2017/12/03 刈谷あいおいホール-3試合目(中日本ボクシング観戦記) ボクシング選手名鑑ピックアップ!
【54.5㎏契約4回戦】
加賀 聖也(タキザワ) vs 大森 雄貴(三津山)
・加賀 聖也 5戦4勝(1KO)1敗 サウスポー
・大森 雄貴 3戦2勝(2KO)1敗
この日、最も期待したカード。
長い距離のスペシャリストの加賀と、長短どちらでも戦える大森。
今年の中日本新人王トーナメントの主役になるはずだった加賀はトーナメントを怪我で棄権。
そのトーナメントでデビューした大森は当然ノーマークだったが
トーナメントを掻き回す大活躍を見せ、決勝ではわずか残り数分で勝利を逃す逆転KO負け。
強烈な印象を残した。
お互いのパンチが届かない距離で始まった静かな試合。
先に踏み込んだのは大森だが届かない。
先に左ストレートを突き刺したのは懐が深過ぎるくらいに深いサウスポーの加賀。
だらりと下げた右手で相手を遠ざけながら、左ストレートを突き刺し、
入り際には右フックを引っ掛ける。
大森はもらいながら、強引に左フックを当てる。
撃っても撃っても届かない中で、中盤に入ってようやく初めてのヒット。
加賀は最初の3分間を完璧に支配。
大森には突貫しかないように思えるが…そこには右フックが待ち構えている。
しかし…危険な賭け以外に選択肢は無い。
2R、アタックを敢行するも、予想通り右フックを幾度も浴びせられる大森。
そこしかないとも思える勝ち筋に果敢にチャレンジしていく。
しかし、大森が懐に入ったと思った瞬間、絡み合ったお互いの体。
加賀はヌルっと上体柔らかく大森の体の力を受け流し、大森のバランスが崩れる。
そこに強烈な左フックが突き刺さる。
アゴをえぐられてリングに倒れる大森…。
やはり加賀は…飛び抜けて強い。
再開後、大森は開き直ったかのように、アタックの回数を増やす。
より強引に攻め込み、幾度も幾度も加賀の右フックをもらう。
ぐちゃぐちゃとした展開に持ち込もうとした矢先、大森の左目上から大量の出血。
ドクターチェックが入り、試合がストップ。
カットはヒッティングによるものとのアナウンス。
TKOタイムは2R 1:46
大森は、何もできないまま負けてしまったというのが正しいんだと思う。
でも、中日本新人王決勝を逆転KOで失った大森だからこそ、
体で一発の怖さを知っている大森だからこそ、この先が見てみたかった…。
ダウンも奪われ、絶望的な展開だった。
目の上を切り裂かれての完敗…でも、出血での負けは、意識もはっきりしている。
不完全燃焼を感じてしまう…次の試合に、ぶつけてくれるよね…なんて思う。
見た目はスマート、戦い方も決して泥臭くは無い。
でも、彼が勝ち上がるとしたら、きっと彼のボクサーズロードは泥臭いモノになるんだろうと感じた。
この負けからの挽回があるとするなら、それはとてもボクサーらしいストーリーが描かれる。
たまんない…負けにだけは負けてくれるな。
加賀、この強さはちょっとエゲつない。
無駄なスタミナロスのない形に、試合がスムーズに決まるなら、6回でも軽く勝ち上がってしまいそうに思う。
ランカーは固いんじゃないか…そんな風に思ってしまった。
誰がどう攻略できると言うんだろう。
以前、彼をイラリオ・サパタ(パナマ)に例えたことがあったが…。
レジェンド王者と並べるのが言い過ぎなのは承知の上だが、より近付いた。
この選手は、本気で期待できる選手。
勝利者インタビューではいつものごとく、軽い感じでマイクを持った加賀。
「えっと、皆さん応援ありがとうございました。
今日は色々話したいことがあったので、早めに終わらそうと思ったので、色々話しさせてください。
僕は今年新人王に出る予定で、大きな怪我をしてしまい、棄権する形になりました。
この試合に関してなんですけど、会長は僕の体を第一に心配してくれて、勝敗よりも…
健康第一だよ…って…僕の体を心配してくれるいい会長です。」
突然泣き始める加賀…。
過去に勝利者インタビューで、車買ったからファイトマネー上げてくれって懇願した男が…
全く意味が解らない…泣くほどのことだったのか…?
キツネにつままれたような気分。
「今日でボクシング辞めようかなって思ってます。
タキザワジムの皆さんは本当に暖かくて優しくて、ボクシング通して皆の暖かさに触れることができました。
ほんと、みんな、ありがとうございました。」
ウソだろ…。
加賀は強い。
先々チャンピオンも狙える選手だと思う。
でも…強いだけじゃチャンピオンになれない。
怪我もあれば、運も、大人の事情も…それがボクシング。
強さにそんな運命みたいなものがエッセンスされて、チャンピオンが産まれてくる。
その反面、強くてもチャンピオンになれなかった男が何人も何人もいる。
何度も見てきた光景…。
加賀のセコンドに入ったトレーナーの滝澤 卓(タキザワ)に目が行く。
この人も、そうだった。
チャンピオンになれる力を持ちながら…目の怪我でリングを降りた。
当人たちの気持ちなんか僕には解らない。
こっちはただひたすら、もっと見たかったって思いで胸が苦しくなるだけ。
でも…知ることができて幸せです。
ほとんどの無名ボクサーたちは、気が付いたらいなくなっているから。
この寂しさを与えてくれたことが、ファンにとっての救いなんだと思う。
ありがとう、加賀 聖也。
お疲れさまでした。
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