2025/03/30 -石川・石川県産業展示館- 第1試合~セミファイナル(中日本ボクシング観戦記) ボクシング選手名鑑ピックアップ!

2025/03/30 -石川・石川県産業展示館- 第1試合~セミファイナル(中日本ボクシング観戦記) ボクシング選手名鑑ピックアップ!

 

■2025年度中日本フェザー級新人王準々決勝
【フェザー級4回戦】
硲 翔大(カシミ) vs 渡邊 廉(蟹江)

リングを大きく使うのは渡邊、硲はプレスをかけていく。
最初の大きなヒットは硲の撃ち終わりに刺さったサウスポー渡邊の左。
続けざまにワンツーでも捉える。

中盤以降は前の手を触り合いながら右のタイミングを探る時間。
硲が時折右ストレートを突き刺す中、
渡邊が硲の入ってくるところに右を合わせたところでラウンドが終了。


2Rもタイミングを測り合う展開の中、中盤に渡邊が踏み込んで
ショートのコンビネーションを浴びせると、
硲も負けん気強く至近距離でショートを叩き込む場面を作ってやり返す。

拮抗した展開の中、硲が右ストレートを一閃。
まともに浴びた渡邊がダウン…立ち上がるも、
硲は再び右ストレートを浴びせ、パンチをまとめるとレフリーがストップ。

TKOタイムは2R 2分18秒


試合展開は互角、マイジャッジでは渡邊がリードしていた。
たった一発で決まってしまった試合。
あの一撃を入れるため、浴びぬために膨大な時間がある。
幸運不運で出た結果ではないが、一つ一つの「モノ」で劣っていたわけではない。

これでデビュー2連敗となった渡邊だが、初勝利に遠い位置にいる選手ではないと思える。
「何物にも代えがたい」と言われるプロのリングでの勝利の味。
彼がそれを味わう瞬間を楽しみに待っていたい。


拮抗した展開の中で不意を突いた右ストレート。
見ていてもまさかと思えたタイミング…ハイセンスを感じずにはいられない。
デビュー戦もそうだったが、天性のタイミングを持つ選手のようにも思えた。

おそらく、見た目以上に強い選手…結果を出す選手。
次戦では優勝候補の一角、”メキシコ帰りのルハン”佐藤 陽太(LUSH緑)が待ち受ける。
完成度は明らかに佐藤が上だが…硲のタイミングが大きなドラマを巻き起こす可能性は充分にある。
こういった伏兵がトーナメントを面白くし、さらには主役をとってかわることもある。
楽しみな選手が出てきた…胸が熱くなった。


硲 翔大 2戦2勝(2KO)
渡邊 廉 2戦2敗

 

【スーパーフェザー級6回戦】
新田 晃生(カシミ) vs スラサック・シュンムゲェル(タイ)

お互いどっしりと構え、わずかに遠い安全圏から拳を出し合う。
しきりにジャブを出す新田に撃ち終わりを狙うスラサック。
拳が届かない位置からフェイントをかけ、パンチを出し、反応を探り合う。

どちらがいつ踏み込むか…そんな緊張感の中、先に踏み込んだのは新田。
まっすぐ突き出した拳がスラサックを捉える。
これで距離をつかんだか、次のタイミングでさらに深く踏み込んで右ストレートを突き刺す。

完璧に突き刺さり、リングに沈むスラサック。
立ち上がったものの足に来ておりまともに立てず。
レフリーはテンカウントを数え上げた。


KOタイムは1R 2分22秒


力むことなく、最小手でKO劇を演じた新田。
与えられた試合に満額回答で応えて見せた。
全国に有望選手たちがひしめくスーパーフェザー級。
ランキング入りも容易ではない面々が立ち並んでいる。

これでB級1勝目の新田、まだA級戦線にはあと1勝が必要となるが…。
さらにその先を意識させてくれる戦いぶり。
ここから先の険しい戦場へ…どこまでやれるか、楽しみでならない。


新田 晃生 8戦6勝(4KO)2敗
スラサック・シュンムゲェル 8戦4勝(3KO)4敗

 

【スーパーバンタム級6回戦】
山本 愛翔(カシミ) vs 田甫 吉駿(森岡)


開始直後から忙しくフェイントを掛け合う中、鋭くボディストレートを刺した山本。
大きくは動かず、小さく小さく位置を変えながら、撃ち終わりを叩く田甫。
お互いにカウンターを取り合い、スリリングにパンチが交錯する中、
山本の強烈なボディが目を引く。


2Rもお互いに拳を出し合いながらカウンターの取り合い。
大砲の右ストレートが相打ちするなど目が離せない展開。
田甫の右フック、山本の右ボディが目立つが、
まとめて捉えた場面が田甫の方が多かったか…
ヒットで田甫が上回ったように見えたラウンド。


3R、キビキビと動きながら巧く山本のパンチをかわす田甫。
山本はボディを強烈に突き刺していく。
中盤、田甫の右をもらいながら踏み込んだ山本が猛ラッシュ。
田甫も反撃し撃ち合いとなるが、ここをしっかりと撃ち勝った山本。
終盤にも撃ち合う中、ショートの回転では山本が勝る。
初めて明確なラウンドとなった。


4R、撃ち合いに手ごたえを得たか、多少の被弾構わず山本が詰めて、
ボディから顔面へと攻め立てる。
いったんミドルの距離になると、田甫のきわどいカウンターが飛んでくる。
至近距離で山本が勝っているようには思えるが、怖いタイミングのショートが刺さる。
終盤、田甫のパンチがよりコンパクトになるにつれ撃ち合いは互角へ…
山本の方が距離を取り、田甫が追う展開に。


5R、撃ち合いの中、より小さく撃ち込む田甫の回転が勝り始める。
全く落ちない田甫、山本の方に疲弊を感じるが、試合終盤ともなればそれが普通。
しかし、ラウンド終盤に入ると、山本が上半身を振り子のように動かし
至近距離でも田甫のパンチを外す動きを見せて盛り返す。
全日本新人王の底力を感じる戦いぶり。


最終ラウンド、山本が先に先に積極的に仕掛けていく。
迎え撃つ田甫のパンチも刺さり、互角の展開ではあれど、そうなれば山本の積極性が目立つ。
あっという間に時間が過ぎ去る最終ラウンド、試合終了のゴングが響いた。


マイジャッジ 58-56 山本

公式ジャッジ
58-56×3

3-0 勝者:山本


田甫の刻む細かいリズムの中で試合は進んでいった。
相手のテンポに付き合う形で山本が削られていったようにも見えた。
そんな中、最後は積極的に手を出すという、意志の部分で勝利をもぎ取った。

B級日本ランカーとA級ボクサーの対決は見どころたっぷりだった。
ノーランカーと言えど、武器がなければA級には上がれない。
クセモノだらけのA級戦線…
田甫のテンポに見事にハメられてしまった山本だったが、最後は意志の力で乗り越えた。

田甫というA級へ上がる男の強さを見せつけられた試合だった。
まだ、その名を全国に知られる選手ではないが、これから多くの選手を苦しめていくだろうと思う。
山本にはこれから挑んでいく場所の厳しさを知り、そして難敵を乗り越えた自信としてほしい試合。

満足感たっぷりの18分間だった。


山本 愛翔 7戦6勝(1KO)1敗
田甫 吉駿 10戦7勝(2KO)3敗

 

【スーパーフライ級8回戦】
藤野 零大(カシミ) vs ラードチャイ・チャイヤウェード(タイ)

ジリジリと距離を詰めながら、ジャブを突き刺す藤野。
距離を取りながら、撃ち終わりの一撃狙い一択のラードチャイ。
藤野の重いジャブが鋭く刺さり、時折右もヒットするが、
ラードチャイの上半身はしっかり反応しておりダメージを殺しているように見える。
前回刈谷に登場した時と同様、判定はハナから捨て、
撃ち終わり狙いのラードチャイの手数は極端に少ない。


2R、ジャブが中心だった藤野だが、スタンスをサウスポーに変えると
多彩なパンチでラードチャイを襲い始める。
ガード固く、上半身柔らかく…ヒットしても手ごたえは浅いか。
撃ち終わりに飛んでくるラードチャイのパンチにはしっかり反応してヒットさえ許さない藤野。


3R、9割をディフェンスに振りながら不意をついたように攻めるラードチャイ。
防御に徹する相手を倒すのは至難の業。
藤野の攻撃はヒットは奪えど、致命的な一撃には至らず。
ラウンド終盤、ラードチャイも右をヒットさせる。


4R、中盤からサウスポーに構え、左の強打を連発していく藤野。
終盤にはロープ際から抜け出そうとするラードチャイを吹っ飛ばすようにダウンを奪取。
立ち上がったラードチャイを一気に攻め立てる藤野。

耐え続けたラードチャイだが、ラウンド終了のゴングとともにリングに崩れる。
レフリーはダウンを宣告し、そのままカウントを開始。
立ち上がるも足元のおぼつかないラードチャイにそのままテンカウントが数えられた。


KOタイムは4R 3分10秒


数々の日本人選手が、世界トップ戦線のタノンサック・シムシー(タイ)が…
倒せなかったラードチャイを見事に沈めて見せた。

勝利者インタビューでは謙虚に「まだまだ内容が…」と答えていた藤野。
今後について聞かれると、静かに、そしてはっきりと
「新人王戦で引き分けた犬塚選手がやりたいと言ってくれているので
 犬塚選手との戦いを目指したいです。」と。

この試合は再戦とはなるが、前戦は4回戦でのもの。
有望ホープたちが集うスーパーフライ級で、最初のサバイバルと言っていいカードが成立に向かう。
因縁と、サバイバル、そして他のライバルたちに与える影響も大きいだろうと感じる。
佐野 遥渉(LUSH)坂井 涼(畑中)村田 碧(松田)…彼らがこの試合をどう見るか。

導火線に火が付いた。
藤野が火を着けた。


藤野 零大 7戦6勝(3KO)1分
ラードチャイ・チャイヤウェード 28戦15勝(10KO)13敗

 

【カテゴリ別】
2025年中日本ボクシング観戦記一覧に戻る

中日本ボクシング観戦記一覧一覧に戻る

カテゴリ別記事一覧に戻る

 

【日付別】
【記事一覧】2025年5月に戻る

【記事一覧】2025年に戻る

【記事一覧】に戻る

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました