2018/4/15 -メッセウイングみえ- ファイナル(中日本ボクシング観戦記) ボクシング選手名鑑ピックアップ!

2018/4/15 -メッセウイングみえ- ファイナル(中日本ボクシング観戦記) ボクシング選手名鑑ピックアップ!
 
 
 

【バンタム級8回戦】
中村 祐斗(市野) vs 荒木 哲(斉藤S)

・中村 祐斗 11戦7勝(6KO)4敗
・荒木 哲 12戦10勝(2KO)1敗1分 OPBF東洋太平洋バンタム級9位

試合前は知らなかったが、この試合…日本ユースバンタム級王座挑戦者決定戦だったとのこと。
初代ユース王座決定戦で敗れた中村にとっては二度目のチャンスをつかむための試合。
相手はOPBF東洋太平洋バンタム級14位から9位にランクを上げている荒木。
地方の岡山で活躍する彼にとっても、ユース王座挑戦は名を上げるチャンス。
 

1R、お互いに距離を測りながらスピーディーなパンチの応酬。
力を込めて突き刺す荒木の左…ジャブの刺し合いは荒木に分があるか。
静かなラウンド。
 

2R、徐々に徐々に距離が詰まり始めるにつれ、お互いに強烈なボディの頻度が増え、
試合は削り合いになりそうな臭いも感じる。
離れた距離で反応がわずかに早い荒木…距離が詰まれば中村の獣じみたフックがねじ込まれる。
 

3R、スピード豊かなジャブで中村を捉えて行く荒木。
近い距離では強烈なフックでボディをえぐる中村だが、
入り際でジャブでたたかれてしまう…左がとにかく厄介な状況。
接近した中村に荒木が撃ち込んだボディの角度もえぐい。
 

4R、ラウンド中盤、距離が詰まり始めると押し込んでいく中村だが
差し込まれる荒木のカウンターは鋭利な代物。
しかし、臆せずに突っ込んでいく中村…
荒木がバランスを崩したところに強烈な左フックを叩きつける。

被弾しながらも、臆せずに撃ち込んでいくのは荒木も同じ。
内側から小さく鋭く、カウンターを撃ち込んでいく。

このラウンド、荒木のヒッティングで中村がカット。
 

5R、ファイターとアウトボクサーの構図…左で串刺しにされていく中村。
ラウンド後半に差し掛かろうとしたところでは、中村が大きく振ったところに
荒木のカウンターが完璧とも思えるタイミングで突き刺さる。

チャンスと見て攻め込んだ荒木だが…そこに待っていたのはタフで鳴らす中村の猛反撃。
荒木の顔面が跳ね上がるシーンが一気に増える。
 

6R、圧力を強めていく中村に冷静に左を突き刺す荒木。
近づけば中村、離れれば荒木…その構図は変わらずだが、
荒木が圧されるシーンも目立ってくる。
 

7R開始とともに一気に攻め込んだ中村。
若干鈍り始めた荒木を中村が捕まえる頻度が増える。
それでも、切って落とすようなタイミングの荒木のカウンターは健在。
もらってももらってもお構いなしに強引に詰めていく中村。
 

8R、最終ラウンドは両者激しく撃ち合うが…
タイミングの良さ、ヒットの多さで上回っていく荒木。
しかし、撃ち合い身上の中村…絶対に引かず。
時折強烈なパンチを撃ち込むものの、その何倍もパンチをもらった中村。
最後はよく立っていたと思えるほど…試合は最終のゴング。
 
 

マイジャッジ 77-76 中村
 

しかし、荒木のジャブにどれだけの重きを置くか…。
それ次第で採点は如何様にもブレる試合に思えた。
 
 

77-75、77-75、79-74…
 
 

ジャッジ三者ともに…荒木を支持。
 
 
 

スピードで上回った荒木。
小手先のジャブではなく、力のこもった…かつ速いジャブで中村を串刺しにした。
強い…本当に強い選手だと思う。

岡山からまた強いボクサーが出てきた。
斉藤スポーツジムは倉敷守安の系譜を持つジム。
…どんだけ凄いんだ、守安の血は。

日本ユースバンタム級タイトルマッチへの挑戦権獲得。
この13日後、大阪で行われる同タイトルマッチの勝者と戦うこととなる。
現王者の中川 抹茶(角海老宝石)に対し、前回日本スーパーバンタム級ユース王座で
勝っていてもおかしくない試合を展開した入口 裕貴(エスペランサS)が挑む。

この試合、僕は大阪まで観戦遠征する。
脳内では荒木の姿を浮かべながら観戦したいと思う。
 

中村…勝ってほしかった。
直前の公開スパーで見せた驚きの変化は、この試合では見ることができなかったように思う。
スピード負けしながら、詰めていくしかなかったような状態。
それでも、僕の中ではわずかに押し切ったかのようにも思えた。

どうだったのだろう、贔屓目が入っていてそう見えたのか、
ジャッジによっては中村に転んだ可能性のあった試合だったのか…

ただし、中村の負けに対して僕は悲観的にならない。
負ける姿に、まだまだ強くなる中村を感じた。
むしろ中村に対する期待感の増幅を感じる。

スピードで負け、タイミングを合わされ、普通なら雁字搦めになっておかしくない状況。
身体的な能力差だったりで言えば、荒木に圧倒されてもおかしくなかったと思う。
前に出てその差を潰していった…。

中村の荒い部分が修正されていけば、きっと今より上のステージに行くだろう。
そしてそこには、自分よりも強い相手がたくさんひしめいている。
その中で勝ち抜いていくには、最後の手段を持っておく必要があると思っている。

日本ランカー相手に見せたスパーの力が常時発揮できるようになった時、
今見せている突貫の撃ち合いはきっと減っていく…
しかし、追い詰められたときにいつでも出せる引出しになる。
誰もが持てる武器ではない。

中村はきっとまだまだ強くなる…そして、負けない選手になっていくはず。
時折見せる獣のような獰猛さも含め、魅力に溢れた三重のメインイベンター。

応援している選手が負けた…しかしそれは、彼の未来に対して清々しい思いさえ抱かせてくれた。
 
 

三重の興行は今年1回きりの予定。
次に来れるのは来年か…大満足の興行に帰るのが名残惜しくなる。
会場の景色を目に焼き付けながらフラフラフラフラ。

解体されたリングを見届けた頃には、バスがもう出発してしまった。
1時間に1本のバス…仕方ないのでタクシーを呼んで津新町駅まで。
そこから近鉄の急行列車に乗り込みのんびりと名古屋を目指す。

自宅に着く頃はちょうどTVで世界戦が始まる頃か…。
頭の中では中村の姿がぐるぐるぐるぐる。
 

2連敗の中村。
ホープと呼ぶには負けの数が増え過ぎたか…。

でも、中日本のファンは知っている。
何度も何度も負け、そしてチャンピオンになった選手を。

大橋 弘政(HEIWA)…第36代・第38代OPBF東洋太平洋スーパーバンタム級王者。
 

チャンピオンになる選手の多くはデビューから期待され、連戦連勝…
たまに負けても連敗なんてほとんどしない。
でも、大橋は負けまくった…沢山負けて、そのうえで上り詰めてチャンピオンになった。

負け越しから勝ち越しになった戦績はすぐイーブンに戻り…。
でも、そんな中で強くなっていき、ある一時期を境に負けなくなった。
3年近く連戦連勝を飾り、ベルトを巻くまでになった。
 
 

彼が負けながら王者になった意味はとてつもなく重い。
大橋がいたから…中村がベルトを巻く姿を現実的に想像できる。

大橋と中村は全く違うボクサー。
でも…なぜか歩く道を重ねてしまう。
 

そんなことを思っていたら、なんかチャンピオンになったら遠い存在になっちゃうな…なんて思って
それはそれで寂しい気がした。

中村が連勝ロードを走り始めたとき、きっと応援するファンは増え、
地方ボクシングを見守るファンだけの宝物状態ではなくなってしまう。
青田買いが好きなファンは絶対に見ておくべき選手。
俺はあの頃から知ってたんだ…なんて自慢ができるように。
 

中村のことを日本中のボクヲタが知るようになる頃、
今日の試合を思い出して…あの頃の中村はダメだったなぁなんて言いながら、
苦手なお酒でも飲んでいたい。

強くなる。
中村は絶対に、今の何倍も強くなる。
 
 

 
 
 

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