2023/05/14 -三重・メッセウィングみえ- 第7試合、セミファイナル(中日本ボクシング観戦記) ボクシング選手名鑑ピックアップ!
【フェザー級6回戦】
中村 龍明(市野) vs 原口 秀司(リングサイド)
中村 龍明 8戦3勝(1KO)3敗2分
原口 秀司 7戦3勝(2KO)2敗2分
1R、中村の右ストレートで幕を開けた試合。
ぐっと警戒心を引き上げた長身の原口がロングレンジで中村を襲う。
流れが原口の方に行きかけた3R、中村が仕掛けていく。
強打で上回って撃ち勝った中村だったが、ラウンド後半、原口が前に出始めると
驚くほど的確にその拳が中村を襲っていく。
中村のダッキングに合わせるように飛んでくる拳。
手もなかなか止まらず、中村が攻めさせてもらえない時間が長い。
逆転の可能性を感じられる一撃は撃ち込んで行く中村だが、
原口も怯まず…主導権は原口に渡ったまま試合が進んで行く。
撃ち合いの場面が増えた最終ラウンドこそ盛り返したが、倒すには至らず。
マイジャッジは58-56で原口
公式ジャッジ
59-55
58-56 ×2
3-0 原口
前回刈谷のリングで戦った原口は一つ一つはよくとも少し連動に固さがあるようにも見えた。
長いレンジ、パンチの重さそのままに、そこが改善され、明らかに強くなってこのリングに上がっていた。
前に出る場面では中村の動きを読むように拳を飛ばして捉えていく。
前回からの1年2か月の間に3試合…それが濃いものだったことを感じさせる。
カードを見たとき、中村有利と感じたが、原口の成長がそれを覆した。
6回戦に上がって3連敗の中村。
しかし、相手はいずれも強敵ばかり。
元日本王者大場 浩平(名古屋大橋)の引退試合、現在A級で活躍する三輪 珠輝(名古屋大橋)。
そして、この日の原口。
中村に勝てる選手が弱いはずがない。
きっとさらに上で活躍するだろうと思う。
3年半勝ちがない状況、苦しいに違いないが…僕はこの選手の覚醒をまだ信じていたい。
中村が自分をどこまで信じられるか、B級初勝利の日を待っている。
【バンタム級8回戦】
濱口 人夢(市野) vs 平井 乃智(石田)
濱口 人夢 14戦6勝6敗2分
平井 乃智 9戦6勝(1KO)3敗
大振りを繰り返す濱口に恐れることなく踏み込みコツコツとパンチを繰り出す平井。
バンタムでは小さな体で、接近して勝負する。
デンプシーロールを繰り出すなど、この日も客席を沸かせる濱口。
お遊びやファンサービスではない、勝つための手段として使っている。
平井が小さく小さく何発もヒットさせる中、それに耐えながら大きな一発で派手に捉える濱口。
細かくスイッチを繰り返しながらパンチを入れる平井のテンポは小気味よく、
豪快に振り抜く濱口のパンチは胸がすく。
両者の全く異なる気持ちいいボクシングがぶつかり合う中、
6R終盤、濱口の肩が外れ、ノーガード状態に。
前ラウンドでカットした傷にドクターチェックが入り、
その際にようやく濱口の肩が入れられるとここから…。
片手になりながらも向かって来た濱口に答えんと、平井が一気に戦闘モードに突入。
小さなパンチを集めるコンビネーションから、相手を倒すための力のこもったラッシュへと変化。
タフで鳴らす濱口、この場面は耐えきる。
7Rも平井の細かいパンチに襲われながら、強打で襲う展開は変わらずだが、
肩が入ったとはいえまだ痛むか、右はなかなか出ない。
ラウンド終了後、コーナーに戻るのも必死の状態。
立って次のラウンドを迎え続けて来た濱口に初めて椅子が出る。
最終ラウンド、右を思い切り打ち抜く濱口に呼応し、
平井も同時に右を振り抜き、お互いの拳を顔面で受け止め合う。
何発も繰り返し、三重の会場は熱狂に包まれる。
記憶に残る最終ラウンドを刻み付けて、試合終了のゴング。
一人でコーナーに帰れないほどに消耗しつくした濱口。
そこまで含めて脳裏に刻み付けられた。
マイジャッジは78-76 平井
公式ジャッジ
80-72
79-73
78-76
3-0 平井
粗のあるファイターだった平井が、器用にスイッチを繰り返し、シャープに濱口を捉えた。
2年半前、4回戦ボクサーとして刈谷で戦った平井は、正真正銘のA級ボクサーとして三重のリングにやって来た。
小さな体で入り込み、被弾恐れず小さくシャープに撃ち込み続ける。
平井の圧勝ではあったが、濱口の豪快なパンチをどれだけ被弾しただろうか。
平井のファイトは全く揺るがず、恐怖心を微塵も感じさせない戦いぶり。
さらに、最終ラウンドには濱口との大砲の交換を顔面で受け止め合った。
生配信中、平井のことを「大事なネジがぶっ飛んでる」と表現した。
自画自賛したくなる表現だ…常人の域を越えた戦いぶりだった。
4年半ほどのブランクを空けて復帰後4連敗の濱口。
もはやそんなことはどうでもいい。
このボクサーに熱中し、その戦いを楽しみにしている人間がどれだけいることだろうか。
被弾が多い分、心配にはなる。
この先長く続けられる選手ではないと思う。
だからこそ、一戦一戦に重たい価値がある。
素晴らしい試合は戦った二人の共同作業で作られる。
観客席も、生配信を見た視聴者たちも熱狂させた試合。
狂った二人が創り上げた作品、まだ見ていない人には動画で見てもらいたいと強く感じる。
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