市野の系譜、ファンキータクマ! ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2018/09/07
軽い階級から2018年度の中日本新人王を紹介して行く予定となっており、
順番通りなら本日はライトフライ級ですが、
同階級では西部日本新人王がエントリーなしとなっており、
中日本フライ級新人王の太田 アレックス(西遠)は、一足先に西軍代表決定戦へ。
中日本・西部日本新人王対抗戦が今月末に迫っていることもあり、アレックスに関しては後日紹介予定。
今回は中日本フライ級新人王の服部 琢磨(市野)を。
毎度毎度、中日本のリングを真っ向勝負で沸かせてきた市野ジムの戦士たち。
攻撃力特化型の選手たちが育ち、彼らが魅せる戦いぶりに
客席が大きく盛り上がったことは1度や2度じゃない。
そんな血が滾るような数々のファイトを演出してきた市野ジムの面々に、
昨年末、新たなボクサーが加わった。
服部 琢磨…市野ジムでタクマと言えば、松下 拓磨(市野)だったが…。
市野会長は自身のブログの中で、松下を「普通のタクマ」、
服部を「ファンキータクマ」と異名を付けてすみ分けている。
服部のデビュー戦のリング。
相手もこの日デビューの安西 蓮(岡崎)。
好戦的にコーナーを飛び出した二人はリング中央でぶつかり合い、苛烈な撃ち合いを敢行。
安西に押されながら、松下はたった1発の右フックで形成を逆転。
そのままロープに追い詰めて、トドメの右フックで仕留め切った。
立ち上がったもののふらつく安西にレフリーは試合をストップ。
服部のデビューは華々しい1RTKO勝利。
この日、同じリングに立ったもう一人のタクマ。
前戦1RTKO負けからの復活を期す松下は、
鹿児島からやって来た中野 ウルフ(橋口)に強烈な1RTKO負け。
2015年の中日本新人王を獲得し、ジムを支える一人だったタクマと、新たに現れたタクマ。
二人の明暗は、この日、くっきりと別れた。
その翌月、発表された中日本新人王戦のトーナメント表には、服部の名前があった。
僕が優勝予想に挙げたのは、対抗ブロックの中山 慶伍(駿河)。
戦績はイーブンだが、しっかりとボディを叩ける選手。
4回戦のうちからボディを効かせられる選手は伸びていく選手が多いと感じている。
松下の初戦はデビュー戦の選手、同じ三重県の小坂 大地(ARITOMI)が相手となる。
エントリーは4人の為、初戦が準決勝。
両者の地元、三重の興行で試合が組まれていた。
試合は、服部が1Rから2度のダウンを奪う好スタート。
やはり攻撃力は凄まじい…。
しかし、2Rに小坂の強烈な右ストレートを浴び、試合展開に暗雲が立ち込める。
3Rに入ると、服部は強烈なアッパーでこの日3度目のダウンを奪う。
この時点で判定なら勝ちの試合になる。
4Rも小坂を棒立ちにさせるなど、KO寸前に追い込んだ服部だったが…
試合を通じて撃ち合い、被弾も多かった服部は試合終了直前、小坂の左フックを浴び
ダメージが噴出したかのように後退…あわやの状態で試合終了のゴングを聞いた。
3度のダウンを奪われながら、最後まで撃ち合った小坂の頑張りはエグいと感じるほど。
ダウンを奪われたラウンド以外のポイントは全ジャッジが小坂につけている。
ポイント的にはダウンの分、圧勝だったが、中身は大苦戦の試合。
しかしこの苦戦には、服部の今後の強さを増幅させる予感が漂う。
中日本新人王決勝進出を決めるとともに、今後への期待を一層、強くさせた試合。
この日もまた、もう一人のタクマ、松下 拓磨がリングに登場。
前戦の強烈なKO負けから悲観的な声も聞こえた松下。
僕自身も、松下に対してそんな思いを抱いていた中…
2017年度の中日本新人王トーナメントを、一撃の左で勝ち上がった高井 一憲(中日)と対戦。
見事に勝利を収めて復活を遂げた。
それから約2週間後、名古屋国際会議場で行われた対抗ブロックの準決勝。
中山 慶伍が今村 太秋(緑)をボディ一撃で沈めた試合を、客席から見つめる服部の姿があった。
中山もまた…その実力を伸ばして決勝の舞台に現れる。
引き締まった表情で中山を見つめる服部。
客席とリング上、対戦の決まった二人を直線で結ぶ服部の視線に鳥肌がたつ思いがした。
しかし…ここからしばらく後、中山が怪我による棄権との知らせが入る。
期待値の高かった決勝戦が消えてしまうことへの喪失感もあったが、素直に服部への祝福の思いが湧く。
トーナメントは運も実力のうち。
短期間に連戦を強いられる新人王戦。
抱えるダメージは少しでも少ない方がいい。
まして、これからは各地域を勝ち上がった新人王たちとの戦い。
服部にとっては幸運も味方につけての、中日本新人王奪取となった。
それからしばらく経ち、中日本新人王決勝戦が行われる1週間前…
松下が後楽園ホールで名の通ったアマエリートと対峙した。
インターハイ3位の実績を持ち、将来を期待されてB級デビューを飾った大湾 硫斗(白井・具志堅S)。
日本バンタム級ユース王座決定トーナメント準決勝として行われた試合。
勝った方が、日本バンタム級ユース王座に挑戦できる…松下にとっては大きなチャンスだった。
しかし、既に全国で注目を集めている大湾が相手。
周りのファンの間では悲観的な予想が目立った。
「いい時のタクマだったらいいけど…」
みんな忘れていない…いい時のタクマ。
デビューから連勝で中日本新人王を獲得。
さらに翌年の中日本新人王にもエントリーし、決勝に勝ち上がった松下。
「市野」と聞くと松下の顔が浮かぶ…と言うファンもいるほど。
しかし、大湾との試合は…松下にとってボクサー人生3度目の1RTKO負け。
「松下vs大湾」は中日本新人王が出揃ってしばらく後の酒の席で話題に上がった。
東京に勝負をしに行った松下…選ばれし選手に歯が立たなかった松下。
松下が敗れた悔しさとともに「いいときのタクマだったら…」の言葉が耳に残ってリフレインする。
寂しい思いとともに、「あぁ…、市野にはもう一人タクマがいる。」と感じる。
本人がこれをどう思うかは解らない。
二人は全く別の人間であり、別のボクサー。
しかし、見ている側は勝手に色々なものを、ボクサーにこじつけてしまうものだと思う。
「タクマ」の名前の響きに、松下が積み上げてきたドラマの続きを見るような気分にさせられる。
ファンキータクマ…中日本新人王としての期待以外にも、
その肩には、ファンの勝手な思いが載せられている。
選手は、強くなれば強くなるほど、勝手に色々なものを背負わされるものだと思う。
たった2戦の4回戦ボクサーが、複数のファンの大きな期待を背負って、九州に殴り合いに向かう。
ファンキータクマ。
全てを背負って、全てをなぎ倒せ。
市野の系譜…彼もまた、三重と言う地方のジムに刻まれる、一つの歴史となる。
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