こぼれ落ちる… ロジャー・メイウェザー(米)㉘ ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2016/11/07

こぼれ落ちる… ロジャー・メイウェザー(米)㉘ ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2016/11/07
 
 
 

ロジャー・メイウェザー(米)のピックアップの29日目。
 
 
 

前回は世界戦線から脱落しかけながら、
現役のUSBA全米ライト級王者 カール・グリフィス(米)に勝利したロジャー。
なんとか世界戦線に踏みとどまったところまで。
 
 

 

次では、USBA全米スーパーライト級王座決定戦に出場。
これまで2度の世界挑戦ではじき返され、再浮上を狙うダリル・タイソン(米)。
生き残りマッチとなったこの試合…
 

ロジャーと比較すると体躯の小さなタイソンはクロスアームに構えてジャブを伸ばしていく。
ケン・ノートン(米)をモデルにしたようなそのスタイルには、テクニシャンの匂いを漂わせる。
柔らかさではノートンに劣るものの、スピード豊かでジャブにもパワーがある。
きっちりディフェンスから入っていき、伸びるジャブをヒットさせていく。

同じくクロスアームに構えるロジャー、体躯で有利な分、ジャブの刺しあいでは先手を取っていく。
左で顔面を叩くロジャーと、ボディを叩くタイソン。
ひたすらジャブを刺しあった1Rはロジャーが優位か、このラウンド唯一の右のヒットもロジャーのワンツー。
幸先のいいスタートを切ります。
 

2R、ジャブの刺しあいから始まったこのラウンド、タイソンが踏み込んでの攻撃を見せる。
絡みつくように密着し、ホールディングを駆使しながら、開いた腕でロジャーのボディを叩く。
多少ラフな戦法ながら、ロジャーは長い腕が邪魔になり、うまくパンチを繰り出せない。

レフリーが引きはがすと、タイソンはすぐに踏み込んで密着を試みる…。
入り際に強烈なアッパーで応戦するものの、タイソンは怯むことなく突っ込み、
押し合いの中で、ボディを叩き、ロジャーの体力を奪っていく。
 

3R、クリンチワークの上手いはずのロジャー…タイソンの小さな体躯を生かした密着戦に、
思うように戦わせてもらえない…腕を振りほどく前に強引にパンチを撃ち込まれ…。
しかしそこは超ベテランの域に達しているロジャー、圧力の弱まった瞬間を逃さず、
腕で相手を突き放すと、鋭利なブローを浴びせる。
しかし、効いた素振りも見せずにまた密着するタイソン…。
 

4R、インターバル中にレフリーが両者に注意を与えたことが効いたか…
このラウンドはこれまでのような絡みあいがなくなる。
相手の腕を抑える為に使用していた自身の腕を、両者ともに相手を殴ることに使い始める。
強烈なアッパーの応酬…頭を着けた密着戦で鋭利なダメージングブローがお互いを捉え合う。
ドロドロだった試合が、一転して好試合の様相を呈していく。
 

5R、またクリンチが頻発し始める…。試合を通して密着してボディを叩いてきたタイソン。
ロジャーはボディを嫌がり始め、相手をしきりに突き放そうとする。
距離が空けば、撃ち合いで有利になるのはロジャー。
ラウンド後半、距離が空いての撃ち合いが発生すると、お互いに強いパンチを交換しながらも
ロジャーが一歩上を行く…タイソンの入り際に強烈なスマッシュを浴びせ、
ロングレンジでワンツーを撃ち込む。
 

6R、疲れを見せ、手数が減り始めたタイソン。
圧力が弱まると、ロジャーはミドルレンジから次々に強打をヒット。
この試合初めて明確とも言えるラウンドをロジャーが獲ります。
 

7R、余裕が出てきたか、しきりにタイソンを挑発して呼び込むロジャー。
序盤一気にラッシュをかけたタイソンですが…撃ち疲れからか、その後は手数も踏み込みも鈍る。
強烈なヒットを積み重ねるロジャー。
嫌われ者のやりたい放題にブーイングさえ鳴り響きます。
 

8R、コーナーまで下がり、タイソンを呼び込むロジャー。
撃たせながらパンチをいなし、相手の撃ち疲れを誘いつつ自身が休む。
ディフェンスに優れているからこそできる芸当…必死に体で押し込みながら戦うタイソン。

お互いのホールディングが頻発し、巨漢レフリーのジョー・オニールは二人を何度も引きはがす。
コーナーに張り付いたロジャーは、オニールの「出てこい」との指示を無視。
オニールもいら立ったか、二人を引きはがす作業も強引になり始め、ロジャーが吹っ飛ぶ一幕も…。

このシーン…客席に座っていた名レフリーの一人、ラリー・ハザードの激怒っぷりが印象的。
同業者としてオニールの振る舞いが許せなかったのかもしれません。
 

9R、終盤に入ってきたこのタイミングで、圧力を強めたタイソン。
ロジャーから一切離れようとせず、自身が唯一有利に展開できる密着戦を徹底。
3分間延々と体を預け続けたタイソン…パンチを出す隙間が限られ、ロジャーはタイソンをもてあます。
 

10R、入り際にアッパーを徹底したロジャー。
何度も何度も強烈なブローを叩き込む…しかしタイソンは怯まず突進。
お互いに絡み合う展開の中、必死にボディを叩いて流れを引き込もうとするタイソン。
ロジャーが下がりながら戦い始めると、タイソン劣勢の色は濃くなってしまう…。
 

11R、これまで通り体で押し込み続けるも、疲れとダメージで手が出ないタイソン。
ロジャーの下がりながらの強打に幾度も顔面を晒してしまう。
愚直に前に出るしかできない…精神力を絞り取られるような展開。
必死の全身が続きます…。
 

12R、最後の力を振り絞るタイソン…両者はロープ際で猛烈な撃ち合い。
ロジャーは密着さえしなければ、近い距離でも撃ち勝っていく。
くっついたタイソンを腕で突き放し、できあがった隙間に鋭利な角度のブローをスピードに乗せて滑り込ませる。
タイソンは、撃たれても撃たれても撃ち返す…

そのまま試合は最終のゴング…。
 

判定は…113-115、113-115、116-112の1-2。
 
 

勝者…ダリル・タイソン。
 
 

放送席から飛ぶ「アメージング!!」の皮肉。

圧倒的にヒット数で上回り、ダメージングブローを数多く重ねたロジャー。
しかし、ずっと仕掛けていたのはタイソンの方…手数とアグレッシブで見れば理解できる判定ではありますが…。
試合通じて、ロジャーにしか注意を行わなかったレフリー含め…なんだか悶々としてしまいます。
様々な見方があるボクシング…難しい試合だったことは間違いありませんが…。
 

それはさておき…スプリットで際どい判定を落としたロジャー。
世界戦線生き残りの為には負けられない試合だったはず…。
スターがひしめく中量級のトップ戦線から遠く離れてしまいます。
それでも、アマチュアで才能を振りまく幼い甥っこを指導しながら、リングに立ち続けます。
 
 

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