2019/05/19 -静岡・ふじさんめっせ- 第5試合、第6試合(中日本ボクシング観戦記) ボクシング選手名鑑ピックアップ!
■中日本バンタム級新人王準決勝
【バンタム級4回戦】
木村 天汰郎(駿河男児) vs 冨田 風弥(伊豆)
木村 天汰郎 1戦1勝
冨田 風弥 2戦1勝(1KO)1敗 サウスポー
1R、トリッキーな動きを見せながら入ろうとする冨田に対し
入り際を捉え、バックステップで外し、さらにはサイドに飛んで捉える木村。
右ストレートも左右フックも右ボディも…多彩に冨田を捉えていく。
近い距離での攻防では、自分がまとめた後、冨田が撃ち出すと
ワンテンポ早くバックステップで空転させる。
パンチが届く距離に何度も木村が侵入していながら、パンチを当てれない冨田。
ラウンド中盤になって、ようやく左フックを当てる。
さらに右ストレート、左フックも浴びせた冨田だったが、
木村が後続を躱して仕切り直すと、また冨田が空転し、木村が的確に襲う時間が続く。
2R、このラウンドも冨田がトリッキーな動きを見せながら入るタイミングを探る。
木村が突き刺すボディにビクともせず、ダッキングした木村に撃ち下ろしの右を撃ち込んだ冨田。
しかし…以降はやはり木村の独壇場。
冨田の手の届く位置にいても、冨田のパンチにしっかり反応し、上体柔らかく躱し続け、
自らのパンチのみを撃ち込んでいく…。
しかし冨田…木村から自身が撃ち込むパンチの何十倍もの数のパンチを浴びながら
ダメージを見せることなく、撃たれても撃たれても追いかけ続けていく。
ラウンド終盤、木村のボディ攻めに冨田が苦悶の表情を浮かべる。
3R、疲弊が見え始めるも、それでもひたすらに追いかけ続ける冨田。
相変わらず木村はしっかりと外しながら、的確に自分の拳を撃ちつけていく。
前後に外し、サイドに飛び…
そんな中、ぐちゃぐちゃのフォームになりながらも
冨田が右の撃ち下ろしを強烈にヒットさせる。
ようやくしっかりと当たった拳だが、木村にダメージは感じられない。
4R、このラウンドも追いかける冨田を柔らかくいなし続ける木村。
一回りフレームの大きい冨田だが、フレーム差は
細かく細かく位置を変える木村に帳消しにされる。
もらい続けながら延々と追いかけ続けた冨田。
ラウンド終了直前に相打ち含め複数のヒットを奪うが…。
圧倒的な差を覆すようなパンチとはならず、ラウンド終了のゴング。
マイジャッジ
40-36 木村
公式ジャッジも40-36×3の3-0で木村。
冨田は昨年同じ場所で見た試合と比較すると圧倒的にいいボクサーになっていた。
決して巧くはないが、12分間フルにあの手この手で攻略を試み続け、
タフ過ぎるほどにタフに、相手を追いかけ続けた。
4Rだからできた事かもしれないが…もし、長いラウンドにこの戦いを持ち込むことが可能ならば…。
根負けし、飲み込まれる有望選手も出て来るだろうと感じる。
まだ1勝の選手…この選手が数年後、6回戦のリングに上がるところが見たいと強く感じた。
勝ち続けるような選手ではないとは思う。
しかし、劇的なドラマを巻き起こす可能性がある選手だと感じている。
木村は被弾の数も少なく、完勝と言っていい内容だったと思う。
前後の動きはワンテンポ早く、相手は撃ち終わりを狙うときはその場所にいない。
この試合では、サイドに飛ぶ動きも多く見せた。
長い距離を取らなくとも、当たらない立ち位置に移動してしまうため
冨田とのリーチ差の不利を不利とせず。
冨田のような背の高いサウスポーをやりにくいとする選手も多くいる中、
この日の木村にはこれが全く当てはまらなかったように思える。
間違いなく強く…勝っていける選手だと感じる。
8/4の決勝の相手は今年の中日本新人王戦No.1ファイターとも思えるテル のび太(緑)。
中日本新人王戦No.1ボクサーと中日本新人王戦No.1ファイターの決戦。
今年のバンタム級、とんでもなく熱いカードが決勝で実現することとなった。
【68Kg契約6回戦】
清 利樹(駿河男児) vs 加藤 寿(熊谷コサカ)
清 利樹 7戦5勝(4KO)2敗
加藤 寿 18戦7勝(4KO)9敗2分 サウスポー
1R、パンチの届かない距離でフェイントをかけ合う静かな立ち上がり。
まずは加藤が左ストレートをボディに伸ばす。
清が攻め入ろうとするとその分スッと距離を取り射程圏内に入らせず…。
更にもう一度、加藤が左ボディストレートを伸ばし、
清のパンチはヒットしないまま1Rが終了する。
2R、変わらぬ緊張感高い駆け引きの中、先にジャブをヒットさせたのは加藤。
さらに清のジャブをもらいながら左ストレートを撃ち込む。
中盤、清の右ストレートが浅くではあるもののようやくヒット。
終盤に差し掛かると、時折踏み込んでボディを撃ちこみ、さらに顔面に繋げる場面を作り始めた加藤。
離れ際の清のパンチはうまく外される。
3R、このラウンドを取れなければ苦しくなる清。
攻勢を強めて出て行くが、加藤はそこにジャブを合わせながら距離を取り、
緊張感の高い駆け引き合戦に展開を戻す。
中盤、清の右ボディストレートが幾度か加藤を捉える。
さらにワンツーもヒットさせ試合を盛り返してくると、
強烈に左右フックからアッパーを撃ち込んでみせる。
終盤に入っても清が攻め込んで強烈に拳を撃ち込んでいくが
加藤が一旦距離を置いて立て直すと、その後の近距離での駆け引き合戦を加藤が上回り、
強烈に左ストレートを叩き込む。
4R、しっかりジャブを突きながら時折ワンツーに繋げる加藤。
清はラウンド中盤に入ったところ、距離を詰めて右アッパーを撃ち込み、
バックステップを踏んだ加藤にさらに右ストレートを撃ち込む。
終盤、距離を取ろうとする加藤を追いかけていく清。
もらいながらも歩みを進めた清だったが、サイドに飛んだ加藤が左を撃ち下すと
そのままパンチをまとめられてピンチに…。
ここはいったん下がって窮地を脱出したところでラウンドが終了。
5R、ポイント的には厳しい状況の清が前に出る。
加藤はジャブで捉えるが止めきれず、強引にロープに押し込まれ、清の右アッパーを被弾。
しかし、ボディワークで後続を躱すとクリンチに逃れる。
ブレイク後、入るタイミングを探す清が中途半端な位置に立つと
加藤がワンツーや左ストレートで清の顔面を突き刺していく。
ラウンド終了直前、清がようやく右ストレートを浴びせて5Rが終了。
6R、足を使って徹底的にアウトボクシングを展開する加藤。
清は手を出すタイミングさえ与えてもらえず、加藤を捕まえられない。
追いかけても追いかけてもその拳は届かず…。
鋭くジャブを突く加藤がリングに綺麗なサークルを描き続けて試合が終了。
マイジャッジ 60-54 加藤
公式ジャッジ
59-55
60-54
60-55
3-0 加藤
加藤がしっかりとミッションを完了。
3年半ぶりの試合で勝利を挙げた。
勝利となると5年半ぶり…
その間、いずれもタイトルマッチを戦うこととなる国内トップ戦線の相手に3連敗を喫していた。
これでまた、加藤はA級戦線に戻って行くのだろう。
決して撃たれ強くない己を知るからこその試合展開だったようにも思う。
弱さを知る強さは、ボクサーを一段階引き上げる。
3年半前に弾き返されたA級戦線…ここから加藤が再度挑んでいく道のりは
あまりにもドラマチックに思えてしまう。
見ていけないのが悔しい気分だ。
東のリングで輝いてほしい…そして叶うことなら、また中日本のリングへ。
清のパンチは届かず…。
この展開を作り出した加藤が賛美される試合だったように思う。
静かな展開だった1、2Rを加藤がしっかりと獲ったことで、ポイント計算では厳しくなった清。
入って行ったタイミングでは加藤に効かされる場面もあり、安易には入り辛くなった。
思い返せば1年前にもサウスポーのアウトボクサーと対戦している清。
この日の5日前に元日本王者を撃破した安藤 暢文(高崎)を相手に
ダウンポイント分上回っての判定勝利を挙げている。
決して苦手…というわけではないのだろう。
この日の加藤の集中力に、仕事を完遂されてしまった。
相手は上のグレードで戦いを重ねた選手。
この先の戦いには、清にはもうワンクッション必要なのだろう。
結果としてはそういうことになると感じる。
しかし…決して届かぬ先ではないと感じている。
A級昇格まであと1勝。
次の試合を楽しみに待ちたいと思う。
遠回りは、選手の背景をより魅力的にする。
どうか、この敗戦を乗り越えてほしい。
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