2017/4/30 じゅうろくプラザ-セミファイナル+@(中日本ボクシング観戦記) ボクシング選手名鑑ピックアップ!
いよいよセミファイナル…その直前に二人のボクサーの引退式が執り行われる。
岐阜きっての人気ボクサー。
ノーランカーとしては破格の人気を誇る…岐阜のエンドレスファイター杉山 令耕(岐阜ヨコゼキ)。
彼の実家は由緒あるお寺さん。
住職としての仕事も無碍にはできず、ここでボクサー人生を終えることに。
2年前の3月、刈谷あいおいホールでセミファイナルに出場する五十嵐と激戦の末に敗北。
その後2連勝を飾ると、昨年の岐阜商工会議所での五十嵐とのリマッチ。
劣勢に立たされながら、逆転のTKOでリベンジに成功。
後楽園で強豪の佐々木 洵樹(帝拳)のランクに挑んで完敗。
それでも、地方に夢を見せるには充分な存在だった。
いつも、どんなときでも立ち向かっていく姿に熱を込めて応援したファンも多いハズ。
岐阜での杉山の試合を初めて見た日…客席の熱に驚かされた。
ノーランカーがこれほどまでに客席を熱くさせるのか…
岐阜商工会議所の独特の熱気…その中心にいた選手の一人。
最後に戦った藤本 翔平(中日)も同じく引退。
同じ試合を最後にリングを去る二人が、一緒に引退式を行う…粋な演出。
最後はオカダエンタープライズ社長の岡田氏と、1Rのスパーリング。
スポンサーの社長とプロのボクサーがリングで拳を交える。
ちょっと異質にも思える最後に、やはりここでも岐阜の醸し出す熱を感じる。
岐阜の興行では他の興行以上にスポンサーが前面に押し出される。
スポンサーがあって興行が行われ、そしてファンがボクシングを楽しめる。
選手にとってもファンにとっても必要な存在だが…
そんなスポンサーたちが、嬉々としてボクシングに熱中する。
当然好きだからスポンサーになるのだろうが…
彼らはボクサーを点ではなく線で見ているように感じる。
負ければ去っていくスポンサーも多数いるそうだが…
中日本ボクシングそのものを支えるオカダエンタープライズや
岐阜の興行でいつも目にするピンクのハッピの女性たち…。
僕は彼らや彼女たちのことをまったく知らないので、勝手な想像だけど…
ボクサーの勝ちも負けも、応援するからこそ見えるドラマがたくさんある。
だからきっと、たかだか負けの一つや二つで彼らや彼女たちの熱が冷めることはないんだろう。
ボクサーの負けは、強くなる為の負け…。
そんな意味を深く知るのは、見続けているファンたち。
スポンサーとして熱を挙げるファンたちを見て、そんなことを思ってしまう。
岐阜の強烈なファンたちに支えられた、杉山選手…きっと幸せなボクサー人生だったと思います。
2013年の中日本新人王を獲得後、全日本新人王決定戦で敗北した藤本。
そこからは強豪との連戦…A級昇格後、積み重なった負けは4つ。
8回戦のリングで1度も勝つことはなかったけれど…4つの負けはファンに夢を見せた数。
A級に上がると言うことは、必然的に強敵と拳を重ねる機会を増やす。
だからこそ、よりA級ボクサーは偉大だと思う。
両者、それぞれのジムでトレーナーを務め、今後もボクシングに携わられるとのこと。
いい選手を育てて欲しい。
中日本のファンたちが熱い夢を見れるように…。
さて…時刻は18:30。
セミファイナルが開始される。
直前に引退式を行った杉山と、激戦を繰り広げた男が登場。
【56.5Kg契約8回戦】
奥田 翔太(岐阜ヨコゼキ) vs 五十嵐 嵩視(トコナメ)
・奥田 翔太 11戦7勝(2KO)4敗
・五十嵐 嵩視 12戦9勝(3KO)3敗
僕は毎度毎度行っているけれど、五十嵐は…いつランクを獲ってもおかしくない実力者。
あとはチャンスを得るだけ…後楽園のランカーたち、
腕に自信があるなら、地方に隠れるこの強豪と戦って欲しい。
相手は中京のホープ、水野 拓哉から鮮烈なダウンを奪ってその名を上げた奥田。
現在、中日本きっての旬なカード。
強豪ノーランカー同士の潰し合い…今日一番楽しみにしていた試合。
様子見の序盤、静かな立ち上がりとなった試合。
フレームでは五十嵐が若干有利。
しかし、滑り込んで、いきなり右ストレートを撃ち込む奥田。
相手の内側に入り込む術は心得ているよう。
ラウンド後半から、相手の出鼻をくじくジャブで五十嵐が先に手を出していくと
次第に奥田が攻めあぐね始める。
2R、徐々に距離をつかんできた五十嵐。
強烈な右ストレートをヒットさせる。
さらに鋭利な角度のボディーで攻めていく。
しかし、ガードの外側からねじ込む奥田のフックは驚異。
3Rに入り、奥田は出入りの頻度を高める。
しかし、五十嵐は巧くさばき、ボディを積み重ねる。
中盤から奥田のラッシュに五十嵐が後退…。
杉山に喫した逆転KOが頭をよぎるが、
左フックを顔面、ボディに撃ち分けて迎撃し、ピンチを回避。
この攻防の最中、五十嵐は奥田のパンチで左目上をカット。
4R中盤、積み重ねたボディが効き始めたか腰が立ってきた奥田。
逆に五十嵐に下がらされる場面が目立つようになる。
5R、五十嵐がプレスをかけて奥田をコーナーに追い込む。
ボディを幾度もえぐっていく五十嵐。
しかし、終盤、奥田が意地の反撃で押し返していく。
6R、お互いが前がかりになり始める。
ボディを数多く叩く五十嵐に対し、踏み込んで撃つ奥田の頭が衝突。
奥田が左目上をカットし、両者流血の展開へ…。
7R、五十嵐が足の死んだ奥田をコーナーに追い詰める。
さらにボディを積み重ねる五十嵐…ポイントも流れも五十嵐のモノ…。
しかし、まだまだ奥田のパンチは死なず。
削りに削られた奥田が、ラウンド終盤に決死の抵抗。
五十嵐が防戦に回らされる。
8R、血飛沫の熱戦は気力勝負。
奥田の抵抗は五十嵐のコンビネーションを耐えきり、最終のゴングを効く。
マイジャッジは78-74で五十嵐。
公式採点:78-76×2、78-75
勝者:五十嵐
最後の最後まで、逆転の望みを消さない奥田の鋭い拳…
しかも、しこたまボディを叩かれ、削られたうえで…
どんな強豪にもアップセットを薫らせるであろうその姿は見ていて異常に面白い。
これから、岐阜のファンに愛されていくだろう選手に思える。
そして…五十嵐。
勝利者インタビューでランカーを目指すと宣言した。
現実味のあるその発言に、やっぱり鳥肌。
今年、この男が中央のファンの目に触れることを願いたい。
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