トミナガ シンペイ近況(コラム) ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2018/10/21

トミナガ シンペイ近況(コラム) ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2018/10/21
 
 

近況と言いつつ、先月の話。
トミナガ シンペイ(中日)と会った。
 

今年の3月、浅原 あきひろ(駿河男児)とのリマッチに敗れて以降、試合が組まれていない。

実は淺原戦の直前、右拳の骨折が発覚。
そのまま試合に挑んだトミナガは、拳にメスを入れ、現在リハビリ中だ。
 

痛みが出たのは1月。
病院で診察を受け、レントゲンまで撮ったがこのときには怪我は発覚せず。
そのまま練習に励んでいた。

試合まで数週間の時点で痛みが引かず、別の病院を受診。
そこでようやく骨折が発覚した。
「なんでこんなになるまで放っておいたんだ!」

医師の怒号が響くほど悪化していたが…
「そんなこと言われても…ちゃんと病院行ったのに…」

その時のトミナガの率直な心境。
 

直前に迫った試合をキャンセルするつもりはなく、そのままリングに上がる。
右拳をほとんど使えないまま、トミナガは敗北した。
 

試合後、半ベソをかきながら僕のところに来たトミナガは…
「また、次頑張れ」の僕の言葉に…。

「次と言うか…もう…」
そう言ったところで、その先に続く言葉を僕は遮り、トミナガはその場を離れた。
 

しばらく時間が経った。
悩んでいたそうだ。
最終的には、世話になっている接骨院の先生に背中を押してもらえた。
「やるだけやったならいいが、今、辞めたら後悔する」
 

例え手術をしても、ボクシングを続けられる保証はない。
そう言われたが、可能性に賭けて手術室に入った。

術後、「もう一度、ボクシングができるようになるはずです」との言葉。
手術は大成功だった。

本人にとって嬉しい報告の反面、両親の顔は曇ったという。
両親は、我が子の勘当を考えるほど、息子がリングに上がることに反対していた。
 

幼い頃から強さに興味があったという。
高校時代から柔道を始め、大学でも柔道を続けた。
大学3年生になり、単位にも余裕が生まれたことで興味本位でボクシングを始める。

近くにプロ加盟ジムはなく、アマチュアの試合に数試合出場している。
大学卒業後は刑務官の道へ…。
研修で訪れたのが名古屋だった。

数か月の滞在中、近くのジムを探して見つけたのが中日ジム。
研修が終わるまでの間、このジムで汗を流し…
「プロになるならこのジム」だと思った。

地元に戻り、数年仕事を続けたあと、諸事情あって退職。
それをきっかけに…プロボクサーへの道を決意する。
ボクシングの為に名古屋へ居を移し、中日ジムへ通い始める。

しばらくして、「プロにならないか?」と声をかけられ、「そのつもりです」と返答した。
 

2013年12月。
24歳でデビュー戦のリングを踏む。
結果は4RTKOで敗北。

この時失った前歯…差し歯など入れることなく、今もそこには空洞ができている。
 

デビュー2戦目、ボクシングモバイルの勝利者予想では20票の投票があり、
その20票全てが相手の勝利を予想。
トミナガ勝利予想は0%だった。

試合が始まると、ただただ圧倒される。
完璧に1Rを奪われ、2R…ボコボコにされながら…
「そう言えば、マイク・タイソン(米)がこんなのやってたな…」

そんな思い付きで出した左フック。
「当たった…」
そう思った瞬間、相手が倒れていた。

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!って感じでした」
その時を回想しながらトミナガがはにかむ。

勝利の瞬間、喜びと驚きがごちゃ混ぜになった結果、
ニュートラルコーナーで雄叫びをあげていたという。

今やトミナガの代名詞とも言える雄叫びはここから産まれた。
 

2014年の中日本新人王はエントリー1名で中日本・西部日本ウェルター級新人王対抗戦に進出。
14連続KO勝利の記録を作ることとなる別府 優樹(久留米櫛間)を相手に1RTKOで敗北。

翌年は中日本新人王決勝で敗北。
1年空けて、2016年の中日本新人王は決勝で高橋 ルガー 大毅(駿河男児)
逆転のTKOで飾って2度目の中日本新人王獲得となった。

リベンジの色合いも濃かった2度目の中日本・西部日本ウェルター級新人王対抗戦。
チェンジ 濱島(関門JAPAN)に敗れ、西軍代表に進むことは叶わなかった。

次戦、初の6回戦を山口 鉄也(蟹江)と戦ったトミナガ。
熱戦の末、初めての判定勝利を飾る。

しばらくして、自分の名前をインターネットで見つける。
ページを開くと、そこに踊る「ブサイク」の文字。

「結構なご挨拶だな」が最初の感想。
僕の書いた記事だった。
 

大振りはしちゃいけない…そんなボクシングの常識を覆すように大振りしかしないようなボクサー。
大きなモーションで撃つ右フックは、出すときに「そーれ!」なんて声がかけれてしまいそう。
しかし、その威力でガードごと相手のバランスを崩し、そこにまた渾身の一撃を放り込む。

トミナガの常識外れなスタイルに僕はトリコになった。
ことあるごとにトミナガ!トミナガ!と口にするようになった。

「ボクシングも顔もブサイク!憎きイケメンをぶっ倒せ!」…と。
 

その後、浅原 あきひろとの6回戦に勝利してB級昇格の権利を手に入れ、
冒頭の浅原 あきひろとのリマッチに敗北…現在に至っている。
 

拳の手術は成功し、治ればリング復帰できる予定だが…
治りが遅れているらしい。

この間、淺原とのラバーマッチや、豪州での試合の話などがあったという。
しかし、本人は怪我の治療に集中している。
「戦いたい相手は…?」
なんて言う質問に、全く興味を示さず
「まずは怪我を…」
と返答していたトミナガ。
 
 

「相応しい結果を残すので、その時はWINに載せてください。
 仲がいいからとかで載せるのはやめてくださいね。」

そんな言葉に、「ランカーになってよ!」と返答した。
 

雨が降っていた夜。
「有名になりたいんです」

そう言っていた男は、別れ際…
こちらがドン引きするほどの下ネタをかまして改札に消えていった。
 
 
 

真面目で武骨で、目立ちたがり屋の自分大好きな屈強なプロボクサー。
不思議な男だった。
 

彼がリングに上がろうとする限り、僕は彼に夢中だ。
 
 

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