5階級制覇へ… レオ・ガメス(ベネズエラ)⑥ ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2016/04/23
さぁ、本日でいよいよ最終、レオ・ガメス(ベネズエラ)。
スーパーフライ級の王座をセレス小林(国際)に追われ、
5階級制覇を目指したジョニー・ブレダル(デンマーク)へのバンタム級挑戦で敗北。
ここまでか…と思われたところで、ブレダルの防衛戦が決まらずにまわってきた、
WBA世界バンタム級暫定王座決定戦のチャンス。
相手は3年前、顎を割ったうえで勝利した戸高 秀樹(緑)。
序盤からぐいぐいと前に出るガメス。
ジャブの刺し合いで上回ります。
しかし前回とはコンディションも実力も圧倒的に違う戸高。
前回は全くできなかった横への動き、力感…すべてが違います。
ガメスのジャブをものともせず、いくつかビッグパンチを叩き込む戸高。
しかしガメスは3Rにもなると距離をつかんで、カウンターで強烈なパンチをヒット…。
戸高のジャブに合わせるため、戸高の手数も減り気味に…。
前回の対戦がよぎるような展開…。
この展開を変えたのは戸高のボディ。
4R、強烈なボディでガメスが効いたのが解ると、さらに狙いを定めてボディを集中攻撃。
ガメスも負けじとカウンターを合わせますが、突進が鈍ります。
その小さな体からは信じられないタフネスを誇るガメス。
そして身長差からは信じられないほど、二人の強打が当たる距離は酷似。
お互いのフルスイングが顔面を捉え合う。
しかし、ジャブに対するカウンターのタイミングをつかんでいるガメス。
戸高は不用意にジャブを突くことができない分、ジャブで勝るガメスにポイントが流れがちに…。
しかし戸高も、一旦チャンスをつかむと、コーナーに詰めて連打を見舞う。
拮抗する展開の中…最終ラウンドには戸高は激しくカット。
流血戦にもなった激戦は…
全員が2P差…つまりわずか1R差でのスプリット判定。
制したのは、戸高…
どちらの手が挙がってもおかしくなかった試合を落とし、雪辱を許したガメス。
しかし…というか、やっぱりまだまだあきらめず…。
そこから1年、41歳となったガメスは、再度WBA世界バンタム級王座に挑むため、
ドイツへ渡って挑戦者決定戦に出場。
この試合ではウラジミール・シドレンコ(ウクライナ)に圧倒的な判定負け。
インフルエンザで39度の発熱だったガメス。
点差的には開いた敗北ですが、逆にガメス強しと驚嘆させられる試合。
まだあきらめないガメス…再起戦を1試合挟んで42歳。
最後のチャンスとしてタイに渡り、WBA世界バンタム級暫定王者の“攻めダルマ”こと
プーンサワット・クラティンデーンジム(タイ)に挑戦。
1R、プーンサワット相手にジャブを軸にサークリングするガメス。
体格の差から距離の有利なプーンサワットはガメスの入り際にパンチを合わせて侵入を許さず。
サークリングを辞めて撃ち合いに挑んだガメスですが、
上手く腕をたたんでハンドスピードで制するプーンサワットに撃ち負ける…。
この頃には衰えからか…連打が出せないガメス。
単発で強打を入れても、連打で飲み込まれ、帳消しにされるどころか、上回られてしまう。
さらにプーンサワットが足を使い始めると、しっかりと試合をコントロールしてしまい…
ガメスが効いたと見るや前に出るプーンサワット…唯一のチャンスでクロスを入れて対抗しても
その後が続かずに連打に飲み込まれる…。
ブレダル戦では後半盛り返せましたが、消耗を見せないプーンサワット相手には打開する手段がなく…。
そのまま最終終了のゴングが鳴り、大差判定で敗れます。
悔しさも見せず、サッパリとした様子で判定を聞くガメス。
最後に勝者のプーンサワットと抱き合って健闘を讃えると、静かにリングを降ります。
この敗北を持ってデビュー20年、42歳にしてようやくガメスはグローブを壁に吊るしました。
読んでいて気付いた方…いらっしゃると思うんですが、
ガメスは負けても負けてもすぐに世界戦に挑んでいるんです。
実はこれ、2007年までWBAの本拠地がベネズエラにあったことが影響したと言われていて…。
暫定で4階級制覇を達成した時も、フライ級の王座を保持しながら…。
なのでこれはちょっと特別扱いじみています。
ようは母国優遇と…。
特にシドレンコ戦なんかは米メディアから叩かれていまして…。
シドレンコに対して、あんなロートルと戦う必要ない!なんて。
小さな体躯も相まって、ガメスが強敵とみなされることはあまり無かったんです。
でもそれでも、39度の発熱を抱えながら、判定までもつれる熱戦をやった…。
ここぞという試合でしぶとく強さを見せつけて、「ロートル」なんて声を静めていった…。
そして4階級制覇、世界戦20戦という戦歴の中で…母国で行った世界戦が1試合もないんです。
いつも相手のホームに乗り込んでいき、WBAという団体のみで、最軽量級から順々に4階級を制覇。
いずれの要素も他の4階級制覇を達成した選手たちとは異彩を放ちます。
圧倒的に4階級を制覇したスーパースターではないものの、
彼のキャリアを覗いてみると…それはそれは重厚な道のりを歩いたことが分かります。
南米の選手らしい伸びる右クロスを武器に
自分よりひとまわりもふたまわりも大きい相手に挑んでいったガメス。
脇の下から見えない角度で飛んでくる恐怖の右アッパーでベルトをさらい…
例え負け試合であろうと果敢に撃ち合いました。
そして実はとてもクリーンな選手。
憎き適役として一時期の日本のリングの名物にもなった男。
日本人の世界戦が決まるたび、「またガメスか…」なんて声は、
彼が全世界を飛び回り、そして幾年にも渡って世界のトップに居続けた…。
軽量級の名王者であることを指し示すぼやきだったりもするのです。
そんなこんなで、レオ・ガメスのピックアップはこれでおしまい。
また…明後日。
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