2018/11/25 -刈谷あいおいホール- 第5試合、セミファイナル(中日本ボクシング観戦記) ボクシング選手名鑑ピックアップ!
【フェザー級4回戦】
横川 聡也(堺東ミツキ) vs 五十嵐 嵩視(トコナメ)
横川 聡也 22戦9勝(8KO)11敗2分
五十嵐 嵩視 16戦13勝(5KO)3敗 OPBF東洋太平洋フェザー級13位
久々に刈谷のリングに登場となった五十嵐。
前回は1年以上前となる。
その間に2勝を挙げ、現在6連勝中。
OPBF東洋太平洋のランキングは上がっていないが、久しぶりに刈谷で見る五十嵐の姿は凱旋にも感じた。
地元の大声援に送られて入場する五十嵐。
1年ほど前はこれほどの応援が贈られる選手ではなかった。
戦いを重ねてきた来た背中が大きく見える。
自信をみなぎらせるようにも見えるその姿に…
「五十嵐がでかくなって帰って来た」…なんて思いが湧く。
一方の横川…かつてのOPBF東洋太平洋ランカーは、この試合に勝ってランキングを取り戻しにかかる。
「奪いに来る者」そのものの気合の乗った表情。
ピリピリとした空気が見ている側の肌まで刺激しそうだ。
ゴングが鳴ると、ガードを固めてグングン前進する横川。
足を使ってリングを周り、圧力を躱そうとする五十嵐。
オープニングヒットは横川の強烈な左ボディ。
衝撃音が鳴り響く。
足を使いながらガードの上からでも、ジャブを叩いていく五十嵐。
どんどん前進してくる横川に、今度は五十嵐がボディを突き刺す。
ラウンド終盤、お互い顔面へのヒットが少ない中、
横川が左フックからの右ストレートで顔面を跳ね上げる。
さらに圧力を増し、ジャブの数を増やしながら前進する横川に、五十嵐は左ボディで対抗。
2R、開始とともに左フックで五十嵐を強烈に捉えた横川。
そのまま何度も左フックを叩き付け、さらに右フックにもつなげる。
いずれも渾身の力がこもったもの。
どんどん前進してくる横川の勢い…これをボディで止めた五十嵐。
直後、試合が中断。
偶然のバッティングで五十嵐がカットした様子。
これまで何度もカットしてきている五十嵐…古傷はずいぶん切れやすくなっているようだ。
ドクターチェックが入るモノの、ここは試合再開。
またも勢いを増す横川。
これまでと同じく、強烈に振り出した五十嵐の左ボディ…。
しかし…そこに合わせるように振り抜かれた横川の左フック。
五十嵐が後ろ倒しにダウン。
ギリギリまで休んで立ち上がった五十嵐だったが…ファイティングポーズがテンカウントに間に合わず。
まだやれる…左右のグローブをバチンと合わせたタイミングで数え上げられたレフリーの「テン」。
KOタイムは2R 2分30秒
圧力をかけて猛烈に振るった横川に対し、しっかりと足を使い、
ジャブを突きながら力のこもった左ボディを突き刺していた五十嵐。
押されながらではあったが、試合が続いていれば、この左ボディはキーとなっていたはずだ。
しかし、横川はその左ボディを何度ももらいながら、その左ボディに合わせて一撃KO劇を演出した。
もらい過ぎてはまずいパンチ…それを防ぐのではなく、
何度ももらったことでつかんだタイミングで攻撃に転化した…。
勝った試合のKO率9割…まさに倒し屋の所業だ。
止まることのなかったプレス。
全弾フルスイングの迫力。
そして、まさに肉を切らせて骨を断った試合展開。
偶然当たった一撃KOでなく、横川が一枚上手だった…そんな風に感じる。
コーナーの椅子に座り、悔しそうに足をリングに叩き付けた五十嵐。
悔し涙に濡れながらリングを降りた。
大きな声援に包まれた、ホームリングで2年半ぶりの敗北。
様々な思いがあるだろう…。
実はその五十嵐の2年半前の敗北こそ、この中日本ボクシング観戦記の最初の記事となった興行。
五十嵐が杉山 令耕(岐阜ヨコゼキ)に逆転のTKO負けを喫した姿は忘れられない。
久野 一輝(緑)、佐伯 瑠壱斗(岐阜ヨコゼキ)、山道 聡(折尾)…五十嵐を含め、
あの日のリングに立ったボクサーはもう4人しか残っていない。
2016年3月6日、このブログがここまで続いて来たのも、彼らのお陰だと思っている。
敗北を経て、その後、飛び切りの戦いを魅せてきてくれた五十嵐…。
きっとまた、あの時と同じように、より力強くなって復活してくれると信じている。
【フライ級8回戦】
冨田 真(HEIWA) vs ファイヤー 一休(三谷大和)
冨田 真 16戦8勝6敗2分 サウスポー
ファイヤー 一休 8戦6勝(4KO)1敗1分
1R、前に出て来る一休に対して、足を使う冨田…小さく、細かく撃ち出していく。
力強く振るう一休…冨田はサイドにまわりながら、凄まじい回転で一休の顔面を叩く。
ラウンド中盤になってようやく冨田をコーナーに詰めた一休。
細かく連打を繰り出すが、冨田は上体柔らかく回避し、クリンチに逃れる。
圧倒的な手数とヒット数でまずは冨田がラウンドをはっきりと先取。
2R、手の届く距離を旋回しながら手数を出していく冨田。
威力はなさそうに見える、スピード重視のパンチが次々と一休の顔面を叩く。
近い距離だが、一休が力のこもったパンチを繰り出す頃にはそこにいない。
完全に翻弄される一休だが、前に出る足は決して止まらず…。
渾身の力を込めて危険なパンチを振るう。
3R、冨田が力のこもったパンチを織り交ぜて、攻撃に強弱をつける。
その分、一休の強烈なパンチを被弾する場面も増えるが、怯むことなく冨田はペースを維持。
ダメージを堆積させるように、冨田がその拳で一休を襲い続ける。
しかし…一休の突進は止まることはない。
一弾一弾力を込めて振るう一休、ガードの隙間にねじ込むようなアッパーで
冨田の顔面を跳ね上げるシーンも訪れる。
追いかけ続ける一休…サイドに走り回る冨田…
この試合、このペースを8R…両者維持できるのか…。
4R、冨田が足を止めて撃ち合いに応じる。
一休の土俵…冨田の顔面が跳ね上がるシーンが何度も訪れる。
しかし、冨田は上に細かく撃ちこみながら、ひたすらに腹を強く打ち込み、
生粋のファイターを相手に引かぬ戦いを魅せる。
終始激しい撃ち合いのままラウンド終了のゴング。
5R、また足を使ってサイドにまわり始めた冨田。
蓄積したダメージか、手数の減り始めた一休を序盤以上に圧倒。
叩くようなパンチの中に、力のこもったパンチを織り交ぜ、一休の顔面を跳ね上げる。
バリエーション豊かに、多彩に…拳をぶつけていく。
6R、回転を増していく冨田…一方的にもらう一休。
それでも、一休は試合をひっくり返す威力のパンチを振るう。
危ない試合…細かいパンチをもらい過ぎている。
ダメージを噴出させたかのように足元をふらつかせる一休に、レフリーが割って入ろうとする…が、
一休は反撃の拳を振るって、レフリーに止めるタイミングを与えない。
危ない…かなり危ない試合。
7R、チャンスに手を出し続けた冨田が、やや失速する。
手数が減った冨田に対し…一休は変わらぬペースで追いかけ、強烈に冨田の顔面を捉えるシーンを作る。
信じられないことに…ここに来て一休が盛り返し、勢いを取り戻し始める。
終わっていておかしくなかった試合…ただひたすらに、愚直に前進し続けた一休が、流れを引き戻す。
最終ラウンド前、冨田サイドのセコンドが大声で激を飛ばす。
残り3分間…精神力の勝負。
セコンドは最後の仕上げに、客席に向かって冨田への応援を催促してリングを降りる。
冨田に力を…。
地元のファンたちが声を張り上げる中、最終ラウンドのゴングが鳴る。
8R、猛烈な撃ち合い。
死力を尽くした二人が、残り3分を駆け抜ける。
疲弊を感じさせない二人。
…この二人はどれだけ走ってきたんだろう。
一度はKO負け寸前にも思えた一休が、この撃ち合いを上回り…
しかし冨田は一歩も引かないまま…
会場のボルテージが上昇し続けて試合終了のゴング。
マイジャッジ 77-75 冨田
公式ジャッジも全員77-75。
勝者:冨田
足を使った出入りのボクサーだった冨田。
勝ったり負けたりの中でなんとかA級に辿り着き…それだけでも凄いと思った。
A級ボクサーになる選手だなんて思っていなかった。
それが、前戦のA級初戦、これまでのスタイルから変貌し、撃ち合いを演じて勝利をつかんだ。
スピードを生かし、手数で勝負するインファイト…それまでの冨田からは想像ができなかった。
そしてこの日、近距離をサイドにまわり続けながら、生粋のファイターを手数で圧倒した。
元々足のボクサーだった冨田が、その足を存分に生かしてのファイト。
撃ち合いの局面では真っ向からも勝負する。
見てきたボクサーが強くなっていく…これほど感動するものはない。
いつも、冨田の試合ではリングサイドから熱い声援が飛ぶ。
愛されるべきボクサーが、熱烈に愛されている。
今の冨田は強い…きっとランカーとやってもいい勝負になる。
来年、この男の戦いが楽しみで仕方なくなった。
盛り上がった両肩の筋肉…一目見てファイターとわかる一休の体つき…
ファイターはファイターらしくアタックを続けた。
もう試合を止めるべきと思えた6Rの姿。
試合を止めないセコンドやレフリーに怒りさえ湧きそうなほどだった場面。
そこから、7Rには試合を盛り返して見せた。
自分の拳を信じ、自分を貫いた姿。
勇敢なA級ボクサーだった。
8回戦に相応しいリング。
贔屓目抜きに面白い試合だった。
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