2019/03/16 -岐阜・岐阜メモリアルセンターで愛ドーム- 4試合目、5試合目(中日本ボクシング観戦記) ボクシング選手名鑑ピックアップ!
【56.0kg契約8回戦】
ピチェート・チアナーワー(タイ) vs 水野 拓哉(松田)
OPBF東洋太平洋スーパーバンタム級5位/WBOアジア太平洋スーパーバンタム級8位
日本スーパーバンタム級13位
水野 拓哉 17戦15勝(13KO)1敗1分
ピチェート・チアナーワー 20戦10勝(4KO)10敗
試合前に見たときのタイ人の選手名はアルティド・バムルンガウエア。
情報が出て来ず、どんな選手かはわからないままでいた。
しかし、ゴングが鳴ってすぐに選手に見覚えがあることに気付く…。
ピチェート・チアナーワー…昨年、静岡で畑中 建人(畑中)と戦った選手だ。
主導権がどちらともつかないうちに、ヒッティングによるカットでTKO負けを喫した選手。
その力ははっきりとは見れていない。
身長差では頭一つ分ほどあるが、それ相応に増量している様子。
昨年に比べると、ずんぐりむっくりしている。
前回と同じく思い切り振るうピチェート。
水野は被弾しても躊躇せずに距離を詰めると、強烈な左ボディを集めていく。
ラウンド中盤には、ピチェートがバランスを崩したところに、
その左ボディを突き刺してなぎ倒すようにダウン。
立ち上がったピチェート…劣勢の状況だが、相変わらず思い切り振るい
逆転のチャンスを見出そうとする。
2R、水野の左ボディからの右ストレートが炸裂。
“強い”水野のKOパターンで強烈なダウンを奪う。
立ち上がったピチェートに対し、仕留めにかかる水野。
無防備に攻め入って、強烈な被弾を浴びるも、おかまいなしに左ボディを突き刺し、
ピチェートは大の字にダウン…そのまま10カウントとなった。
これまで、ゴングが聞こえない程の声援を送った水野の大応援団の声は、この日は聞こえなかった。
新人王戦で涙を飲んだ後、数々の強烈なKOシーンを演出し、
中日本では田中 恒成(畑中)の次にチケットを売る人気者となった水野。
そのきっかけは、新人王戦の次の試合となった、市村 蓮司(RK蒲田)との試合だったように思う。
強烈なボディから右ストレートで顔面を撃ち抜く王道の倒しっぷり…。
この日の倒し方は、あの日の水野が重なるようだった。
リスタートを切った水野…崩れてしまったものはまた創り直せばいい。
あの大声援が響き渡る水野の試合を、また見れる日を待っていたいと思う。
早まった試合進行に、ここで予備カードが挟まれる。
■予備カード
【バンタム級4回戦】
大森 雄貴(三津山) vs 木村 天汰郎(駿河男児)
大森 雄貴 6戦3勝(2KO)3敗
木村 天汰郎 1戦1勝
ゴングとともにジャブを刺し合う二人。
緊張感のある中で、距離が詰まったところ、木村の左フックが大森を捉える。
木村はお互いにパンチが届かない距離から、スッと入ってパンチを当てると射程外へ…。
前後の距離で、全てのパンチを外していく。
大森がパンチが撃つ頃にはそこにはおらず。
まずは木村が完璧な立ち上がりを見せる。
2R、序盤にはいきなり右ストレートから入った木村。
自由自在に出入りを繰り返す木村…大森は全く捕まえきれない。
自分から行くには遠過ぎる…入って来た木村に反応できず、打ち終わりを狙ってもそこにはいない。
大森が捉えたかと思ったタイミングでも、今度は内側に入ってパンチを走らせる距離を潰してしまう木村。
3R、展開は変わらず。
大森の歯がゆさが伝わってくるよう…。
届かない距離で空を切り続ける大森の拳。
決して試合は投げない。
ようやく、木村の入りに合わせて右の打ち下ろしを当てた大森だったが後続は続かず。
4R、また…同じ3分間が繰り返される。
大森はいったい何をどうすればいいのだろう。
12分間、木村が大森を空転させ続けた試合が終了する。
マイジャッジ、40-36 木村。
40-36 二名
40-37 一名
公式ジャッジも3-0で木村。
強いとは聞いていたが…木村、ここまでとは。
大森は戦績イーブンの4回戦ボクサーだが…弱い相手に負けた黒星は一つもない。
中日本新人王決勝に2年連続で出場し、昨年は肩書を勝ち取っている。
これまで、数々のドラマを刻んて来た大森の拳が…わずか2戦目の木村に全く届かなかった。
「世界王者を創る」
駿河男児ジムの本気度は凄まじいほどに感じている。
そんな駿河男児が村地 翼(駿河男児)に続く有望ホープを送り込んできた。
5/19には木村は冨田 風弥(伊豆)と中日本バンタム級新人王準決勝を争う。
トーナメント発表時点で、木村の試合を見たことがなかったため、優勝候補に推すことはできなかったが…。
順当に行けば、全日本を獲って来るべき素材と感じる。
ただし…一筋縄ではいかないのがトーナメント。
「順当に行けば」の注釈は、大きな意味を持つ。
噂だけで聞いていた、”要注目”。
噂が正しかったことを思い知らされる。
どんな時期も、格別の存在はいる。
この日、木村が空転させた相手が大森だったからこそ、この試合の衝撃はすさまじかった。
大森ほどの選手が負け越し戦績となったこの日…内容は絶望的にも見えた。
シビアな戦歴の中で、勝ちと負けの双方にドラマを産み出してきた大森に叩き付けられた現実。
別格の存在と対峙してしまった大森が、ここからどう立ち上がるのか。
この選手が歩むボクサーズロードの輝きは、いまだ衰えぬまま。
次のストーリーには、さらに大きな意味が産まれると感じる。
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