーパーウェルター級8回戦
坂本 大輔(角海老宝石) 4R棄権 越川 孝紀(セレス)

坂本が引退試合の相手に指名したのは習志野高校の後輩、越川。
日本ランカー同士の一戦、日本王座挑戦権圏外の14位にランクされる越川にとっては
2位の坂本を相手にする試合はチャンスでもある。

大振りを繰り返す坂本に対して越川のパンチが小気味よく突き刺さる中、
信じられないくらい大きな坂本のビッグヒットが時折越川を捉え、越川が揺れる。
もらいながらも、フェイントを織り交ぜて抜群のタイミングでフルスイングをヒットさせる。

お互いにダメージを重ね合う中、会場には習志野高校の校歌が響き渡り、
坂本コールと越川コールが繰り返される。
リングの撃ち合いは熱を帯び、後楽園ホールの熱がどんどん上昇していく。
そんな中、4R終了時に坂本サイドから突然の棄権。

悔しそうにコーナーにへたり込む坂本。
どこかを痛めていたか、ダメージを見てのことなのか…詳細は解らない。
ただし、試合終了にどよめきはあったものの、会場からは納得の拍手が送られた。
 

「引退試合」に対して批難の声も聞いた。
先を目指す男たちがボクサー人生をかけてサバイバルする…そんな価値観からは反するのかもしれない。
ただ、試合を見て抱いた思いは、「このリングに上がった二人は偉い。」

チャンピオンを目指すだけがボクシングではない。
誰かに勝ちたい、この試合をやりたい…目指すところは様々ある。
引退試合と言う名のお披露目ショーではなかった。

最後に自分の認める後輩と全力で戦い、勝ちに行った坂本。
それを受けて立ち、見事に打ち破った越川。

ボクシングは殴り合いを練り上げたモノ。
どれだけショーアップしても、スポーツとなっても、一つずつ殻を剥がせば、その核心は「殴り合い」だ。
ボクシングの原色に近いものを見たように感じる。
 

何よりも、この試合を坂本がやったことで一番幸せだったのは坂本ファンではなかっただろうか。
気が付けば消えている、知らないうちに辞めていた…そんなボクサーも多い。
よくある勝負の試合に敗れて辞めていくケースも…負けたら終わりなのは解っていても、
応援しているファンにとっては、その敗北自体が晴天の霹靂だったりすることが多い。

坂本を見れるのは、今日この日が最後。
そんな覚悟を持って、この日の試合を目に焼き付けた坂本ファンは、この試合をきっと一生忘れないだろう。
…羨ましいことこの上ない。

坂本…もっと見ておけばよかった。
熱烈な坂本ファンの一人になっておけば、この日のこの試合に心をどれだけ揺さぶられたことだろう。

一人のボクサーを強く愛し、深く深く知っていくだけでも充分に色濃く大変なもの。
何人も何人もなんてなかなか難しいし、それこそ全てのボクサー…なんて不可能。
好きなボクサーが増えれば、必然的に一人一人に対しては浅くなる。

でも、やはりより多くのボクサーを、より深く知りたい。
そうすれば、心底没頭して熱を込められる試合が増えていく。
1日24時間じゃ足りない。

悔しさと、羨ましさが交錯しながら眺める試合後のリング。
坂本は二人の子供を抱えながらリングでインタビュー。
家に帰って子供の顔が見たくなった。

時計を見ればまだ9時前。
最終の新幹線には充分に間に合う。

泊まりの予定で来ていたが、一緒に観戦していた方々に詫びてそのまま帰路につく。
新幹線の中、繰り返し続ける余韻。
 

この日の興行は頭から最後まで、格段に面白かった。
凄いものを見た…そんな感覚に包まれての帰路。

帰宅して娘の寝顔を眺めたのは深夜0:30。
お父さんも、なんかやらなきゃな。

坂本 大輔みたいなカッコいい父ちゃんにはなれないけど、何かしら自慢できる父ちゃんになりたい。
誰かに「お前の父ちゃんは凄かったんだぞ」って言ってもらえる父ちゃんになりたい。

また、僕の人生に影響を与える試合が一つ。
…僕の人生は、リングで殴り合う男たちによって作られていく。
僕だけじゃない。「ただの殴り合い」はきっと、様々な人間の人生を変えていく。

それがボクシング。そういうものなんだと思っている。
 
 
 

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