2024/7/14 -愛知・刈谷あいおいホール- セミファイナル、ファイナル(中日本ボクシング観戦記) ボクシング選手名鑑ピックアップ!
【バンタム級4回戦】
糟谷 裕太(名古屋大橋) vs 菊地 隼斗(ワタナベ)
セミファイナルの8回戦が中止となり、4回戦ながらセミに繰り上がった試合。
粕谷の旺盛な手数の合間を縫って菊地のジャブが滑り込む。
開始15秒ほどでクオリティの高さを感じさせる試合。
向かってくる菊地にガードを撃たせて、撃ち終わりを襲い始めると
粕谷のパンチが一方的に的確に菊地の顔面を捉えて行く。
しかし、菊地も貰いながら、際どいタイミングのカウンターを狙う。
的確に力強く襲い続ける粕谷だが、菊地の右を合わせるチャレンジは続いている。
狙い続ける菊地に、臆することはないモノの、ラッシュには至らない。
しかし、的確なヒットは留まることなく、
パンチを浴び続ける菊地にレフリーは試合をストップ。
TKOタイムは2R2分47秒。
敗戦の数は自分より強い相手と戦った数。
その言葉が繰り返し脳裏に浮かんだ。
菊地は決して弱い選手ではなかった。
抜群のタイミングでジャブを差し込み、カウンターのタイミングも際どい。
並の選手なら、手が出なくなっておかしくない。
しかし、粕谷はそのカウンター狙いに消極的になることなく、
自信たっぷりに襲い続けた。
一方的な猛ラッシュにまでは至らなかったものの、
逆転の一撃を狙う相手を、まるで重戦車のように押しつぶしていった。
来年の新人王戦、エントリーがあるなら、この試合を裏付けに、
大注目選手と騒いでいきたい。
これで2戦2敗となった菊地だが…持ち合わせるタイミングに浪漫を感じる選手。
続けてくれれば、いずれ後楽園ホールの観衆が
沸き上がるようなKOシーンを見せてくれるだろうと想像する。
糟谷 裕太 2戦2勝(2KO)
菊地 隼斗 2戦2敗
【エキシビジョン】
天熊丸木 凌介(天熊丸木) vs 丸木 和也(天熊丸木)
天熊丸木凌介の対戦相手、アピシット・サンムアン(タイ)が体重を作れず、
来日できなかったことから試合が中止となり、代替えとして行われたスパーリング。
試合前には、試合をキャンセルされた凌介が、「相手をボコボコにしてやる」と意気込み。
和也が「みんなもう和也は動けないと思っている。魅せてやる。」と意気込む。
「丸木兄弟のスパーリングは面白い」そう聞いていたが見るのは初めてだった。
内容は…噂にたがわぬものだった。
1R終了後、凌介がヘッドギアを外し、兄にもヘッドギアを外すよう促す。
ここから二人のショータイム!
ダウンシーンもあり、会場がどよめくボディワークあり。
最後には二人の姿なんか忘れ去ってしまいそうなほど煌びやかなスーパースターがリングイン。
この日の試合の勝利を足掛かりにタイトルを目指すつもりだったという凌介。
流れたことにより、引退も考えていると言うが…。
全ての選択権は彼にある…それは承知の上で。
凌介が復帰すると聞いてどれだけ嬉しかったことか。
どれだけ胸が高鳴ったことか。
後輩がベルトを獲得し、東京五輪代表までやって来た中日本の中量級。
凌介は実績的にも、中日本中量級最強ではないのかもしれない。
でも、ここまで中日本中量級をエースとして引っ張ってきたのは凌介だ。
エースが最多勝や最多奪三振を必ず獲るわけではない。
チームの別の投手がそれをとることもある。
それでも、エースはエースだったりする。
未だ変わらず、中日本中量級の支柱でありエースは凌介だ。
それは、凌介が引退を決めるまで。
名門の血、名門の看板、メインイベンターの責務…
全てを背負って来た男だからこそ、その地位は揺らがない。
僕は見たい。
リング上で笑顔で、可愛い「将来のスーパースター」を抱き上げる姿、僕は見たい。
■日本ライトフライ級ユース王座決定戦
【ライトフライ級8回戦】
大木 彪楽(浜松堀内) vs 岡 朱里(KWORLD3)
ハイスピードの攻防でスタートした試合。
前の手の右フックから左ボディに繋げるサウスポーの大木。
至近距離でゴリゴリとパンチを捻じ込んだ岡。
早々にある程度見切ったか、大木が岡のパンチをかわしながら撃ち込んだ1R後半。
2Rに入ると逆に岡が大木のコンビネーションを綺麗にかわして拳を撃ち込む場面。
2R後半には岡のパンチをガードで受け止めてコンビネーションを浴びせた大木。
前半2Rは一進一退か。
抜群のタイミングでパンチを放り込んで来る岡に対し、
ジャブを深く突き刺しながら、相手の撃ち終わりにコンビネーションを浴びせる場面を作る大木。
アグレッシブも手数も圧倒的に上回る中、左ストレートのカウンターも見栄えよく刺さる。
岡のパンチを綺麗にかわす場面もどんどんと増えて行く。
時間が経てばたつほど、相手のパンチをインプットしてもらわなくなってく…
実力ある選手が感じさせる戦いぶり。
大木が主導権を握ったかに見えた3、4R。
試合後半に入ると岡が攻撃のボリュームを増やし、ヒットを奪う。
岡がタイミングをずらして左アッパーから右フック、さらに左アッパー。
飲み込もうとする岡に、大木は真っ向からの撃ち合いに挑んで押し返しにかかる。
6R後半には大木が徹底的なボディ攻めを敢行。
手数の減った岡を攻め立てたところで試合が中断。
バッティングカットでのドクターチェック…試合は続行。
再開後、大木がさらに攻め込んで行ってラウンドが終了。
カットで早めの勝負を予見してか、これまでより直線的に入るようになった大木。
岡のヒット率が上がったようにも思える。
さらに岡は大木のコンビネーションを耐えて耐えてコンビネーションでやり返す。
最終ラウンドは大木がアウトボクシングで入る。
岡は長い距離から飛んでくるパンチには頭をずらしてなかなかヒットさせない。
撃ち終わりにパンチを浴びせ、手数で下回ってもヒットで互角の戦いを見せる。
ラウンド中盤には大木が攻め込んでコンビネーションを連続でヒットさせ、
大きな大きなインパクト…そしてその後は流してポイントをピック。
ラスト10秒を撃ち合って試合を終えた。
マイジャッジは77-75で大木。
公式ジャッジは
78-74
79-73×2
3-0で大木。
マイジャッジとは大きく開いたが、自分のマイジャッジは
2つあると感じたスイングラウンドをどちらも岡に振った結果。
想定内の判定で、異論のあるものではなかった。
最終ラウンド、大きな見せ場を作るとその後のリスクを削ってポイントを抑えた試合運び。
相手のパターンに対しての対応速度…大木がリング上で才能をまき散らした。
ヘッドギアありの高校ボクシングではなかなか経験しないカット。
プロだからこそのトラブルも乗り越え、しっかりと経験値とした。
初めて大木を生で見て感じたこと、恐らく経験値で強くなる大器晩成型だと思える。
アマチュア含めた経験値が土台に強くある選手だからこそ、
経験の薄いカットの場面でバタついたようにも感じる。
今現在これだけの戦いをしながら、さらにここから進化していくように思える。
長くやることも簡単ではない。
ボクシング一本ではなかなか食べていけない世界。
リング外の事情に振り回されることもある。
カット癖、ダメージなど、辞めた方がいい理由は増えて行く。
どれだけ貰わない選手でも、頑丈さという特殊な才能がなければ、長くはやれない。
もし…彼にそれがあれば…。
今時点で世界と言うには早すぎる選手だとは思う。
ただし、10年、15年先…もしかすると、彼の肩には4色のベルトがかかっているかもしれない。
ただの世界王者ではない…世界最強の男。
そんな未来を夢見れる選手だと感じた。
そして、この試合では大差判定で敗れた岡だが…。
タイミングの巧さにずば抜けたものを感じた。
アッパーのタイミングをずらしてコンビネーションで捉えた場面など、
持ち合わせる「特別なモノ」を随所に見せていた。
岡もまた、才ある選手。
この二人の戦いが刈谷あいおいホールで行われた。
そしてそれを目撃できた。
二人のここからの道のりで、この日が生涯の自慢になる可能性もある。
そうなって欲しいと願っている。
大木 彪楽 3戦2勝(1KO)1分
岡 朱里 4戦3勝(2KO)1敗
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