2025/03/30 -愛知・愛知県国際展示場- セミファイナル、メインイベント(中日本ボクシング観戦記) ボクシング選手名鑑ピックアップ!
【ヘビー級6回戦】
但馬 ブランドン ミツロ(亀田) vs ギジェルモ・カサス(メキシコ)
鋭くジャブを飛ばしていくミツロ。
上下に打ち分けていく中で、カサスは数発ボディを叩くので精一杯。
圧倒的なスピード差でカサスに何もさせない展開を作る。
2Rもほとんどカサスに手を出させず。
たまに撃ち込まれるカサスのフックは二の腕で軌道を変えていなす。
ラウンド終盤に入ると強烈な右ストレートを立て続けに突き刺したミツロ。
より一方的な展開の色を増していく。
3R中盤からは頭をつけたインファイトの展開に。
この状態であればカサスも手は出てくるがミツロはいなして痛烈な被弾はない。
終盤には手数を増やして襲い掛かったミツロ。
カサスがズルズルと下がっていったところでラウンド終了。
4R開始直後から襲い掛かったミツロ。
ロープに詰まったカサスはボディからのコンビネーションを浴びて膝をつく。
マウスピースを掃き出し、ギブアップの様相。
レフリーはそのままテンカウントを数え上げた。
KOタイムは4R 40秒
ヘビー級の人材枯渇は世界的に常態化している。
世界ランカークラスとなればバケモノのような選手たちがそろっているが、
上と下の間には大きな空間があるようにも感じる。
勝負の試合以外が、物足りない相手となるのは誰が悪いわけでもない。
また、メキシコからやって来たカサスを物足りないとさせるのはミツロの実力。
この完璧な勝利を踏まえ、次の勝負の試合がいつになるか。
それまで勝ち続けられるか…どんな相手であれ一発の脅威はヘビー級につきまとうもの。
余計なパンチ一発で全てが吹き飛ぶこともある。
勝利者インタビューで「強くならないといけない」というワードを何度も繰り返したミツロ。
強くなれば解決することが沢山ある。
彼が挑むのは「日本人には無理」と思われている場所。
メジャーリーガーでも欧州サッカーでも活躍する選手も多くなった。
誰かがその道を切り開いて、その競技の発展がある。
ミツロの拳には、未来のこの国のボクシングがかかっている。
パイオニアという言葉も使っていたミツロ。
それになる重さを背負っての戦いを、そして歴史に残る選手へ…。
より強くなるミツロを信じたい。
但馬 ブランドン ミツロ 13戦12勝(10KO)1敗
ギジェルモ・カサス 17戦11勝(6KO)5敗1分
■WBC世界ミニマム級タイトルマッチ
【ミニマム級12回戦】
メルビン・ジェルサエム(比) vs 重岡 優大(ワタナベ)
サウスポーの重岡と踏み込み一歩の距離で対峙するジェルサエム。
フェイントを掛け合いながら踏み込むタイミングを探る両者。
先にボディストレートを伸ばしたのは重岡。
ジェルサエムもまた、鋭くボディへ拳を伸ばす。
両者が接触するタイミングで鋭利な拳が交錯し、また同じ距離へとすぐに戻る。
居合斬りの対決…すさまじい緊張感。
ジェルサエムの踏み込みをかわして重岡がボディを突き刺したところで1Rが終了。
2Rはより踏み込みの頻度を増やしたジェルサエム。
接触のタイミングでの攻防が速すぎて見えない。
右ストレートを突き刺すジェルサエム、撃ち終わりを左右フックで捉える重岡。
上下に右ストレートを突き刺すジェルサエム。
反応しきれない重岡だが、逆に左ストレートを突き刺す場面も。
3R、踏み込んで至近距離で連打で仕掛ける重岡だが、
ジェルサエムは強打を差し込んで止める。
攻撃にも、守りにもその強打が有効に作用する。
ラウンド終了間際には強烈なボディストレートで重岡がクリンチに逃れる。
わかりきっていることだが、すさまじい強さ。
4R、右ストレートを上下にヒットさせるジェルサエムだが、
重岡はその撃ち終わり、距離が近づいたところで左右フックで捉える。
試合終了間際、ジェルサエムの右ストレートで重岡の腰が落ちる。
3Rに続いて大ピンチの中、クリンチに逃れてこのラウンドを終える。
ここで途中採点
マイジャッジ 39-37 重岡
40-30
39-37×2
3-0 ジェルサエム優勢
5R、相変わらずジェルサエムの右に反応できない重岡。
重岡の勝負所は撃ち終わり一択。
顔面、ボディを撃たれたあとにそのまま強打を返す。
凄まじい強打を浴びながらの反撃…あまりにも危険な戦い。
しかし、怖気づけばもう打つ手はない。
重岡の気の強さがこの試合を成り立たせているような状態。
6R、重岡の方から撃ち込みはじめると、ジェルサエムの右ストレートの頻度が減る。
重岡が捉える場面が出始めるが、ジェルサエムも撃ち終わりに強打を振るう。
ラウンド終了間際には右ストレート連発で重岡を追い込む。
7R、どちらが出るか…駆け引きの時間が長い序盤。
重岡が踏み込んで至近距離で強打を連発するも、
しっかりとガードしてその後の反撃でパンチをまとめるジェルサエム。
パンチはすべてに威力がある多彩なパンチで重岡を跳ね上げていく。
8R、ジェルサエムの左ボディの撃ち終わりに左フックを叩きつける重岡。
強烈なアッパーを顔面にもらってもひるまずに撃ち終わりを捉える。
中盤撃ち合いになると、ジェルサエムが上回る。
さらに終盤にはhジェルサエムがまとめるシーンも。
ラウンド終了間際、至近距離でボディをえぐり、撃ち終わりに強烈な左フックを突き刺した重岡。
少し、光明が見えてきたか…危険な被弾を浴びていることに変わりないが
重岡の強烈なパンチが入るようになってくる。
ここで途中採点
マイジャッジは78-74でジェルサエム
公式ジャッジ
79-73
78-74
77-75
3-0 ジェルサエム優勢
9R、撃ち終わりを狙い続ける重岡。
強烈に被弾してもそのまま返して左右フックで捉える。
逆転の一撃につなげられるか…威力は充分。
終盤、撃っては離れられ、撃ち終わりのパンチを出させてもらえない時間もあったが、
終了間際にはしっかりとらえる場面を作る。
10R撃たれる場面でチャンスとばかりにもらいながら返す重岡。
入ってきたところを待ち受けて、勝負所にしていく重岡。
ダメージお構いなしに勝利に向かう。
11R、至近距離はしっかりと制する重岡だが、
もらってからの仕掛けとなる分、際どいラウンドとなる。
ステップを踏み、下がりながらリスクを削り始めるジェルサエム。
12R、撃っては離れで、撃ち終わりを叩かせないジェルサエム。
踏み込んでくるところに合わせる重岡だが、鋭い踏み込みの衰えないジェルサエム。
なかなか合わせることもできず、被弾が重なる。
終了直前、攻めに出てきたジェルサエム。
最後のチャンスに熾烈な撃ち合いを演じる重岡。
お互い凄まじいパンチで捉え合うも、ダウンシーンは産まれず。
試合終了のゴングを迎えた。
マイジャッジ 116-112 ジェルサエム
公式ジャッジ
119-109
116-112
118-110
3-0 勝者:ジェルサエム
この試合で出た答えは、より強くなれる場所へ。
47.6㎏以下という極限階級。
ライトフライならばわずかながらその過酷さは緩和される。
減量という足かせが和らいだ重岡がどれだけ強くなれるのか。
過酷な減量は骨も脆くする。
この試合で眼底骨折となったことに、減量の影響がないとは言い切れない。
負けて上げることが不本意なのは
「ライトフライ級へ行くしかない」という言葉からにじみ出ている。
だが、いずれそうなるはずだった。
重岡の本当の勝負はこの場所ではないと思っている。
ミニマムには、優大より身長の7cm低い弟の重岡 銀次朗(ワタナベ)がいる。
153cmの小さな骨格は、ミニマムで戦ううえで、神から授かった才能とも言える。
きっと銀次朗が世界王座に返り咲き、優大が失い、届かなかったベルトも取り返してくれる。
全戦全勝で華々しくライトフライへ行きたかっただろう。
ボクサーにとっての敗北は人生の全否定と言うボクサーもいる。
苦しいもの、つらいもの、だからこそ立ち上がることが凄いこと。
思うようにいかなかった現実と向きあい、そして優大は復活してくる。
ジェルサエムの強さはこの試合を見たすべての人が知っている。
強いやつに挑んだからこそ敗戦が付いた。
レジュメには2つの傷がついたが、ボクサーとして魅力はより濃くなった。
負けに負けるな、負けてからがボクシング。
まだまだ若き才能。
ボクシングファンたちが何年も語り継ぐようなドラマを描いてほしい。
メルビン・ジェルサエム 27戦24勝(13KO)3敗
重岡 優大 11戦9勝(5KO)2敗
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