この夏に組んだスケジュールは6週連続8興行の観戦。
愛知3興行、東京2興行、関西3興行…。
この日が3週目となり、ちょうど真ん中。
これまで中日本以外の観戦記はザックリと書いてきたが、
今回の遠征では実験的に他地区の興行もなるべくしっかり書こうとした結果、
時間に追われまくってしまっている。
東京遠征の観戦記を書き終わったのは、興行前日の夜。
仕事の忙しさも重なり、連日深夜になっていた。
待ちに待った中日本新人王決勝戦。
できる限りコンディションは整えたい。
自分のテンションをどう持っていくかで、見える景色は全く変わる。
翌日、7:00過ぎには目を覚まし、準備を整える。
この日は10:40 OPENの11:00 START。
開場時間の1時間前には到着するのがいつものパターン。
名古屋の端っこである我が家から刈谷には1時間半ほどかかる。
9:30到着を逆算して8:00には出発する。
小汚い靴の紐をしっかり結んで会場に向かう。
7年ほど前、仕事でこれから独立しようとしていた頃のこと。
「次、買おうと思った時、お金があるかどうか分からないので、とにかく長持ちするものが欲しいです。」
靴屋でそう言うと、「じゃあ、これ二足買って交互に履いてください」と勧められた。
言われた通りに購入し、それから7年、その靴を履き続けている。
当時、選手に激励賞を出せるようになるなんて思ってもみなかった。
三児の父になるなんて思ってもみなかった。
きっと日本ランキングに入ってくれる、きっとチャンピオンになる。
そう思った選手が、志半ばでケガやトラブルや…敗北の末に去っていく。
B級に上がると思っていなかった選手が、日本ランキングを手に入れていたりする。
サイクルの早いボクシングの勢力図は、2年もあれば大きく変動している。
2年前から考えれば、現在の世界ランキングも、日本ランキングも…
身近な中日本の勢力図でさえ、全く予想できなかったものになっている。
未来は、「思ってもみなかった」の連続だ。
今日、中日本新人王が決定する。
そして、今年の中日本代表を背負って、各地の新人王と対戦する。
年末の全日本新人王戦まで、大きな期待を背負い、
それが終われば、それぞれのボクサーズロードへ走り出していく。
そこには必ず、自分の予想を覆す物語が用意されていて、僕を虜にさせてくれる。
今年の中日本4回戦の頂点を決める戦い…そして、その先へのスタートの章。
ワクワクしないはずがない。
さて、ここでいつもの
自分はファンではあるが、熱狂的なマニア程の肥えた目を持ってはいない。
自分より凄いと思えるファンはそこらじゅうに転がっている。
そして、TVで観戦するのとは違い、1つの角度しか見れず、スロー再生もない。
レフリーで隠れたタイミングでパンチが入っても気付けないし、かなり離れた自由席での観戦。
ここに書く内容に誤りが多分に含まれることもある。
先に言い訳をしておきたいわけではなく、そういうものだと言っておきたい。
同じ試合を見ていても、違う感想を持つファンもいるわけで…。
ここに書いたことが正解ではないと…。
それだけは認識したうえで、読み進めていただきたい。
午前中から開始の興行は地方興行でも珍しいが、それでも観客席は9割ほど埋まっている。
この日の興行に登場するのは当然ながら中日本の選手ばかり。
最も遠いのは長谷 和紀(トヤマ)。次いで静岡勢…。
それでも、富山ジムと親交の深いカシミジムから英 洸貴(カシミ)が観戦に訪れ、
静岡で見かけた顔もちらほら…それぞれが応援する選手の檜舞台に、声援を送ろうと駆け付けている。
「ボクシングというコンテンツには、チケットを買うファンが少ない」
これは、他格闘技の興行を見に行くファンから、ここ最近立て続けに言われた言葉だ。
観客席を埋めているのは、ボクシングのファンではなく、選手のファンであると…。
前座をスキップしてメインだけを見て帰ったり、
目当ての試合が終わればメインを見ずに帰ったり…。
他の格闘技興行でもあるにはあるが、これほど顕著なのはボクシング以外にはない。
好カードでは客席は埋まらない。
好カードで埋まっているように見えても、それは人気選手同士がぶつかった結果であり、
それぞれの選手のファンの足し算で客席が埋まっている。
ここ最近、複数の方から類似することを言われたが…確かにそうだと思う。
これは地方興行でも当てはまっていて、強い相手を西日本や東日本…
もしくは外国から呼ぶと客席は埋まらない。
チケットを捌くのは地元選手であり、タイトルが絡まない限り、中日本vs中日本が最も客席を埋めるのだ。
この日、中日本新人王決勝戦で会場が埋まるのはある意味当然のことでもある。
そして、来月に行われる中日本・西部日本新人王対抗戦は、
この日よりグレードの高い試合であるにも関わらず、客席は今日程は埋まらないはずだ。
出場する選手の半分が、地元選手ではなく西部日本の選手となるからだ。
ただし、二部興行も噂される9月15日。
新人王戦以外の出場選手が捌くチケットがどれ程影響するか…にもよるが。
他にも、ボクシングファン希少説を裏付ける事象はいくつもあって、
その一つに、ボクシング人気が熱気を帯びるのは
カリスマ的なスター選手が現れたときのみ…という現実もある。
畑山 隆則(横浜光)や辰吉 丈一郎(大阪帝拳)のようなカリスマ選手が現れたとき、一気にボクシング熱が高まり
彼らのような選手がいなくなると、その熱は次第に消えていく。
ボクシング人気が選手の人気に依存していることを指し示す。
かたや、自分もまた、応援している選手が多過ぎるだけであって、選手のファンである。
ただし、20年ほど前にこれを覆した例外が存在する。
それがTBSで放送されたガチンコファイトクラブだった。
ヤンチャな連中を集めて、プロテストに挑ませる…その道のりを過剰目な演出も含んで放送する。
この番組は、普段現地観戦しないファンの多くをボクシングに引き込んだ。
20年経った今でも、YouTubeでその番組が流れ始めると、
出演していたボクサーたちはボクシング選手名鑑でもハイアクセス選手となる。
彼らは世界に届くような逸材ではない。
何人ものプロボクサーを産んだが、彼らが獲ったタイトルは唯一、箕浦 康仁(松田)の中日本新人王のみである。
選手の物語を多くの人の目に触れる場所にさらすだけで、
ボクシングは人々を惹きつけるコンテンツとなる。
そこに強さは大きく影響しない。
選手のファンではなく、コンテンツのファンが増えれば、地域の垣根を越えて組まれるカードが増える。
そうなれば、地方で試合枯れに苦しむ選手も減る。
現状、東京を含め、重い階級になればなるほど、対戦相手に枯渇しており、
地方になれば6回戦のカードは全階級でなかなか成立しない状況になっている。
おまけにタイやインドネシアから対戦相手を呼ぶことに対する抵抗感も増してきた。
このままでは、「関東に住んでいない」というだけで受けるハンデがさらに大きくなってしまう。
いつもより多くの観客が客席を埋める姿を見つめ、コンテンツのファンが少ない現状を強く感じる反面、
きっと自分にもやれることがある…とも強く感じる。
面白いと思うことを面白いと言うだけ。
そして、その感覚を広げていくだけ。
僕が見ているボクサーたちの物語が格段に面白いことは真実なのだから…。
それをちゃんとアウトプットさえできれば…人目の触れる場所に置くことさえできれば…。
今日も、それぞれのドラマを奏でるボクサーたちが、リングに登場する。
全力で楽しみ、全力で面白いと言ってやる…。
そんな思いでウズウズしながら試合開始を待つ。
リングに眞野リングアナの声が響く。
その選手の物語がどんな色合いになるか…
そのターニングポイントでもある中日本新人王戦。
ビッグドラマの幕を切って落とす、試合開始のゴングが鳴り響く。
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