2019/6/9 -花博記念ホール 大阪天神興行Ⅲ- (中日本ボクシング観戦記番外編) ボクシング選手名鑑ピックアップ！
【WBFアジア太平洋フライ級タイトルマッチ】
■フライ級10回戦
花田 歩夢(フリー) vs 橋屋 諒(ウィング)
花田 歩夢 4戦4勝(3KO)
橋屋 諒 4戦3勝(2KO)1敗
試合開始のゴングと共に力強いジャブを撃ち込んでいく花田。
よく伸び、そして力強い…距離を詰めると突き刺すボディも強烈。
さらに右のオーバーハンドで橋屋のテンプルを捉える。
ラウンド中盤、右ストレートでやり返した橋屋だったが、
ラウンド終盤には橋屋の右に合わせた花田の右ストレートが続々とカウンターで決まる。
一発当たると力強く次々に捉えていく花田……一方的な3分間が終了する。
2R、橋屋がボディに右ストレートを突き刺すも、
左ボディから右ストレート、さらにもう一つ左ボディを撃ち込んだ花田。
…一つ一つ重たく連続で捉えていく。
そんな中、橋屋はダメージを表に出さず、
花田のガードの隙間に右ストレートをねじ込んで見せる。
3R、花田のパンチが見えて来たか、橋屋が強烈なジャブをガードで受け止めながら
いきなり右から入るなど駆け引き勝ちする場面を作り始める。
しかし、花田は左ボディを突き刺すと、重たいパンチをまとめる。
有効打をコツコツと奪った橋屋…しかし、それも花田が一気にパンチをまとめることで上回る。
ラウンド終盤、撃ち合いになると、橋屋がボディに耐えながら撃ち勝ってみせる。
4R、お互いのパンチをガードで受け止め合う中、中盤、
花田が強烈にボディから左フックで強烈に橋屋を捉えると、ラッシュを仕掛ける。
花田の怒涛の攻めを、ガード、スリッピングアウェイ…さらに足を使って被弾を最小限に抑える橋屋。
しかし…ボディまでは防ぎきれず…終盤にはコーナーに詰められ、何度もボディをえぐられる。
相撃ち覚悟の左フックのカウンターを突き刺して花田を止めた橋屋だが…いつまで持つか。
反面、花田が攻め続けたこのラウンド…こちらも失速する要素はある。
5R、橋屋が足を使いながらリングをまわるが、ボディのダメージが蓄積したか…
それともこのラウンドを休みにかかったか…橋屋の手数が出なくなる。
ラウンド終盤、左フックで連続で捉える場面をつくるものの、
強烈なアッパーを突き上げられるなど、劣勢の展開でこのラウンドを終える。
6R、お互いしっかり守り合う中、試合は一旦膠着。
しかし、花田の右ストレートが橋屋を突き刺すと、
橋屋はトリッキーに動きながら、小さく鋭く右アッパーを突き刺す。
7Rは花田が一方的に橋屋を攻め続けたラウンド。
橋屋をロープ際で一気に攻め立て、ストップさえ予感させるほどの花田の怒涛の攻め。
橋屋は足を使いながらガードを固め、ときにはスリッピングアウェイも駆使し
なんとか被弾を抑えてこのラウンドを乗り切る。
勝負をかけたようにも見えた花田…このラウンドのKOチャンスを逸し…。
最後まで持つのか…そんな不安がよぎる。
8R、花田の手数が一気に減る。
ついに花田を撃ち疲れが襲う…反面、橋屋もボディで削られている。
試合が落ち着いて駆け引き勝負となれば、橋屋が上回る。
オーソドックス同士で向かい合う中、橋屋はいきなり右から入るなど、花田からヒットを奪う。
花田は入ってくる橋屋に対して、左ボディで迎え撃つ形。
ラウンド終盤には左ボディからの左フックで橋屋をグラつかせる。
9R、疲弊する中、無駄攻めせず、一発当たった場面で一気に攻めて連続で捉える花田。
橋屋がコツコツとヒットを上げても、パンチをまとめて山場を作ることで印象は花田に傾く。
これが本当にプロ5戦目の選手だろうか…ラウンドの要所をしっかり押さえる。
10R、お互いに疲弊した中、前に進む橋屋と下がりながら応戦する花田。
ベルトまであとわずかの花田と、最後の可能性にかける橋屋
会場は花田の応援と橋屋の応援で大声援に包まれる中、
二人が遮二無二に撃ち合ったラスト3分。
会場はこの日最高の熱気に包まれたまま試合終了のゴング。
マイジャッジ 97-93 花田
公式ジャッジ
99-93
97-94
98-93
3-0 勝者…
WBFアジアパシフィック新チャンピオン
花田 歩夢
1Rが終わった時点、花田がいつ倒すか…
そんな風にも見えるほど、向かい合う二人に力の差を感じた。
しかし、3Rには花田の強烈なパンチに慣れ、そしてあの手この手で切り崩しにかかった橋屋。
パンチ力もフィジカルも…あらゆるスペックで上を行っていた花田。
並みのボクサーなら、どこかで倒されるか、フルマークか…。
しかし、橋屋は強烈なボディを何度も浴びながらも失速を最小限にとどめ、
強烈なラッシュも丁寧なガードと豊かなディフェンステクニックで生き延び…
オーソドックス同時の対戦で右から入るなど、駆け引きで競り勝つ場面を作り…
最終的には花田の撃ち疲れを誘い、3つのラウンドを奪った。
強さを全面にまとうような選手ではない。
しかし、その曲者っぷりにどっぷりと魅了されてしまった。
もし橋屋が後楽園ホールの舞台に立てば、曲者名ランカーとしてコアなファンが
いつまでも話題に上げるような選手になるのだろうと感じる。
しかし…彼の存在は国内では大阪天神興行を知る人間しか知らない。
まさに掘り出し物、後楽園ホールに足しげく通うマニアも
ボクシング雑誌の記者も知らない魅力的なボクサーを知る。
「俺は橋屋を知っている」
痛快ここに極まり！
そして、そんな橋屋を結果的には圧倒してベルトを巻いた形の花田。
これで17歳…初の10回戦で後半には失速したものの、
疲弊した中で、必ず毎ラウンドパンチを集める場面を作ってポイントをピックアップした。
休むラウンド、捨てるラウンドもしっかりと棲み分けて、30分間の試合を戦い切った。
持ち合わせる物も、そして試合を組み立てるクレバーさもある。
メキシコを主戦場とする花田が、次に日本のリングに立つ試合…
どんな姿になっているのか楽しみで仕方がない。
「17歳のプロボクサー」としては、現時点で花田より強いボクサーを僕は知らない。
大興奮のメインイベントが終わり、帰路につく。
全て判定決着、興行開始も遅れたが、4試合のスモール興行だったこの日の終了時間は20:30頃。
これなら新幹線より少し安い近鉄特急で帰れそうだ。
JBC管轄、ABC管轄…どちらにも魅力がある。
見る側としての勝手な話ではあるが、とどのつまりは面白いボクシングが見れるかどうか。
社会正義の為にボクシングを見ているわけではない。
今まで好きで好きでたまらなかったJBC管轄のボクシングが面白いという思いは大前提にして…
ムエタイ戦士が本気のボクシングのリングに飛び込んできたり。
…かと思えば、JBC興行と何ら変わらないような、
デビュー戦同士の思いの丈のぶつけ合いのような試合があったり。
そして、権威などという退屈な事をほっぽらかして
WBFアジアパシフィックのベルトを求めて熱戦を繰り広げた二人。
ABC興行の面白さも負けず劣らず、上回る部分も沢山ある。
WBFだから、JBC管轄ではないから、権威がうんぬん…
そんなゴミ糞のような理由でこんなに面白い世界を切り捨てる気にはなれない。
「面白い試合を見た」
その満足感でいっぱいになりながら、混み合う近鉄特急に乗り込む。
そこにあるのは紛れもないプロボクシング。
数多くのボクシングマニアが知らない試合を、僕は知っている。
少しだけ優越感を感じる中、大阪が遠ざかって行った。
【カテゴリ別】
2019年中日本ボクシング観戦記一覧に戻る
中日本ボクシング観戦記一覧一覧に戻る
カテゴリ別記事一覧に戻る
【日付別】
【記事一覧】2019年6月に戻る
【記事一覧】2019年に戻る
【記事一覧】に戻る
各選手の戦績はこちら。
ボクシング選手名鑑
2019/6/9 -花博記念ホール 大阪天神興行Ⅲ- (中日本ボクシング観戦記番外編) ボクシング選手名鑑ピックアップ！
中日本ボクシング観戦記
コメント