王座統一戦 ドワイト・ムハマド・カウイ(米)⑧ ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2016/07/31
ドワイト・ムハマド・カウイ(米)、8日目。
前回はUSBA全米ライトヘビー級王者、エディ・デイビス(米)との超大激戦を制し、
WBC世界ライトヘビー級王座の3度目の防衛を飾ったところ。
大激戦を終え、3連続KO防衛で名を上げていくカウイ、そしてデイビスとの激戦効果もあり…。
人気選手へと成りあがったカウイは…ついに超ビッグマッチへ辿り着きます。
4度目の防衛戦は…世界王座統一戦…。
WBA世界ライトヘビー級王者のマイケル・スピンクス(米)
モントリオール五輪金メダリストのビッグスター。
ライトヘビー級の頂上決戦です。
スピンクスは前戦のデイビスとは対照的に、距離を取って戦うアウトボクサーの頂点のような男。
かたやカウイは小さな体で大きな男をなぎ倒しまくった…そのイメージは試合を見ていないと
ブルファイターに思えそうですが、実はスピーディーなジャブを操るテクニシャン。
つまり…この試合はライトヘビー級での技巧派頂上決戦。
ボルトで固定したように距離を固めるスピンクス。
簡単には接近を許さず、カウイのプレッシャーに下がらされることもない。
カウイは下がりすぎず前に出すぎず…それでも鋭い踏み込みから浅いながらも、オーバーハンドをヒットさせる。
1Rの攻防からどちらも譲らず…中盤、躓いてバランスを崩したカウイ。
好機に攻め入るスピンクス、コーナーでラッシュを仕掛けるも、バランスを立て直すとほとんど被弾しないカウイ。
ディフェンス技術を見せつけます。
2R、ロングレンジを維持しながら、軽いジャブを重ねていくスピンクス。
カウイのジャブはわずかに届かない距離…抜群の空間支配能力。
それでもカウイは一瞬でも距離が詰まれば強烈なフックをヒットさせる。
一瞬の隙をも見逃さない…抜群の嗅覚。
どちらにポイントを振るか…真っ二つに割れそうなラウンド。
3R前半、カウイが丁寧にスピンクスのジャブをブロックし始めると
お互いのジャブさえ当たらない静かな展開に。
テクニシャン同士の戦い、静かな中に次の動作を読み合い、フェイントをかけ合う攻防が見えます。
そんな展開がやっと動いたのはラウンド後半に入ろうかというところ。
カウイが飛び込んで撃とうとしたアッパーにスピンクスが強烈なワンツーを合わせる。
しかしカウイも簡単にはラウンドを渡さない。
カウイは乱戦に持ち込み強引なコンビネーションをねじ込む。
その後も強引に攻めようとするカウイ…からだをよじってスレスレでかわしていくスピンクス。
4Rに入るとスピンクスが一気にペースを掌握。
軽いジャブが一方的にヒットしていく。
まるでカウイの顔面をなでるように…しかし強引に攻め込もうとすると力を込めて撃ってくる。
これまでカウイ相手にフレーム差を生かそうとし、崩されてきた…そんな選手たちがやりたかったことを
まさに体現してしまっているスピンクスのボクシング。
飛び込まれても臆せず撃ち合う…ハイスピードのコンビネーションはカウイを上回る。
しかし、無理せず自分が撃ち終わったらすぐにクリンチ…。
「ムハマド・カウイの攻略法」
…そんなHOW TO本が出せてしまいそうなこのラウンド。
これまでボディへ強烈な左を撃ち込んで打開する場面も多かったカウイ。
スピンクスは体をくの字に折って、このボディジャブさえ回避してしまう。
しかし5R後半、カウイはスピンクスのリズムをつかんだか…
スピンクスを下がらせながら、強烈なフックを幾度もヒット。
カウイが反撃ののろしを上げます…。
6R、カウイが勢いを取り戻しそうな流れを察知したか…
スピンクスはジャブに力を込め始めます。
これまでとは質の違うジャブを撃ち込むスピンクス。
強弱をつけてスキルフルな攻撃…そのまま勢いに乗ってコンビネーション…
しかしこのコンビネーションをウィービングでことごとく外したカウイ。
離れ際で一撃ぶち込んで仕切り直す芸当を見せつける。
「上手いのはお前だけじゃないぜ」
褐色の肌から白いマウスピースがのぞくいつもの薄笑い。
カウイ…反撃開始。
飛び込んでのフックから、後続打を撃ち込んで離れる。
抜群の出入りを繰り返すカウイ。
一気にカウイペース…と思いきや…。
その入り際に強烈なワンツーをヒットさせはじめたスピンクス。
簡単にペースを渡すことはありません。
そのまま攻め込むスピンクス…しかしまたもカウイの超絶ウィービング。
強烈なお返しを叩き込まれ、カウイは目の前から去っていく。
7R、スピンクスはジャブの弾幕で、また距離の支配を徹底する。
ひたすらにジャブを突きまくり、そこにいきなり混ぜた右ボディフック。
効いたカウイにそのまま押し込んでコンビネーションを叩き込み…
しかしカウイが反撃に転じようとすると、またも離れてひたすらジャブを撃ち込む。
攻めあぐねたカウイはこのラウンド、出したパンチは10発にも満たず…。
8R、プレッシャーを強めスピンクスを下がらせるカウイ。
試合は突然動く…カウイのボディストレートでバランスを崩したスピンクスは尻もちをつく。
滑ったのか、当たったのか…レフリーはスリップの判定。
このシーン…カウイは思い切り足を踏んでいます。
再開後…右ストレートをボディに叩き込むと、またもやスピンクスは尻もち。
ここはダウンを宣告するレフリー。
このシーン、足元は隠れているものの、あまりに不自然な倒れ方。
ここも足を踏んでいる可能性が高い…カウイ…なりふり構いません。
相当頭に来たか、スピンクスはカウイと撃ち合う…
抜群のハンドスピードで撃ち勝ち、カウイをコーナーに詰めると、またも不自然なスリップ。
映像から足元は見切れているものの、ここもカウイが足をひっかけたよう。
怒りのスピンクス、再開後コーナーに詰められると、カウイにエルボーを突き上げて応戦。
試合を支配していたスピンクスが感情で乱れ始める…
不用意な接近にカウイの強打が突き刺さっていきます。
9R、速射砲のジャブで立て直すスピンクス。
積み重ねるヒット数は圧倒的…カウイが無理に攻めようとするとコンビネーションを叩く。
しかしカウイも一瞬の隙をついて強烈なコンビネーションをヒットさせる。
カウイに湧きたつ会場にスピンクスは力のこもった強烈な左フックで逆に会場を沸かせてみせる。
10R、攻勢を強めたスピンクス。
撃ち合いでも勝てると踏んだか、ジャブの数を減らし、カウイを誘い込む。
しかしそうは簡単にいかず…攻め立ててもカウイのウィービングに空転気味。
11R、このラウンドもロングレンジから力のこもったワンツーをつきたてるスピンクス。
一気にスピンクス優勢が際立ってくる…そんな中で、カウイがカウンターで叩きこんだ左右のフック。
強烈なダメージを食らったスピンクスは警戒心を高め、その後は終始距離を取って安全運転。
12R、常に安全圏に身を置くスピンクス…大量のジャブを送り込み、接近を許さない。
この試合何度も繰り返されてきた光景…そして一瞬の隙をついて攻め込むカウイ。
単発で終わることなく強烈なコンビネーションを叩き込む。
これもこれまでずっと見てきた光景…しかし少し違うのは、
この試合で初めて効いた素振りを見せたスピンクス。
カウイは一気に攻め立てるもゴング。
続きは次のラウンドに持ち越しとなります。
13R、カウイはプレッシャーを強め、スピンクスは下がりながらの戦い。
このラウンドはこれまで、カウイが数々の距離を取ろうとするボクサーを沈めてきた展開に似た形。
スピンクスはジャブが減り、ずるずる下がる中で、カウイの強打をいくつかヒット。
下がりながらの応戦で強打をヒットさせても単発。
14R、開始とともにコンビネーションで3連打を浴びせるスピンクス。
このラウンドもしっかりポイントを抑えに来ます。
しかし長丁場で誰しもがスタミナを奪われる後半、猛烈だった手数を減らしたスピンクスに対し…
まったく消耗の影を見せないカウイ。
強烈なフックで襲いかかり、スピンクスを中央からロープまで後ずさりさせる場面も。
その後も凄まじい圧力で詰めてくるカウイに、スピンクスが肱を浴びせて逃れる。
8Rでやられたお返しとばかりに足を踏み返すなど、スピンクスもなりふり構わない戦い。
ここまでアグレッシブでは終始カウイがリードしていたものの、
ヒット数では明らかに大きく開きが出てしまった形。
ポイントではスピンクス、しかし勢いではカウイ…そんな最終15R。
とにかく距離を取るスピンクス…追いかけまわすカウイ。
スピンクスのロングレンジのパンチを浴びることなく、華麗に交わす…。
しかし出すパンチは届かない…フレームの大きさ、カウイの致命的な部分。
そこを突こうとする相手をこれまでなぎ倒し、築いたカウイの地位。
しかし、歴史に残るアウトボクシングのスペシャリスト、スピンクスは捉えきれず。
お互いに足を踏み、肱を繰り出し、この試合の勝利にしがみついた。
最終のゴングが鳴り、両手を突き上げるスピンクス。
…この試合を判定で落とし、カウイは王座を陥落します。
実はこの試合の直前…スピンクスを悲劇が襲っていました。
彼の妻と娘が事故死。
人生の最もタフな局面で、これまでで最もタフな試合を乗り切ったスピンクス。
スピンクスはこの後、圧倒的な強さでライトヘビー級10度防衛を達成、3団体のベルトを揃え、
ヘビー級20度防衛のラリー・ホームズ(米)から、そのベルトを奪い去り…。
ヒストリーメイカー(歴史を作るもの)とまで呼ばれます。
【カテゴリ別】
2016年選手紹介一覧に戻る
【日付別】
【記事一覧】2016年7月に戻る
各選手の戦績はこちら。
ボクシング選手名鑑
コメント