2018/6/17 -刈谷あいおいホール-ファイナル(中日本ボクシング観戦記)　ボクシング選手名鑑ピックアップ！

2018/6/17 -刈谷あいおいホール-ファイナル(中日本ボクシング観戦記)　ボクシング選手名鑑ピックアップ！
 
 

【50.0kg契約８回戦】
矢吹 正道(緑)　vs　ヒルベルト・ペドロサ(パナマ)

矢吹 正道　8戦6勝(6KO)2敗
ヒルベルト・ペドロサ　24戦18勝(8KO)4敗2分
 
 

1R、ピリピリと張りつめた緊張感の中、ジャブで距離を測り合う二人。
中盤まで探り合いが続く中、先に踏み込んだのは矢吹。
ペドロサのジャブの引き際に強烈なワンツーを撃ち込み、さらにアッパーを当ててサイドにまわる。
その後は足を使って回るペドロサに強烈なボディを撃ち込み、被弾なくこのラウンドを終わる。
 

2R、前に出てきたペドロサ。
矢吹は足を使いながら、必要以上に詰めさせない。
矢吹が右の撃ち降ろしを叩き付けると、ペドロサは右ボディを撃ち込む、矢吹はやり返すように左ボディ。
下がる矢吹と追うペドロサの形の中で、緊張感のある攻防が繰り広げらる、

頭から飛び込みボディを狙うペドロサ。
ジャブで牽制する矢吹、ペドロサは潜り込むタイミングを試すように何度もトライ。

ここでダッキングしたペドロサに放った、矢吹の左フックがペドロサのテンプルを掠める…。
思わず「惜しい！」と声が漏れる。

しかし次の攻防ではペドロサが大きく右を振るう。
矢吹はガードで防いだが、緊張感は増幅する。

どんどん出て来るペドロサ。
コーナー付近では矢吹がアッパーから右ストレート、そしてジャブと
3つ連続でヒットさせるがそれでもペドロサは前に足を進める。

神経がすり減りそうな息の詰まる展開の中…
詰めたペドロサを迎え撃つように矢吹が左アッパーをボディにめり込ませる。
何事もなかったかのようなリアクションのペドロサだったが…。
数秒の間をおいてリングに崩れ落ちる。

リングでのたうち回るペドロサに、レフリーがテンカウントを数え上げる。
 
 

その瞬間、すべてが噴出したように声を上げて泣いてしまった。
倉敷でユーリ阿久井 政悟(倉敷守安)に敗れ、有力ホープの座から転げ落ちる寸前。
組まれた試合は世界ランカーとの試合…
負ければ世界を狙うことにおいては色々なものが崩壊する可能性もある。
矢吹は文字通り崖っぷちだった。

勝てるだろうという試合ではなかった。
 

移籍のとき、矢吹がチャンスの多い東京に行くと勝手に思っていた自分は、
まさか矢吹が中日本のジムに移籍するなんて思っていなかった。

「中日本に応援してくれる人達がいるから」

そう言って中日本に残った矢吹。
もう見れないと思っていたから、その驚きと喜びは大きかった。

移籍初戦は倉敷での敗北…「負けたら引退」を公言していたから、これで矢吹は終わったと思った。
その場にへたり込み、ぐうの音も出ないほどに落ち込んだ。
 

でも矢吹は…刈谷のリングに帰ってきた。
負けて帰ってきた矢吹に用意されているのは凱旋などではなく、
もう一度世界を目指すための、サバイバルなギャンブルカード。
 

矢吹の入場曲「ヒーロー」が鳴り響く中、現れたのは悲壮な決意を背負った矢吹だった。
イチかバチかの試合で…矢吹は世界ランカーを圧倒的に沈めた。

まさにヒーローの矢吹が刈谷に戻ってきた瞬間だった。
待っていた…、たった数ヶ月だけど、本当に長かった。

阿鼻叫喚するように泣きじゃくる自分。
周りのドン引きを気にする余裕などない。
 

刈谷あいおいホールは歓喜に包まれ、観客の両腕が天に突き上げられる。
一番最初にリングに飛び込んだのは弟の力石 政法(緑)。
兄を抱え上げる。
 
 

勝利者インタビューでは…観戦に来ていたユーリをリングに上げ、
「日にちとかが合えばもう一回」と口にした矢吹。
 

一度ついた決着だが、世界ランカーを撃破し、ユーリの持っていない世界ランクを手に入れた矢吹。
リベンジマッチの資格は充分にあるだろう。

ユーリサイドも、矢吹戦以降、なかなか試合が決まらなくなっているらしい。
はるか先に進んでいった中谷 潤人(M.T)を追いかけるユーリ。
試合枯れで時間を消費している場合ではないだろう。

矢吹vsユーリⅡ…どこかでまた、必ず実現するカードだと思っている。
 
 

 

試合後は興奮の中、様々な知り合いと喜びを分かち合い、中日本のファン達で「勝手に祝勝会」を敢行。
東京から観戦に来たファンも混ざり、いい酒を飲んだ。
 
 
 

そう言えば、試合会場に大好きなボクサーだったブルドーザー 大島 卓己(薬師寺)を見かけた。
今はサラリーマン、元気にやっているという噂を聞いた。

もう、トランクス姿は見れないんだな…と、遠くから眺める。
 

試合前、佐伯 瑠壱斗(岐阜ヨコゼキ)が挨拶に来てくれた。
これから、大変な思いを沢山するだろう。
リングの外で、挑まなければならないことが沢山あるだろう。
…戻って来てくれて本当にありがとう。
泣きそうになった。
 

色んな感情が入り混じった日、しばらく余韻に浸りたい。

7月には近藤 冬真(蟹江)、松下 拓磨(市野)、中村 祐斗(市野)が…

激しいサバイバルに敵地へ挑んで行く。
そして7/15、7/29の二つの興行でも、またエグい勝負が行われる。

しばらく余韻に浸ったら、またハラハラしたり胸をえぐられたり。
精神の起伏の激しい日々を送ることとなる。

ファンをやるってのも…意外と大変。
でも…人生捧げたくなるほど、楽しい。
 
 

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