2017/8/6 刈谷あいおいホール-セミファイナル、ファイナル(中日本ボクシング観戦記) ボクシング選手名鑑ピックアップ!

2017/8/6 刈谷あいおいホール-セミファイナル、ファイナル(中日本ボクシング観戦記) ボクシング選手名鑑ピックアップ!

 

 

【56.2kg契約8回戦】
アドゥンデット・サイトーンジム(タイ) vs 五十嵐 嵩視(トコナメ)
 

・アドゥンデット・サイトーンジム 16戦10勝(5KO)6敗
・五十嵐 嵩視 13戦10勝(3KO)3敗
 

ランカー挑戦を待ちわびる五十嵐。
体に刻み込んだようなコンビネーションを武器にする強豪。
ホームながら青コーナーから登場。

対してアドゥンデット・サイトーンジム。
BoxRecには1戦のみしか掲載がない。
 
 

1R開始から…アドゥンデットはやる気満々。
バランスを崩した五十嵐に襲い掛かるなど、何が何でもの姿勢。
おぉ…と思っていると、五十嵐の右に合わせて、
アドゥンデットが左フックを振り抜き、五十嵐のアゴを捉える。

タイ人と聞けば無気力選手を思い浮かべるファンも多いだろう…。
一抹の不安があったが、アドゥンデットの必死さに観戦している側としてもスイッチが入る。
 

2R、リズムも独特、パンチは伸びる…見るからにやりにくそうな相手。
展開は静かな形に…そんな中、アドゥンデットの飛び込みに右フックを合わせた五十嵐。
ぐらついたアドゥンデットはクリンチに逃れこの窮地を逃れる。
 

3R、相討ち気味ながら、またも強烈な右を合わせた五十嵐。
そのまま左ボディを叩き込むと、かなり効いたかひたすらクリンチに逃げるアドゥンデット。

このラウンド、バッティングで五十嵐が大量に出血。
試合が一旦中断…ここで止まれば負傷引分。
ドクターチェックの上試合は再開され、ほっと胸をなでおろす。
 

4R、バッティングの傷もあってか、一気に仕留めようとする五十嵐。
しかし、アドゥンデットは必死にクリンチに逃れ続ける。
そんな中でも巧く隙間を作ってパンチを撃ち込む五十嵐。
こんな展開でも、五十嵐は強い。

しかし…一旦は止まったかに見えた出血は、ラウンド終了後、おびただしい量に。
 

5R、ここにきてようやく五十嵐の真骨頂。
猛然とコンビネーションで攻めて出る。
ガードの上からでもお構いなしにパンチを叩き
上下に散らして攻め込むと、ボディのダメージが色濃いアドゥンデットは手が出なくなり…。

レフリーが抱きかかえるようにしてストップ。
その後、コーナーに座らされたアドゥンデットはボディがかなり効いていたようで
腹を抱えて悶絶している…必死に我慢していたのだろう。
 
 

TKOタイムは5R 2:29
 
 

曲者とも思える相手に、トラブルを抱えながらきっちり勝った五十嵐を褒めたいが…。
負ってしまった傷は深いように思える。

年内にランカー挑戦を…そうコメントしていた五十嵐だが、
マブタの傷が癖になり、選手寿命を縮める選手も多い。
ここは焦らずにじっくりと傷が癒えるのを待ってほしい。

仕方ないことだけど…怪我については残念。
少し落ち込んでしまった。
ただ…期間が開くと言うことはレベルアップのチャンス。

五十嵐にとってもモチベーションを落としている暇などないはずである。
戻って来た時には、激戦の数々が待っていると信じたい。
熾烈なランク争いに飛び込む準備を入念に整えてほしい。

ボクシングにおいてチャンスは平等ではない。
一回こっきりかもしれない。
そもそも巡ってこない選手だっている。

だからこそ…確実につかみ取る必要があるのだから。
 
 
 

【フライ級8回戦】
戸谷 彰宏(蟹江) vs 矢島 大樹(松田)

・戸谷 彰宏(蟹江) 9戦7勝(1KO)2敗 日本ライトフライ級10位
・矢島 大樹(松田) 15戦7勝(3KO)5敗3分

昨年、ダークホースから全日本新人王を獲得した戸谷。
対するはデビュー4連敗から立ち上がり、直近のアウェイの連戦で2勝2分を記録している矢島。
 

実は戸谷の2敗のうち1敗が矢島。
戦績だけで捨て置かれてしまいそうだが、強豪と言っていい矢島と戦う意味…。
それはリベンジ以外の何物でもないだろう。
 

1R、ファーストコンタクトは左フックの相討ち。
単発で終わった矢島に対し、ダブルをボディに反した戸谷。
スピードに乗って出入りする戸谷に対し、詰めていく矢島。
ジャブの応酬が主だが、右ストレートを相討ちする場面もあり、なかなかスリリング。
 

2R、戸谷のパンチの合間を縫ってワンツーを叩き込む矢島、戸谷の顔面を跳ね上げるシーンも作り出す。
しかし、矢島の踏み込み際を戸谷が強烈な右ストレートで捉えるシーンも頻発。
一進一退…ジャッジの難しいラウンドになる。
 

3R、前に出始めた戸谷。
体全身を使って体ごと押し込むように押し込んだ矢島。
しかし、密着した状態からうまく距離をつくって右を叩きつけた戸谷。
この辺りにも強さを見せる。
 

4R、相変わらず密着を求める矢島。
このラウンド序盤、強烈なボディで戸谷の体をくの字にした矢島。
相変わらず矢島の踏み込み際を戸谷が強烈な右ストレートで捉えるシーンが目立つが。
徐々に展開が変わり始めていく。
 

5R、距離を作りたがる戸谷と、体ごと押し込んでいく矢島。
矢島が接近したところで、右を合わせ、ジャブで止めようとするが矢島の突進は止まらない。
強引な矢島の突進に両者の頭がぶつかるシーンも頻発。
レオ・ガメス(ベネズエラ)vsチェ・ヒヨン(韓)を彷彿とさせる展開。
 

かつて全盛を誇ったコリアンファイターは、猛烈な突進と手数で南米のテクニシャンを葬りまくった時期がある。
1980年代~90年代にかけて…当時の強いコリアンファイトを彷彿とさせる矢島の突進。
技術で及ばない相手の技術を潰してしまう…何が何でもの根性ファイト。
 

6Rも展開は変わらず。
もみくちゃのような戦い…面白くない試合と形容される一つの形だが…。
ボクシングがガチンコ勝負だからこうなる…つまり、これがボクシングのリアリティだと思える。
勝ちたい思いが交錯したとき、ボクシングはエンターテイメントの殻を脱ぎ去り、
勝利にすがりつくドラマを生み出していく。
 

7R、戸谷がカットし、ドクターチェックが入る…試合は続行。
足を使って中間距離を維持した戸谷が的確にパンチを集めるも…。
矢島の圧力は完全に持て余しており…ジャッジがどちらに流れるか際どい状態。
 

8R、開始直後から2度目のドクターチェック。
ここも続行…ひたすらに体を預けて手を出し続ける矢島。
疲弊した戸谷は、矢島を遠ざけることができず…。
揉み合いのようなファイトの中で最終ラウンドのゴング。
 
 

78-74 矢島
75-77 戸谷
 
 
 

78-74…
 
 

勝者:矢島
 
 

勝利の瞬間、崩れ落ちて号泣する矢島。
「デビュー4連敗しても、日本ランカーに勝てるってことを証明できました。」

…そう、熱くコメントした矢島。
これがボクシングのドラマ。
 
 

メインイベンターながら、Tシャツ姿でリングイン。
ホープとして売り出されたわけではなく、メインイベンターとしては歓声の小さかった戸谷。
地味とも思えてしまう戸谷が、同世代のトップを走る…これも痛快な状況だったが…。
 

後楽園ホールでアップセットを起こし、凱旋した戸谷は、
過去に苦戦した冨田 真(HEIWA)を下し、さらに過去に負けた矢島と戦った。
相手は無名のノーランカーだが…決して守りに入るわけではなく、勝つか負けるかのカードを戦った。

名前がなく…しかし強い。
そんな相手を選んできた戸谷だっただけに…。
ここでの敗戦に胸が痛む。
 

マイジャッジは75-77 戸谷。
有効打では矢島を上回っていたと思う。
エンターテイメント性とは間逆のリアリティを突き進んだ男、戸谷。
復活と再度のランク入りを期待したい。
 

この勝利で矢島はランク入りするだろう。
戦績だけでは判別がつかない…中身を覗いてみてようやく強豪と認知される。
そんな無名の男がその名を浮上させた。

ここから…どういう道を歩むのか。
後楽園から戸谷がもぎ取ってきたランクを奪い去った形。
そのランクを、易々と手放すことは許されない。

勝ちにすがり付いていって欲しいと、心から願う。
 
 
 

メインイベントの終了後、中日本新人王の表彰式が行われた。
我らが中日本を代表する選手たち…次回まとめて記載する予定。
 

不戦勝や、エントリー1名の選手たちと、今日勝ち抜いた選手たちの温度差はあるものの…。

全員勝ってくれれば嬉しい…だけど、そうは甘くはない。
ここから勝ち抜いて全日本新人王を獲得できるのがいったい何人いるだろうか。
東も西も…強豪の名前が耳に入って来る。
 

「おめでとう」より、これから始まる、ワンランク上の賞レースに挑む男たちにゾクゾクする感覚が強い。
いくつか写真を撮らせてもらい、スッと会場を後にした。
 
 

帰り道、駅のトイレで嘔吐する。
体調悪いの…忘れてた。
 

でも…アドゥンデットの試合後の悶絶っぷりを思えば…。
…とか言いつつ、辛いものは辛い。
なんとななんないものか…。
 

ヒゲでもしゃもしゃになった口の周りにからみついたゲロ。
鏡に映った自分のあまりの汚さにドン引きする。
慌てて洗い流して帰宅。
 

横関会長丸木会長みたいなワイルド感が出ればいいんだけど。
ただ小汚いだけのおっさんは、帰宅後、子育てに追われ、未だにヒゲが逸れていない。
 
 

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