6年越しの新人王 太田 卓矢(とよはし) ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2018/09/19

6年越しの新人王 太田 卓矢(とよはし) ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2018/09/19
 
 

昨年の11月、聞き慣れない名前の選手のカードが組まれる。
太田 卓矢(とよはし)
 

既に4戦の戦績を重ねている。
敵地で試合を重ねたのか…戦歴を調べてみる。
 

4戦は全て刈谷あいおいホールだが…2012年までのもの。
自分が中日本をしっかり見ていなかった時期に戦っていた選手だ。

デビュー戦は2011年11月に伊藤 大貴(松田)を相手に組まれていたが、
この試合は伊藤の棄権により流れている。
 

改めてのデビュー戦は2012年度中日本フェザー級新人王トーナメント。

準々決勝で1戦1敗の古澤 康平(尾張水野)を1RKOで破ると、
2戦目では野呂 健三(薬師寺)と対戦。
この時点でB級昇格の権利に王手をかけていた野呂と1-0のドロー。
優勢点で決勝進出を勝ち取っている。
 

決勝ではこの年、中日本新人王の敢闘賞を獲得する堀田 慧(中日)に対し1RTKOで初の敗北。
あと1勝まで迫った称号を獲り逃している。

そこから4か月後、現在B級選手となっている池田 創(KOZO)を相手に3RTKO勝利で2勝目を挙げる。
この時点で4戦2勝(2KO)1敗1分。
 
 

太田の戦歴はここで一旦ストップする。
 

選手のキャリアはデリケートなものだ。
ブランクを空ける選手、リングを去る選手…理由は多岐に渡る。

モチベーションの低下、ジムとの関係や、怪我、家庭事情に仕事の都合…
表向きの理由と裏側の事情が全く違うこともよくある。
我々見ている側が思っている以上に選手のキャリアは簡単にとん挫したりする。
 

太田に何があったかは分からない。

ただ、彼は5年と言う歳月を経て、リングに戻ってきた。
その理由も解らないが…ただ、現実として戻ってきた。
 
 

2017年11月。
5年ぶりのリングで太田が見せた試合はわずか49秒。
岡田 和晃(富士)との激しい撃ち合いだった。
目まぐるしく攻防が入れ替わる、危険で壮絶な時間。
実際のそれは、数字以上に長く長く感じる戦いだった。

激しい撃ち合いの中、太田の右フックがカウンターで炸裂して強烈なダウン奪取。
岡田は立ち上がったがダメージが深く、レフリーがストップ。
KO勝ちで3勝目となる復帰戦を飾った。
 
 

中日本新人王の組み合わせが発表されると、そこに太田の名前がある。
長期ブランクを空けて復帰した選手だと、復帰の1試合限りというパターンも多くある。
太田がそうでなくてホッとする。

昨年に続き、今年のスーパーフェザー級でのエントリーは2名のみ。
太田はいきなり決勝のリングに立つこととなる。

相手は神谷 啓太(畑中)
昨年も中日本スーパーフェザー級新人王トーナメントにエントリー。
しかし、早々に棄権が決まって出場がなくなっている。

ここまでの戦績は2戦2勝(1KO)。
2戦目では現在B級で戦う中村 洸介(結花)と接戦の上で試合を制している。
そこから1年3か月ぶりの試合。
1年以上のブランクがありながら、畑中ジムに近しい人からは期待選手との声も聞こえていた。
 

この試合、激しいボディの叩き合いとなる。
上下に強烈なダメージブローを浴びせる太田。
徹底的に腹を叩いていく神谷。

2Rには太田がボディを効かされバタバタ後退する場面も。
しかし、3Rには太田が逆にボディを効かせ返す。
腹の我慢比べのようになった試合…スピードも迫力もある二人の攻防。
…見ているこちらが悶絶しそうなほど、お互いのボディは深く強烈に入りまくる。

お互いに何度も苦悶の表情を浮かべた試合。
どちらも耐えきって試合は判定へ。

結果、上下に攻めた太田がこの判定をモノにし、中日本スーパーフェザー級新人王に輝いた。
 
 

僕は5年前の太田を知らない。
なぜ…彼はリングに戻ってきたのだろうか。
どのような5年間を過ごしたのだろうか。

そこにはきっといいこと悪いこと、様々なドラマがあったんだろうと思う。
 

昨年の秋にリングに戻った太田は、リスキーな試合をした。
危険な距離で危険な殴り合いをし、派手なKOで復帰戦を飾った。

そしてこの日。
第一試合に行われたマンモス 和則(薬師寺)vs太田 アレックス(西遠)
あまりにも派手な試合になった為に陰に隠れたようにも思えるが、
熱戦と言う意味では負けず劣らずの試合だったように思う。
 
 

太田がこれまで、唯一喫した敗北は6年前の中日本新人王決勝戦。
5年のブランクを経て、見事にリベンジを叶えた形。
ここから、あの時に閉ざされた扉のその先へ向かう。
 

太田から感じるのは…勝負度胸。
そして、退かぬ戦いぶりに賭けるもの。
リングの戦いっぷりで観客を熱くさせることのできる選手のように感じる。

シルバーの頭髪に、真っ黒に焼いた肌。
ヤンチャさ満点の風貌で、長い手足で強烈に撃ち込み、試合はスリリング。

試合の面白さと言う意味では、この選手の試合は買いだ。
 

この男が勝ち上がるほど、今年のスーパーフェザー級は面白くなるはず。
5年の遠回りを経た男の怖さ、生き様のようなそのボクシングを披露し、
敵地で3つの白星を重ねて知らしめて欲しい。
 
 

我らが中日本新人王たちを全国に送り出す表彰式。
ひときわ黒いその肌がやたらと目立つ。
 

太田にとって2度目のドラマ。
僕にとってはリベンジじみた思いを込めてしまう選手。
…今度は見逃さない。

栄光を勝ち取って戻って来るはずの、この男のドラマを。
格別に面白くなるはずだから…見続けたい。
刈谷にて信じて待つ!
 
 
 

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