2025/05/18 -静岡・ふじさんめっせ- 前置き(中日本ボクシング観戦記) ボクシング選手名鑑ピックアップ!

2025/05/18 -静岡・ふじさんめっせ- 前置き(中日本ボクシング観戦記) ボクシング選手名鑑ピックアップ!

 

試合開始前、村地 翼(駿河男児)が声をかけてくれた。
綺麗な奥さんと、小さな赤ちゃんと一緒だった。
一目見て女の子とわかる赤ちゃん。

「つ…つば子!!!?」
「つば子じゃなです!!」

なんてやり取りから始まった。

「将来の世界チャンピオンです!」
…なんて嬉しそうにする村地。

僕の「(ボクシング)やらせるの!?」に対して奥さんは苦笑いで首を横に振る。
微笑ましいやり取りだった。

 

東洋大を中退して駿河男児からプロデビューした村地。
前島会長の秘蔵っ子感が強かった。

実際のところはわからない、アマチュアボクシングをチェックしている友人から聞いたものだ。
あくまで外から見ていた構図のお話。

国内アマチュアボクシングで最も熾烈と言われる関東学生リーグ1部。
名門東洋大で活躍していた村地は下の世代の有望選手に立ち位置を奪われようとしていた。

名門ボクシング部にいたとて、試合に出れなければ結果は残せない。
光の当たる舞台から消えようとする村地に目をつけていたのが前島会長だった。
気の強いボクシングをプロ向きと見染めて静岡に呼び寄せた。

4回戦デビューした村地は圧倒的だった。
1Rで倒された対戦相手のセコンドが苦笑いでその結果を受け止める姿が脳裏に焼き付いている。
過去の実績もあり、すぐに6回戦へと上がり、一気に駆け上がっていった。

関東学生リーグの脱落組と捉えたマニアは村地の将来性を否定した。
プロのリングでその強さを目の当たりにしたマニアは村地に期待をかけた。
マニア同士の村地論争で小競り合いが起こったこともある。
当時の村地の存在感はそれほどだった。

「まだ早い」

大方の見方はそうだった5戦目のタイトル初挑戦。
周りの想像以上に、村地はコテンパンに負けた。
リングの上から後楽園ホールの天井を見つめている姿が印象的だった。

1年後に再起した村地は、その後を国内選手たちと戦った。
期待値と勢いで駆け上がった初挑戦から、地道なキャリア作りに切り替えたように見えた。
引き分けを挟んで4連勝…負けなしでのタイトル再アタック。

この挑戦で、駿河男児ジム初のベルトをもたらせた。
世界を期待させる村地にとっては、通過点に位置するベルトだったかもしれない。
ただ、このベルトにたどりつくまで、本人にも周りにも、たくさんの物語があったはずだ。
前島会長がリング上で涙に濡れた姿は名場面だった。

ベルトを返上後、日本王座に挑んだ村地。
ここで敗戦すると、潔く現役のリングを去った。
ここまま戦っても世界が見えない…目指す高みと自分の力量を冷静に見たように思えた。
強いがゆえに現実を直視することができた選手。

最後の試合から1年半…なんだかもっともっと時間が経過しているように思えた。
その後の人生を幸せいっぱいに生きている姿が見れた。
胸がいっぱいな思いだった。

 

ここでいつもの前置き

自分はファンではあるが、熱狂的なマニア程の肥えた目を持ってはいない。
自分より凄いと思えるファンはそこらじゅうに転がっている。
ここに書く内容に誤りが多分に含まれることもある。

先に言い訳をしておきたいわけではなく、そういうものだと言っておきたい。
同じ試合を見ていても、違う感想を持つファンもいるわけで…。
ここに書いたことが正解ではないと…。
それだけは認識した上で、読み進めていただきたい。

 

この日、村地がともに汗を流した選手たちがリングに上がる。
いずれ彼らもリングを去っていく。
たった5年先にはだれ一人残っていないかもしれない。
長い人生で見れば、現役でいられる期間は一瞬だ。
その一瞬に何もかもを賭けに行く男たち。

ボクシングは世界王者にならなければ何も残らない…。
本当にそうだろうか。
村地はプロの世界で「村地 翼を愛する人たち」を得てリングを去った。
それは目に見えるどんな財産よりも大きな財産ではないだろうか。

今日もまた、一瞬にかける男たちがリングに上がる。

 

 

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