2026/9/26 -静岡・ふじさんめっせ 産業交流展示場- 前置き(中日本ボクシング観戦記) ボクシング選手名鑑ピックアップ!

2026/9/26 -静岡・ふじさんめっせ 産業交流展示場- 前置き(中日本ボクシング観戦記) ボクシング選手名鑑ピックアップ!

 

興行の1ヶ月前、静岡を訪れていた。
仕事の用件でボクシングは一切関係ない。
スケジュールもいっぱいで、なにか寄り道などすることもなく。

いつも駿河男児ジムの興行で来る景色とは少し異なる気もする。
仕事は嫌いではないが、やはりボクシングを見に来る時のようなワクワク感はない。
段取りを頭に叩き込み、少しでも早くスムーズに帰れるようにと思考を巡らせる。

ボクシングを見に来た後は、いつも余韻の中、いつまでもその場にとどまりたくなる。
今目の前で戦った選手たちと同じ空気をいつまでも吸っていたい。

景色もどこか違うように思える。
静岡の選手たちが、生活する場所…。
この街で日常を過ごし、生活を営みながら、日々鍛錬に汗を流す。
普段ここを訪れたりするのだろうか…ちょっとしたお店や建物から選手の日常を想像する。
興行パンフレットの協賛に名前を連ねる企業の看板が見えれば、どの選手が好きなんだろうかと想像する。

仕事で訪れる静岡では、その思考の余裕はない。

24時間、ボクシングのことだけ考えていられれば幸せなようにも思えた。
ただ、ボクシングの世界では自分はただのイチファンであって、何者でもない。
配信や観戦記、SNSなどで狭い界隈で認知は得ているが、それだけのこと。
「自分を知っている人がいる」以上でも以下でもない。

仕事では、人に頼ってもらえる。
「自分の仕事」の範疇では、自分が主役として戦うことになる。
何者でもない自分ではいられない…というより、何者かになれる瞬間だったりする。

ボクシング観戦も趣味の領域をはみ出して好きなものではあるが、
仕事もまた、自分にとって大好きで大切なもの。
仕事のストレスはボクシングの世界で晴らし、
ボクシングの世界で補えない自己肯定感は仕事で補う。

「ボクシング一本で生活できる世界」

ものすごく聞こえのいい世界だ。
プロなんだからそうあるべきだとも思った。
ただ、セカンドキャリアを考えたときに、それは必ずしも好ましいものではない。
色々なボクサーを見るうちにそう思えるようになった。

チケットをしっかり売るボクサーは別だ。
キャリアの中で、人脈を形成し、営業活動のノウハウを吸収していっている。
引退後のボクサーで、事業者として成功する人間はかなり多いように思える。
その多くが、現役時代にしっかりとチケットを売ることに取り組んだ人間だとも感じる。

「仕事だけ」「ボクシングだけ」
偏った何かで人生を進めていくのは、難しいものなのかもしれない。

仕事はそつなく終わり、限られた時間の中でご当地のおいしいものを食べて帰る。
今回の静岡でやることはそれくらいだろうか。

ある静岡の選手から連絡が入った。
SNSで僕が静岡にいることを知ったらしい。
次に来るときは必ず教えてほしいと。

「次は一緒においしいものでも食べましょう」とお伝えした。
自分から選手を誘うことはないが、こういったお誘いにはなるべく答えたいとは思う。
杓子定規に距離をとった時期もあったが、今はできるだけ自然に、人と人で接したいと思っている。

ボクシングファンであり、関係者ではないものの、配信などもあってファンとして切り分けるには少し距離が近い。
自分の立っている立ち位置は、何かちょっと特殊な位置にも思える。

ファンに言うようなことではないものの、ボクシングを知らない人に行っても理解されない…
会長やトレーナー、ジムメイトなど関係者には言いづらい。
そんな内容を話すには都合のいい相手にはなれているように思う。
SNSに「ここで釣りをする」と書けば、現役、引退済み…
選手が来て、いろんな話をしてくれるようになった。

話を聞かせてくれているだけでも、何か役割を与えてもらえているなら、これほど嬉しいことはないようにも思える。

ここでいつもの前置き。

自分はファンではあるが、熱狂的なマニア程の肥えた目を持ってはいない。
自分より凄いと思えるファンはそこらじゅうに転がっている。
ここに書く内容に誤りが多分に含まれることもある。

先に言い訳をしておきたいわけではなく、そういうものだと言っておきたい。
同じ試合を見ていても、違う感想を持つファンもいるわけで…。
ここに書いたことが正解ではないと…。
それだけは認識した上で、読み進めていただきたい。

仕事で訪れてから約1ヶ月。
同じ土地でも景色は全く違う。

フィリピンからやってきた、駿河男児の大型助っ人。
マーク・ビセレス(駿河男児)が静岡で静岡のジム所属選手としては
初の世界タイトルマッチに挑む。
海外から日本に移って戦うボクサーを、
輸入ボクサーなんて言ったりもするが、何かふさわしくないようにも思える。
フィリピンルーツの助っ人ではあるが、もう立派な静岡のボクサーだ。

ランディ・バースは国籍こそ米国だが、阪神のイメージしかない。
クロマティは巨人だし、アレックス・ラミレスはヤクルト。
ビセレスもまた、今や僕にとっては駿河男児の選手としてのイメージしかない。
相手は大阪のグリーンツダジムと契約し、世界を射止めたタノンサック・シムシー(タイ)。
四日市のリングで矢吹 正道(緑)とも対峙した。

日本を主戦場とし、日本人に愛されるアジア人ボクサーが、世界の頂を争ってぶつかり合う。
35年ぶりに静岡で行われる世界タイトルマッチは、国籍の隔てを越えた愛にあふれたものになったように思う。
遠い異国からやってきた二人のボクサーを戦わせたいと思う人間がいるからこそ成り立つもの。
「外国人」の彼らがしっかりと愛されている証にも思える。

スラム街で育った不良少年がラスベガスの大スターになるのと同じ。
異国フィリピンで育った選手が、静岡ボクシングの史上初を担う。

白井 義男(白井)のライバルで、無冠の帝王と言われた串田 昇(不二)。
阪神甲子園球場の大観衆の前で、世界ランカーのレオ・エスピノサ(比)に敗北すると、
東京への帰路、突発的に静岡で途中下車し、そのまま現役を引退した。

そのまま静岡に居を構え、串田ジムを開き…
そこでボクシングを学んだ人物たちが、静岡のボクシングの歴史を作っていった。
全国的に見ても、ボクシングの歴史という意味ではかなり深い土地柄でもある。
その深い歴史を、ビセレスという助っ人が塗り替える。
躊躇も忖度もない、ただ純粋に世界の頂を競い合う無骨なカード。

「自分の好きなボクシング」を静岡が体現してくれる。
そんな思いに駆られながら、観客席へと向かった。

 

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