2019/7/27 -後楽園ホールⅡ- (中日本ボクシング観戦記番外編) ボクシング選手名鑑ピックアップ!
■日本バンタム級タイトルマッチ
【バンタム級10回戦】
齊藤 裕太(花形) vs 鈴木 悠介(三迫)
日本バンタム級王者/OPBF東洋太平洋バンタム級3位
齊藤 裕太 24戦12勝(9KO)9敗3分
日本バンタム級1位/OPBF東洋太平洋バンタム級6位
鈴木 悠介 13戦10勝(7KO)3敗
1R、ワンツーを撃ち込んでいく鈴木。テンポよく撃ち込みながら
強烈な左フックでも捉え、齊藤にダメージを刻んで行く。
時折齊藤が右ストレートを突き刺す場面はあるものの、
鈴木がヒットでも手数でも圧倒的に上回る出だし。
お互い踏み込み合う中、何度も頭が衝突する。
2R、先に先に手を出す鈴木に対し、齊藤が後手に回り続ける。
そんな中、ラウンド中盤に入ると、お互いにボディを捉え合う。
出れば出る程、もらってしまう齊藤だが、しつこくしつこく出続ける。
3R、鈴木の入り際に右アッパーを突き刺した齊藤。
試合は一気に撃ち合いに突入する…。
ここでも的確にパンチを当てていくのは鈴木だが…。
明らかに一発の重い齊藤…試合はみるみる凄まじい打撃戦に…。
このラウンド、齊藤がヒッティングカット。
4R、ポジションを細かく変えながら的確に撃ち込んでいく鈴木に対し、
とにかく追いかけて追いかけて撃ち込んでいく齊藤。
ヒットの数では圧倒的に下回る展開の中、鈴木をロープに詰めた齊藤が
形成逆転の強烈な右ストレートを炸裂させる。
腰を落とした鈴木、絶体絶命のピンチの中、体を齊藤に預けてなんとか窮地を脱出しようとする。
齊藤は右アッパーを突き刺しては鈴木を揺らすが、倒すには至らず。
5R序盤、左フックのトリプルを強烈に叩きつける鈴木。
撃ち合いの最中、齊藤は右アッパーを連続で突き上げる。
的確に撃ち込んでいく鈴木だが、齊藤の強烈な一撃で揺らされる。
しかし、終盤にはボディを襲って鈴木が盛り返す場面も。
6R、ポジションを変えながら細かく撃ち込んでいく鈴木。
強烈に齊藤の顔面を突き刺していくものの、いくら浴びても齊藤はダメージを表に出さず。
激しく撃ち合う二人だったが、頭が衝突。
直後、ドクターチェックが挟まるが試合は続行。
気が付けば齊藤は両目尻をカットし、鈴木の顔面は腫れ上がって変形している。
7R、足を使ってジャブを突き、的確に撃ち込んでいく鈴木。
距離を潰しにかかる齊藤
終盤頭をつけてのファイト。
8R、撃ち合い続けた3分間。
細かくシャープに撃ち込んだ鈴木が齊藤にダメージを刻んで行く。
9R、ドクターチェックが挟まった直後、右を効かせた鈴木。
この試合、初めて齊藤がはっきりとダメージを露にする。
撃たれ強い選手がこうなると、一気にダメージを噴出させるようにリングに沈むことがある。
終わってしまうか…見続けたい熱戦、しかしお互いにダメージが大き過ぎるようにも見える。
この場面、攻めてかかる鈴木に対し、ガードを固めて凌ぎ切った齊藤。
終盤には齊藤が右ストレートで反撃、強烈に効かせて盛り返す。
10R、お互い元の顔がわからないくらいにボコボコの顔面になって最終ラウンドを迎える。
猛烈に撃ち合う中、齊藤の右ストレートが強烈に鈴木を捉えると
齊藤が押し込んでいく…ポイントでは不利な状況、倒しにかかる齊藤だが
鈴木もしっかり反撃し、最後の3分間が終了。
大激闘に幕が下りる。
マイジャッジ 97-93 鈴木
公式ジャッジも97-93×3で鈴木
はっきりとした勝利で新たな王者が産まれた試合。
しかし…その中身は超大激戦。
ここまでの3敗はいずれも王者クラスの相手。
アマチュア実績もしっかりあり、鈴木は期待値の高いボクサーだと認識している。
しかし、そんな期待値とは裏腹に、日本タイトル間近で様々な不運が重なり2年も待たされた。
そしてこの日も、ベルトをつかみ取るまでに、鈴木の顔左半分は大きく腫れあがり、
元の顔がどんなだったか解らなくなるほど変形…。
ベルトをつかみ取る最後の最後まで、ボクシングの神様は鈴木に試練を課した。
左目は完全にふさがり、右目の視界もわずかだっただろう。
そんな状況でも、チャンピオンと撃ち合い、鈴木は最後の試練を乗り越えた…。
名勝負の上でつかみ取ったベルト。
きっとこのベルトは鈴木をより強くする。
どうか、そうであって欲しい…。
あまりにも酷い腫れ方を見る限り、しばらくは休養が必要だろうとは思うが…。
この選手のチャンピオンロードがどうなっていくのか、楽しみに待っていたいと思う。
日本バンタム級王者、齊藤は不器用さの塊のようなボクシングだった。
しかし、超人じみたタフネスを活かしたしつこさで鈴木の前に立ちはだかった。
飛び抜けたものが一つあればいい…それをまさに体現したようにも感じる。
リングを去る齊藤を見て、中日本の選手が思い浮かぶ。
中日本激闘王、太田 卓矢(とよはし)。
齊藤の領域には、まだまだ届かないか…
しかし、いつか太田が登っていくならこんな王者になるのかもしれない。
一時は負け越しまでいき、連勝を重ねたのは全日本新人王を獲得するまでの時期のみ。
しかし、彼はチャンピオンだった…
負けを重ねながらそこまで辿り着き、しっかりと強さを誇示した斎藤。
彼の歩いた道のりが残すものはきっと大きいと思う。
試合後、笑顔で引退を報告してくれた齊藤。
「僕はチャンピオンの器ではありませんでした。防衛もできたし満足です。」
変形した顔をニコニコさせながら、4人の子供を連れて挨拶に回る。
本当に立派なチャンピオンだったんだ…と感じる。
選手が笑顔で、ボクサー人生を全うした顔をして、引退すると言ってくれる。
ファンとしてこんな幸せなことはない。
少なくとも齊藤 裕太というチャンピオン像は、僕の中にしっかりと刻み込まれた。
忘れることのないだろう試合、忘れることのないだろうチャンピオン。
本当にお疲れさまでした。
最後に1試合だけだけれど、見れてよかった。
齊藤という、偉大なボクサーを知れてよかった。
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