2018/3/31 -名古屋国際会議場- セミファイナル+林翔太引退式(中日本ボクシング観戦記) ボクシング選手名鑑ピックアップ!
【51.0kg契約8回戦】
畑中 建人(畑中) vs 松井 謙太(三河)
・畑中 建人 4戦4勝(4KO)
・松井 謙太 15戦8勝(1KO)7敗 日本ミニマム級4位
スーパーホープが日本ランカーに挑戦。
確かにその通りの構図。
しかし、畑中 清詞(松田)の息子として華々しくデビューした畑中 建人に対し
松井は勝ち負けを繰り返しながら、一つの大きなアップセットを勝ち取り、
日本王座挑戦まで辿り着いた選手。
昨年、その勝ち星を拾うまでは無名のノーランカーだった。
僕自身、松井がランカーになる姿は想像できていなかった。
それが…鳴り響く入場曲、ベースのチョッパーが気持ちいい。
スポットに照らされながらリングに向かう松井。
松井が…こんなに華々しいリングに登っていく…。
日本王座挑戦の時も見に行きたかったが、都合で断念。
日本ランカーになっての松井を見るのは初めてだった。
なんだか感慨深い気持ちになって、泣けてくる。
松井が…松井がこんなに注目を浴びるリングに登っていくなんて…。
目をこすっているうちに松井はリングイン。
あ…せっかくの松井のリングイン、全然見れてない。
そして、赤コーナーから畑中が入場。
多くの幟の中を入場してくる姿は威風堂々、期待の高さに対して臆す様子も感じさせない。
1R開始のゴングが鳴ると、ガードを下げて上体柔らかく畑中のパンチを交わしていく。
いつもどこかぎこちなさを感じていた松井だったが、それがほとんど感じられない。
ランク奪取、日本王座挑戦…自信と経験が松井を一回り強くしたようにも感じさせる。
対して、力強く振っていく畑中。
一発当たるごとに大歓声が上がる。
接近した瞬間、松井の肩越しに叩きつける右は強烈。
ラウンド中盤、畑中の左右のフックが松井を捉え、バランスを崩す松井。
このチャンスに一気に攻め込んだ畑中だが、ここを堪え、撃ち返してこのピンチを逃れた松井。
足を止めて撃ち合ったこの場面では、畑中を上回った松井。
…しかし、コーナーに戻る松井の左目上からは血が。
ヒッティングによるカット。
1Rから仕留めにかかろうとした畑中はオーバーペースにならないか…
1Rから切ってしまった松井の傷がどれだけ持つか…
お互いが短期決戦になる要素をはらんだ出だしとなった。
2R、フェイント合戦の中から撃ち出された右フックが続けざまに畑中の顔面を襲う。
さらに頭を着けての撃ち合いになると、
松井の右フックが畑中の顔面を跳ね上げるシーンも多くみられるが…
畑中は一発当たればそのままコンビネーションで一気にパンチをまとめる。
流れは畑中か…。
さらにもう一つ、ヒッティングによるカットを負う松井。
3R、巧く足を使いながら松井の右フックを外し始めた畑中。
畑中の的確なヒットばかりが積み重なる一方的なラウンドになっていく。
ここでヒッティングの傷に対してドクターチェックが入るがここは続行。
畑中の攻勢は相変わらずだったが、松井がこれまでとは違う、
タイミングをずらした体ごと叩きつけるような
右フックのカウンターを撃ち込むと、畑中が一瞬フリーズ…
しかし、それをきっかけに始まった撃ち合いでは松井を畑中が上回る。
ラウンド終盤には、逆に畑中のフックで松井がフリーズする場面も。
4R、血で染まった松井が接近戦で撃ち合いを挑んで行く。
松井は幾度も被弾しながら、体ごとぶつけるようなカウンターで時折畑中の動きを止める。
タイミングをずらしながら撃ち込むその右フックに巧く対応できない畑中。
展開的には畑中優勢は動かないが、ランカーの意地を叩きつけるような松井の戦いぶり。
2度目のドクターチェックも続行となり、グローブにまかれたバンテージを
真っ赤に染めながら、また二人が殴り合う。
5R、いきなり踏み込んでの右をぶつけた松井。
お互いパンチを外し合いながら撃ち合う…激しい攻防。
松井が的確なコンビネーションを当ててみせる…タイミングをずらし、
角度を変え、様々な引出しを開けていく松井。
それは変則の一言で片付くものではなく、これまで格上と何度も戦いながら、
都度都度工夫した戦いをしてきた松井が
その戦いの中で積み上げていったもの。
しかし、的確に捉える畑中が、やはりここも上回り始め…。
そんな折、突如レフリーが試合をストップ。
松井の手が出なくなったような状況ではなかったが…
積み重なったダメージか、カットの悪化か…。
いずれにしても、どこかで止めるのは正解だったとは思うが…。
唐突な試合の幕切れに呆然とする。
TKOタイムは5R 2分15秒
トータルして見れば、畑中が松井を圧倒した形。
実力の証明としては充分だっただろう。
スーパーホープが、積み上げた選手の立場を奪うように勝ち上がる。
よくある光景だが…簡単にはいかないだろう松井を選んだことに畑中陣営の自信を感じ、
そしてそれを成し遂げた畑中に対して、強い期待感を感じた。
今日の松井はこれまでより強かった。
勝ったり負けたりしながら…それを血肉にして上位ランカーにまでなった松井。
アップセットを起こした時期より、その実力はさらに伸びていると感じる。
この男が、中日本にベルトを持ち帰る…そんなドラマにも期待してみたいと思う。
そしてファイナル…の前に我らが日本王者だった林 翔太(畑中)の引退式が行われる。
2007年度中日本フェザー級新人王。
そこから全日本新人王決定戦まで勝ち上がるもそこで敗退。
ここで所属していた天熊丸木ジムが消滅(現在は復活)。
自身は運良く畑中ジムに移籍できたが、移籍先の決まらぬ仲間たちを思う心労から調子を落とし、
初の8回戦となった移籍初戦でまさかの敗北を喫する。
この大きなトラブルから再スタートを切り、勝ち負けを重ねる時期を作りながらも…
2011年の終盤から引分を挟んでの12連勝を積み重ねて日本王座に挑戦。
このチャンスをものにして、第60代日本フェザー級王者に。
さらに元世界王者の下田 昭文(帝拳)を破っての初防衛。
全国的に林の名前を知らしめることとなった。
しかし、刈谷で行われた2度目の防衛戦では、坂 晃典(仲里)の強打の前に敗北し、王座を陥落。
父親との約束…あと一度負けたら引退。
本当はここで終わるはずだった…、しかし「もう一度負けるまで」の約束でリングに帰ってきた林。
世界2位と戦うビッグチャンスをつかみ、敵地フィリピンに渡った林は、
世界が注目するホープのマーク・マグサヨ(比)と対戦。
内容は林が勝っていたという人もいる大激戦…しかし、結果は判定で敗北。
世界のトップランカーに通用する実力を示しながら、父親との約束通りグローブを壁に吊るした。
林 翔太 -引退式 挨拶-
「畑中ジムの林翔太です。まずは建人、おめでとうございます。
去年の11月25日にフィリピンのボホール島と言う所で世界ランク2位の選手と…
マーク・マグサヨ選手との試合を最後に引退することに決めました。
今まで長い間応援していただいて本当にありがとうございました。
14年間のボクシング生活、38戦…そのすべてが自分の財産になりました。
もちろん苦しいことも沢山あったんですが、それ以上に嬉しいことや楽しいことも沢山あって…
とにかく幸せな選手生活でした。
もの凄く沢山の応援してくれるかたができて、自分が勝った時も負けた時も応援していただいて
僕の試合見て明日から頑張れるとか、ありがとうとか言ってもらえたり…
負けた時も、自分以上に悔しがってもらったり…」
ここからも挨拶は続いたが…
スマホで録音していた音声に雑音が入ってしまって文字に起こせない。
涙腺が崩壊してしまい…スマホを持ったまま目をぬぐっていたら…
「ゴソゴソゴソ…、ゴソゴソゴソ…、ズビッ!(鼻水すする音)」みたいな感じになってしまい…。
下田に勝てるなんて思ってなかったよ…林ならって思ってはいたけど、まさかほんとに勝っちゃうなんて。
それに、刈谷で日本タイトルマッチを見れる日が来るなんて…。
血まみれになって敗れた試合…帰り道泣いたなぁ…。
林の何が強いかって、僕は説明できなかった。
ニワカだから技術的なことさっぱりわかんないし、なんだかわかんないけど強い相手にバンバン勝って…。
林がいかに凄い奴か…って説明したいんだけど説明できなくて、ちょっと悩んだっけ…。
ベルトを持って帰って来た林は、間違いなく中日本のヒーローだった。
テンカウントゴングの前に須藤アナがコールする。
「第60代日本フェザー級チャンピオン!林ぃぃぃ翔ぉぉぉ太ぁぁぁぁぁ!!!!」
これで最後…二度と聞けないと思ったら…
また涙腺崩壊…。
お疲れ様、俺たちのチャンピオン、林翔太。
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