2017/4/30 じゅうろくプラザ-ファイナル(中日本ボクシング観戦記) ボクシング選手名鑑ピックアップ!
…というわけで、引っ張りまくりましたが、この日のファイナルへ。
【50.5Kg契約 8回戦】
華井 玄樹(岐阜ヨコゼキ) vs 松井 謙太(三河)
・華井 玄樹 8戦7勝(5KO)1敗 日本ミニマム級2位
・松井 謙太(三河) 13戦7勝(1KO)6敗
スーパーアマエリートと言っていい華井。
岐阜からデビューを飾り、対戦相手に苦慮しながらも日本ランキングを上昇。
現WBO世界ミニマム級王者である福原 辰弥(本田フィットネス)が当時保持していた日本ミニマム級王座に挑戦。
ダウンの応酬の末に敗北するも…ボタンひとつ賭け違えれば…
地方ボクシングの主役に躍り出たのは福原ではなかったかもしれないと感じる。
そんな華井が、ミニマムのウェートから、約3Kg重い契約ウェートで戦う試合。
相手は…2014年の中日本新人王。
国内トップ選手との対戦も重ねている松井 謙太。
並んだ二人の身長差は5cm以上に見える。
普段は1階級上で戦う松井の、大きなフレームにどう挑んでいくのか…
試合のゴングが鳴り響く…
いきなり大きなフックを振るって出る松井。
ロングフックは多少ラフで力強い。
しかし、華井は冷静に対処。
距離を詰めてのワンツーで攻める。
2R、左手をだらりと下げて、フリッカー気味に撃ち込む松井。
続けて華井のガードを割ってストレートをねじ込む。
さらに長いリーチで華井のガードを回り込むようなロングフックをヒット。
華井は距離が詰まるとすかさず強烈なボディで対抗。
3R、驚きの瞬間が訪れる。
リーチで劣る華井は、多少強引に攻め始める。
相撃ちも辞さず飛び込む華井…そんなシーンがいくつか続いた後…
思い切って攻めたリスクが華井を襲う。
華井が踏み込んで距離を詰めたところを、
サイドに回った松井が左フック。
アゴを貫かれ、リングに崩れる華井…静まり返る会場。
立ちあがった華井にレフリーは続行。
チャンスに一気に攻めて出る松井だが、
残り時間はわずか…ここは華井がゴングにすくわれる。
4R、ダウンを奪ったことで余裕も出てきた松井。
華井のパンチがはっきり見えているようで…
逆転を狙って出る華井の力のこもったワンツーフックを
ウィービングで綺麗に交わしてみせる。
5R、どうしても内側に入って有効なパンチが撃てない華井。
ロープに追い込んでも、長いパンチで押し返されてしまう。
距離が詰まったタイミングで、ボディを重ね、逆転のチャンスを探る。
6R、ジャブを突いてリング内を舞う松井。
松井の独壇場にも思える展開。
ロングレンジで勝負する松井を、どうしても捕まえきれない華井。
7R、華井は八方塞がりに陥って行く…
倒すしかない…しかしフレーム差は耐久力にも現れる。
逆転狙いの詰めてのワンツーフックは見切られ、ウィービングで交わされる。
それでも、華井は打開しようとボディへパンチを集める。
プロでの経験が短いとは言え、アマで積み上げた経験はとてつもない華井。
積み重ねてきたボディがここで生きる…このラウンド終盤、一気に松井は消耗。
8R、最終ラウンド…獰猛に襲いかかる華井。
強引に、ラフに…アマエリートが叩き上げのようにがむしゃらに…
頭が衝突し、カットを負ってドクターチェックが入るが、華井の勢いは止まらない。
続行が許されると、ゴリゴリ攻め立て、ボディをしこたま効かせる。
残り10秒の木拍子が鳴っても諦めず…最後まであらがうが、無情のゴング。
マイジャッジは…78-73で松井。
公式採点:77-74、75-77、77-74
勝者:松井
勝利者インタビューでは松井の甲高い声が響く。
「自分は、アマチュアとかやってないんで、そんな巧いボクシングはできないんですけど
これから一歩ずつ上に登って行こうと思うんで、応援お願いします」
誰もが華井の勝利を予想しただろう試合。
松井を咬ませとさえ見たファンもいただろう。
僕自身も、華井の実績と松井の戦績から…
よく考えもせずに華井を主役と考えていた…。
まさに浅はかなファンの予想が、ボクサーの拳で切り裂いかれた瞬間。
無名ボクサーの織りなした壮大なストーリー…これがボクシング。
僕が人生で初めて目撃したアップセット…
中村 つよし(スペースK) vs 下田 嘉彦(駿河)
中村の日本王座前哨戦として組まれた試合で、下田が大アップセットをもぎ取った試合。
下田も…変則的なフリッカーの使い手だった。
あの日の衝撃がよみがえる。
松井…この動きを失わずに47.6kgにやってくれば…フレーム的にもかなりの脅威。
元々はミニマムで、そこから上げた選手なだけに難しいかもしれないが…
国内のトップ戦線をかき回す存在になるかもしれない。
有利なフレームを手に入れる為には、他者以上に減量に苦しまなければならない。
そのうえで、自分の特徴を最大限に武器として使うそのスタイル…
負け越し戦績寸前だった男が…2010年代国内軽量級を面白くする可能性を孕んだ。
しかし…ランカーとして戦い始めるとすれば…
それを守り続ける難しさと直面するはず。
できることなら…ノーランカーながら僕が”強豪”と疑わないチェ・イル(尼崎)との対戦を見てみたい。
松井と同じく、アップセットの魅力を孕んだノーランカーである。
そして、ちょうど1年前、華井を相手に大善戦を演じた男でもある。
華井と言うその名の通り華やかな男を中心に組み上がるストーリーの中で…
松井vsチェ・イルという試合が組まれれば、僕は一生この三人の絡み合ったボクサーズロードを語るハズ。
そして…三人がリングを去るとき、誰が主役になっているのかは…その時を迎えるまで解らない。
試合後、そんな自分勝手な思いが頭をよぎった。
とにもかくにも、松井選手…おめでとう。
これで松井選手も…よりシビアな淘汰の世界へ…。
強豪渦めく国内軽量級。
果たして、この男はどこまで行けるだろうか…。
観客が続々と帰り、空いた椅子にへたり込むように座り込む。
信じられない光景を見た余韻で、立ち上がる気になれない。
リングサイドに緑ジムのマッチョトレーナーを発見。
彼のブログ…好きなんだよなぁ…荒川…残念だったなぁ。
…とか。
JJファイトのレフリー…元OPBF王者の大橋 弘政(HEIWA)がやってたなぁ。
刈谷あいおいホールの興行で飲食を販売している表情とは全く違う…
真剣そのもの…行きすぎて殺気さえ感じそうなド迫力にちょっとビビってしまうほど。
わずか数時間前の光景が、何日も前に見た光景に思えてしまう。
…とか。
そんなことを考えながら、気がついたら帰りの電車。
あれ?どうやって乗ったっけ…。
ぼうっとしたまま、帰路の中。
最終ラウンド、アマエリートの華井が獰猛に松井に襲いかかった姿が頭の中で何度もリピート。
”強くて当たり前”
そんなエリートが見せた抵抗は、彼の魅力を倍増させたようにも思える。
再起戦での敗北…この日の負けは…華井が進化する為の試練。
あの最終ラウンドの姿があってこそ、そんなふうに信じていられたりする。
この日の試合を見て痛烈に感じたこと。
「見逃しちゃいけない」
このアップセットが勝者と敗者にどのような影響をもたらすのか…
それは先々までボクシングを見続けなければ解らない。
この日はまだ、序章を目撃しただけである。
ドラマには序章から最終章まである。
その全てをできる限り見ていたい。
そして、その序章はいつ始まるかわからない。
頻繁に通い詰めたファンだけが知れるドラマ。
電話で次に見に行く興行のチケットを押さえてもらうように依頼する。
さらに仕事先へ電話し、強引に仕事を調整…。
5/20…プエルトリコから超強豪が名古屋にやって来る。
前座のリングで注目は…近藤 裕真(畑中)。
こちらもまた…ピックアップで掲載予定。
また、ボクシングにハマる理由を見つけてしまった。
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各選手の戦績はこちら。
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