2019/07/20 -愛知・刈谷市あいおいホール- 第3試合、第4試合(中日本ボクシング観戦記) ボクシング選手名鑑ピックアップ!
【56.0kg契約6回戦】
干場 悟(蟹江) vs 溝越 斗夢(緑)
干場 悟 8戦5勝(2KO)3敗
溝越 斗夢 6戦4勝(2KO)1敗1分
お互いにジャブを刺し合う立ち上がり…。
干場がじわりじわりと距離を詰め始める。
溝越はサイドに動きながら、ジャブを突き、フックを引っかけて
遠い距離を維持しようとする。
ラウンド終了間際、溝越がコーナーに詰まったところ
右ストレートをカウンターで突き刺して干場を下げると
ワンツーを突き刺してこのラウンドが終了。
6回戦のリング、先は長い…。
この展開なら、溝越がどこかで捕まることも想像できる。
1Rは溝越がはっきりと制したが…一度捕まれば、干場に飲み込まれる可能性も高い。
2R、詰める干場に対し、足のギアを上げ、リングを飛び回りながら
次々にカウンターを撃ち込み始める溝越。
しかし…干場の圧力も増していき、二人の距離は接近、徐々に相打ちの場面も出始める。
ラウンド終盤、溝越をロープに追いつめた干場は、左ボディから左右フックを叩きこむ。
コーナーへ飛んだ溝越をさらに追いかけ…ここで干場が捕まえた…
そう思った刹那、相打ちの右を叩き込んだ溝越、
さらに干場の返しの左を浴びながら右フックを撃ち込む。
一瞬止まった干場、その隙にサイドに飛んでコーナーを脱出しようとする溝越に
干場が右ストレートを撃ち出すと、そこに溝越の右のカウンターをが突き刺さる。
ビッグヒットにグラついた干場…
この瞬間を溝越は見逃さず、一気にラッシュで襲い掛かる。
手を出せずに、強打を浴び続ける干場に、レフリーは試合をストップ。
TKOタイムは2R 2分50秒
試合としては、溝越が圧倒した試合。
干場の良さはほとんど出なかった…というよりは出る前に試合が終わってしまった。
相手を撃ち合いの土俵に引きずり込み、飲み込んでいくような干場のファイト。
干場の真骨頂が発揮される…そんな瞬間に、溝越の真骨頂であるカウンターが試合を終わらせた。
わずか3秒程だったろうか、お互いがお互いのストロングポイントをぶつけあった時間。
ボクシングが瞬間スポーツである事をまざまざと見せつけられた。
引退宣言からの復帰戦だった干場。
彼の本当の強さをこの試合だけで感じ取れる人間は少ないだろうと感じる。
ここで終わるな…、本当の干場はまだ帰ってきていない。
試合後、上機嫌で何かを頬張りながら訪れた溝越。
「干場に溝越は勝てない」
そう言い続けて来た僕に、「どうだ!」とでも言いたげな悪戯っぽい笑顔。
僕はこれで、3試合連続で溝越の勝敗予想を外している。
全ての試合で溝越の負けを予想し、その全てを溝越がひっくり返す。
2017年の新人王戦の干場と同じ…。
僕の目は節穴だ…。
少しだけ小憎たらしく、その何倍も可愛げのある嬉しそうな顔。
勝った後のボクサーは、やっぱりこうでなくちゃと思ってしまう。
喜んでいる顔が見たいから、勝って欲しい。
とにもかくにも、溝越さん、さーせんでした。
【バンタム級6回戦】
松浦 克貴(岡崎) vs 高井 一憲(中日)
松浦 克貴 8戦5勝(1KO)3敗
高井 一憲 13戦6勝(3KO)5敗2分 サウスポー
ロングレンジで間合いを測りあう二人。
緊張感の高い中で、まずは松浦がサウスポーの高井に対し、逆ワンツーで先制。
高井は左フックをボディに持っていく。
ラウンド後半に入ると、松浦が飛び込んでは離れを繰り返し、高井の顔面を次々に襲っていく。
高井は次第に手が出なくなる中、ラウンド終了のゴング。
2Rも飛び込んでは離れを繰り返す松浦、ラウンド中盤には距離を詰めて
コンビネーションをまとめる場面も作る。
右をもらう場面はあるものの、ここれまでの試合で、
一撃で展開をひっくり返してきた高井の棄権な左は綺麗に外し続ける。
撃っては離れを繰り返した松浦が、このラウンドも制したか…。
3R、前に歩みを進め始めた松浦、距離の支配者がファイトを選択する。
松浦の強烈な右が高井に突き刺さる場面が増えるものの、高井の左が松浦に当たる場面も出始める。
松浦にとって危険な展開にも見える…。
ラウンド終盤、頭の衝突をきっかけにコーナーまで下がった松浦。
ここで高井は一気に攻めていくが、渾身の左アッパーは松浦が頭を振って綺麗に外す。
4R、ファイトを選んだ松浦、二人は撃ち合いに突入。
松浦の強烈な右が数多く高井を捉えるが、高井の左も強烈に松浦を捉える。
徐々に松浦の手数が減り始める中、危険な左が松浦を襲う。
ラウンド中盤、高井が足を使い始め、松浦が追う展開となると、
数々の試合を決めて来た高井の左ストレートが松浦を突き刺す。
さらにラウンド終盤には強烈な左アッパーで松浦の顔面を跳ね上げるシーンも。
5R、松浦の呼吸に異変が出始める。
口を大きく開け、顔を紅潮させながら距離を詰めていく。
お互いに大砲の撃ち合いとなる中、ラウンド中盤、松浦の右フックが高井を揺らす。
どんな時も綺麗なフォームの松浦が、ぐちゃぐちゃに崩れながら、
高井の強打を浴びる中で、的確にその拳をぶつけていく。
6R、苦しそうに肩で息をしながら、高井が入ってくるところに合わせることで
一方的な展開を防ぐ松浦…しかし、その間に幾度も強打を浴びる。
終盤に入ると、足も手も止まる…何度も何度も高井に体を預け、
倒れる事のみ防いでいるような状況…松浦が、ボロボロになりながら試合終了のゴングが鳴る。
マイジャッジ 57-57 ドロー
公式ジャッジも 57-57×3でドロー。
センスで言えば、圧倒的に松浦…負けながら強さを増してきた高井。
両者が2017年の中日本新人王を獲得した頃、高井が松浦と引き分ける姿が想像できただろうか。
B級昇格後、3連敗…しかし、その中で着実に強くなり続ける高井がいる。
少しずつ、少しずつ、これまで刻んだ負けのすべてを強さに変えて来た選手。
次の試合の高井がますます楽しみになった。
松浦は、試合中に肺に穴が空いたそうだ。試合後に手術に至っている。
しばらくまた、休まなければならないだろうことが残念には思う。
明らかに呼吸がおかしくなったことが解った5R、僕のマイジャッジは松浦につけている。
距離の主導権を握り、綺麗なフォームでスマートに戦う印象のある松浦が
ドロドロに崩れながら、根性論でしか説明のつかない戦いぶりを見せた。
松浦、執念のドロー劇。
2年前、4回戦のリングで輝きを放った期待の若手は、強敵たちへの敗北を経て
泥臭く殴り合う…ボクサーらしいボクサーに昇華してきている。
まだまだ強くなる。
そしてきっと、結果は必ずついてくる。
そんな二人のボクサーズロードが交わった結果はドロー。
これからの二人が、新しいドラマの起点とするのに相応しい結果にも思えた。
勝ちには繋がらなかったが…これで二人の背景はより、色の濃さを増した。
ボクシングの神様…たまには粋な事をする。
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