2016/12/04 刈谷あいおいホール-ファイナル-(中日本ボクシング観戦記) ボクシング選手名鑑ピックアップ!
中日本ボクシング観戦記。
本日は12/4に開催された薬師寺ジム主催興行。
もう半月以上も前の試合になってしまいましたが…
ようやくファイナルの試合レポ。
元世界ランカーであり、現日本バンタム級6位の菊地に対し、
負け越し戦績の深蔵がA級挑戦。
どれだけ負けが混もうが、ランカーを倒せばランク入り。
日本ランカーの小澤 サトシ(真正)への連敗後、3度目の正直。
小澤の同門、菊地との試合。
かつて菊地はOPBF東洋太平洋王者だった和氣 慎吾(古口)への挑戦に失敗。
その後に再起に失敗するも、再々起を飾ってそこから5連勝。
念願のタイトルへ負けられない試合。
【54.5kg契約8回戦】
菊地 永太(真正) vs 深蔵 和希(HEIWA)
・菊地 永太(真正) 27戦19勝(8KO)4敗4分
・深蔵 和希(HEIWA) 22戦9勝(3KO)11敗2分
リーチ差で劣る深蔵。
距離を詰めて巻き込んでいきたいところ。
菊地は1Rからいきなりの右を多用。
これが頻繁に深蔵を捉える。
サークリングしながら菊地をロングのコンビネーションでコントロール。
距離が詰まれば、深蔵が菊地のボディをえぐる。
これはかなり有効に思える。
2R、フックを引っ掛けて回る菊地。
突進する深蔵のサイドに回り込みながら、常に優位なポジションをキープ。
深蔵はしつこくしつこくボディを叩く。
3R、丁寧にさばく菊地。
スピードもパンチも並みに思えるボクシング。
しかし、一つ一つの動きがとにかく丁寧。
動きの確認作業を重ね続け、体に染みこませてきたようにも思える。
深蔵の必至のアタックをするりとかわし、立ち位置が入れ替わると安全圏から襲撃。
ボクシングの差を見せられながら、愚直に距離を詰めてボディを繰り返す深蔵。
序盤の3R、ポイントは明らかに菊地に流れたようにも見える。
しかし、ここまで深蔵が叩いて来たボディが中盤、後半にどれ程影響するか…。
深蔵のランク獲りが全く期待できない展開でもない。
4R、変則的に右から入る菊地に、撃たれても撃たれても前に出る。
すると徐々に菊地が深蔵に付き合い始める。
撃ち合いの頻度が徐々に増えて行く。
それでも細かく位置を変えながら戦う菊地が優勢か…。
撃ち合いの頻度が増えたことで、深蔵はボディ攻撃の数を減らす。
撃たれても撃たれても前進する深蔵。
そんな展開が中盤から後半まで続いていく。
最終8R。
序盤から全くペースの変わらない菊地と深蔵。
負け越しながら地方でメインを張る男と、地方から世界ランクまで手に入れた男。
二人の積み重ねた日々がリング上に映し出される。
菊地が上回っている状況は変わらないものの、
深蔵のパンチはこれまで以上に当たる。
このまま試合が終わるか…試合は残り1分を切る。
ポイント的には明らかにリードしている菊地だが、守りには入らず。
これまで通り攻撃的な距離でステップを踏む。
そんな状況で、奇跡を思わせる瞬間。
ついに深蔵の一撃が菊地を捉える。
当てたパンチでは圧倒的に菊地が上回っているものの、
少なからず被弾を重ねていた菊地。
ダメージが噴出したか、たった一撃が菊地をそうさせたか…。
効かされて膝を揺らす菊地。
立っていれば勝ち…そんな状況でのダメージブロー。
しかし菊地はリングを逃げ回ることはせず。
勇敢に深蔵に立ちはだかる。
残り10秒の木拍子が鳴らされる。
もう少し…あと少しでランカーが倒れるかもしれない。
そんな思いの中で見る二人の攻防。
あと一発…もう一発…あとほんの少し…
すり減る時間の中の攻防は、無情にも試合終了のゴングで止められる。
79-73、79-74、78-74
8回戦としては大差と言っていい判定。
日本ランカーが妥当にノーランカーを破った試合。
しかし、その中身は、拳を強く握り締めて見てしまう熱戦。
日本ランカーがその実力を誇示するように立ちはだかり、
ノーランカーがわずかなチャンスにすがって立ち向かった。
そしてその拳は、大きく開いた点差とは裏腹に、近い距離まで迫った。
僕の目には、そんなふうに見えた。
胸の詰まる一日…メインイベントに相応しいこの試合が、
僕にそんな印象を持たせたのかもしれない。
勝利者インタビューで、チャンピオンになると宣言する菊地。
本当に、なるかもしれない。
分かりやすい武器を持っていたり、身体能力が優れている選手ではない。
相手の踏み込みに合わせて、体を入れ替え、変則的に右からの攻撃で相手を捉える。
丁寧に丁寧に積み重ねられた動きは、こちらの胸の透くような心地よさがある。
愚直に戦った深蔵…。
詰めて行くのは苦しい戦法だったりする。
向かってくる相手を捌くのは楽だ。
相手から手の届く距離に来てくれる訳である。
自分から手の届く距離に向かっていくのは体力を消費する。
しかしこの選手は、その苦しい戦いを土俵とする。
死なない足は、これまでの走った距離を証明する。
もう20戦以上も戦っているA級ボクサーには失礼なもの言いになるかもしれないが…
「この選手はきっともっと強くなる」
期待と贔屓目が含まれていることは否定できないけども、ニワカな僕はそんなふうに言いきってしまう。
試合後、いつも通りリングの解体を眺めつつ、一日の戦いを思い返す。
セミファイナルの注目度が高かっただけに、観衆の数もメインとしては少しさみしい形になった。
いつも以上に簡単に車を駐車場から出し、帰路に就く。
今年の中日本、注目の逸材は複数見つけた。
スーパーホープのデビュー戦も見れた。
ランカーに立ち向かう地元のA級ボクサーの意地も見た。
近いうちにタイトルに挑むかもしれないランカーも見た。
盛りだくさんの一日の中…ふっと胸を刺すような思いがよぎる。
深蔵…勝って欲しかったな。
でもきっと…見続けていれば、彼がランクを獲る姿は見れるはず。
先月、応援していた荒川 高志(緑)が2勝目を飾った。
その日、仕事の都合で観戦できなかった自分…相当悔しい思いをした。
深蔵がランクを獲る瞬間は見れるだろうか…
望んだ瞬間を見逃さないよう…神と上司に祈る。
「お願い…ボクシングが名古屋である日は…仕事休ませて…。」
帰り道の途中、立ち寄ったコンビニのトイレの中で
携帯に溜まったメールをチェックする。
「大晦日、お願いね。」の文字。
一年を通じて最もボクシングが熱い日…
…仕事確定。
ボクシングも、人生も…無情だったりする。
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