溝越 斗夢の名が売れる(コラム) ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2018/11/03

溝越 斗夢の名が売れる(コラム) ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2018/11/03
 
 

誰一人として同じボクサーはいない。
選手それぞれ、個性を持ち、性格も違い、ボクシングも違う。

当たり前だ。
 

それは解った上で、やはり異質と感じるボクサーはいる。
大きくはみ出した存在。
もちろん、ボクサーになる時点で”普通”からははみ出ていると思う。
殴り合いの世界に身をうずめる選手たちだ。

昨年末、刈谷のリングでまさに異質な男を見つける。
溝越 斗夢(緑)、豊田でアマでやっていた選手…なかなかいいらしい。
その程度の噂話の前情報。

デビュー戦のリング、両腕をダラリと下げて足で相手を捌き、強烈なカウンターを浴びせて1RKO。
プロとして初めてのリングで強烈な自己主張をして見せた。
勝利者インタビューでは「新人王はサクッと獲ります」と生意気な一言。
 

面白い奴が現れた…胸がざわつく。
 
 

4回戦のリング、負けを重ねるボクサーでも魅力的な選手はいる。
選手それぞれにドラマはある。

負けること、強い弱い…そんなことで選手のドラマは削がれない。
それは、現地に通っていないとなかなか分からない。
TVで放送されない試合のそういう部分の魅力を…
肌身で魅力を感じるにはそうする以外になかなか手段がない。

ボクシング人気自体の下降、強い選手や勝った選手ばかりが持てはやされる中、
チャンピオンを期待させる選手以外には、なかなか日の目が当たらない実情。

自分が売ったチケットの売り上げがそのままファイトマネーになる選手もいる。
しかし…それもなかなか売れないのが現状…支えているのは熱心に寄り添うファンだったりする。
一部の選手は幸運な出会いの中で、10枚…20枚…チケットを買いあげてもらい、
買い上げたファンがそのチケットを捌く。

ボクシングの底辺は、そういったファンが支えていると言っていいだろうと思う。
もちろん、彼らだけではないが、彼らはボクシングが成り立つ上での重要なキャストだ。
底辺が無ければ、その上もない。

大げさに聞こえるかもしれないが、世界戦で活躍するボクサーがTVや映像で見れるのも
彼らのような存在が支えている部分がある。
もちろん直接的ではないにせよ。
 

買い上げたチケットはタダで配ることもあれば、安く売ることもある。
代替えのチケット捌きは、基本赤字だ。
本当は全員のチケットを買いあげたいと言う人もいる。
しかし、そんなことをすれば際限がなくなる。
やはり手の届く範囲になるのが実情。

自然にチケットが売れれば、こんなことをする必要はない。
世間にこの面白い世界を知ってもらえれば、もっともっとチケットなんて売れるハズなのに…。
自分が愛する世界だからこそ、そう信じ、どこかに悔しさを抱えながら、
自分の好きな選手のチケットを捌く。

金持ちの酔狂に思えるかもしれない。
実際そうなのかもしれない。
でも、自分の生活を切り崩している人も存在する。
そして何より、金持ちも貧乏人も、自分の稼いだ金は大事だ。

4回戦に日の目を…彼らの思いは切実だ。
 

「何かを変えてくれるかもしれない」

僕の目には溝越はそんなボクサーに映った。
 
 

年が明け、新人王戦のカードが発表される。
溝越の初戦の相手は…英 洸貴(カシミ)

「こりゃヤバいかも…。」
 

この頃、まだその戦いぶりを見たことがなかった英だが…その実績は凄まじかった。
U-15を3度制した…今年の中日本新人王、大注目の選手。

実際、リングに上がった英は…飛び抜けていた。
まだまだ、粗さを抱えながらだったが、彼の目線の配り方、数cmで避けて撃ち返す感覚と反応の良さ。
数多くの選手が持ち合わせていないものを沢山持ち合わせている。

しかし、そんな英に大砲の右をカウンターで撃ち込み、英の顔を跳ね上げる溝越。
ポテンシャルで言えば圧倒的に英だろうと思う。
しかし、二人が拳を交えた結果はドロー。

優勢点で英が次戦にコマを進めたモノの、溝越は自分が特別な選手であることをリングの上で示した。
ここまでやれる選手だったなんて…心臓がバクバクする。
自分の予想やボクシング感をボクサーが上回る瞬間…これほど心地いい瞬間はない。
 

次戦、試合前から溝越の減量苦の噂が耳に入る。
今回は…ヤバいらしい。

リミットオーバーも心配された計量をなんとかクリアした溝越。
…危ない状況なら、計量超過してしまった方が良かったのではないかとさえ思った。

ボクシングは危険なスポーツだ。
リングで選手生命を失うくらいなら、計量超過で非難を浴びた方がマシだと思った。
 

デビュー3戦目。
この時点、既に後援会が出来上がっていた溝越。
入場の花道には幟旗が立つ。
当たり前だが、幟旗は自然に湧き出たりしない。
これを、溝越の為に作ってやった人が存在する。

溝越はアマ経験はあっても、決してアマエリートではない。
無名でデビューした4回戦…戦ったラウンドはわずかに5R。
戦績:1勝1分の選手に夢を見るファンがいる。

溝越はたったの15分でリングの外に夢を魅せた。
溝越に送られる声援と幟旗はそれを証明しているように思えた。
 

リングに上がった溝越にいつものキレはない。
鈍い…あまりにも鈍い…2Rには早くも足が止まる。

負けた…そう思ってホッとした。
過酷な減量が美談になっちゃいけない…この日、僕はどこかで溝越が負けることを祈っていた。
 

しかし、次のシーンだった。
完全に足の止まった溝越に襲い掛かった相手のパンチに…ことごとくカウンターを合わせる溝越。
相手の顔面はバンバン跳ね上がり…そして、その体はリングに沈んだ。

あり得ない…。
驚きで頭が真っ白になる。
何が起こったか、その場で整理できない。
 

「持っている」という安易な言葉くらいしか当てはめる言葉が出てこなかった。
またもや、溝越は僕のボクシング感をひっくり返した。
 

世界を期待させるような飛び抜けた実力があるとは思わない。
そういう選手ではない…しかし、こちらの感覚をことごとくひっくり返す。

「何をしでかすかわからない」

そんな感覚ばかりが増大する。
…凄い奴が出てきた。
 
 

しかし、観衆が1000人に満たない地方興行の前座のリングでの話。
一般的な知名度は皆無…こんなに面白い奴がいる…なのに…。
面白いボクサーが現れると必ず抱く感覚。
 
 

そんなフラストレーションさえ、溝越はひっくり返す。
亀田三兄弟の従兄弟として注目を集める、亀田 京之介(協栄)との対戦が決定。

溝越が何かしたわけではない。
たまたま、当初予定された京之介の対戦相手が怪我で試合が流れ、代役として話が来ただけの話。
12月に既に試合が決まっていた溝越だったが…このオファーを受け入れた。

まさに「持っている」。
 
 

Twitter上では京之介の挑発に、
「おもろい試合しましょや!かもん」
「デカいことは誰でも言える。俺をリングで倒して証明しろ」
…と二言返し、これが舌戦として大きく取り上げられている。

罵り合ったなんて言われたりしているが、それは少し違うように思う。
現在のところ、溝越から京之介を侮辱するような言葉は出ていない。
ただ…そんなことはどうだっていい。
 

2勝1分の選手にスポットが当たろうとしている。
それはもちろん、京之介の知名度という力を借りてのことだが…。

目立ってくれ…僕が…僕らが…心底面白いと思っている4回戦の世界観や魅力に日の目が当たってくれる。
これまで抱えたフラストレーションが晴らされる…そんなチャンスなんだ。
 
 

試合予想は…7:3で京之介だと思っている。
なんだかんだ、京之介はボクサーとして強い選手だと思う。
フレームは大きく、ハンドスピードもある。
試合への入り方は抜群にいい。

ただ、チャンスやピンチの大事な局面で雑になっていく脆さも併せ持つ。
そこに付け入る隙は充分にあると感じることと…
溝越がこれまで、僕の感覚を覆し続けたボクサーであるということ。

そこを踏まえたとき…本気の五分に感じる勝負だと思っている。
勝負としても純粋に楽しみにできる試合。
 
 

今日、21:00からabemaTVでは煽り番組が放送される様子。
この試合、どうか注目を集めて欲しい。

楽しみで楽しみで仕方ないカード。
溝越という男の面白さが、伝わってくれれば嬉しい。
 

そして、溝越と対峙してくれる京之介、4回戦をしっかり扱ってくれるAbemaTVには感謝の思いしかない。
 

目立ってくれ、人を惹き付けてくれ。
溝越はきっと、そういう意味のポテンシャルを持ち合わせているはずだ。

わずか15分でファンに夢を魅せる男。
彼の一挙手一投足が、気になって仕方ない。
 
 
 

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