2019/03/31 -愛知・刈谷市あいおいホール- 7試合目、セミファイナル(中日本ボクシング観戦記) ボクシング選手名鑑ピックアップ!
戸谷 彰宏(蟹江)の引退式が終わり、6回戦の試合が始まる。
【スーパーフェザー級6回戦】
今田 雄大(蟹江) vs 太田 卓矢(とよはし)
今田 雄大 13戦6勝(3KO)4敗3分 サウスポー
太田 卓矢 9戦6勝(4KO)2敗1分
先にジャブを突いていったのは今田。
サウスポーの今田に対し、右ストレートをボディに撃ち込む太田。
1R中盤、右クロスをヒットさせると、長いパンチで次々捉える太田。
ラウンド終盤に差し掛かろうかと言う所、今田の左ストレートが強烈に太田を捉えると、
太田がもらいながら撃ち込んでいき、激しい撃ち合いに…
予想通りの激闘になるかと思われた矢先、
太田が強烈に右ストレートを突き刺して今田が痛烈にダウン。
立ち上がった今田に一気に襲い掛かる太田だが
ボディに伸ばしたストレートにローブローの注意が与えられ、残りわずかな時間をロス。
しかし、仕切り直した直後、ラウンド終了ぎりぎりで右ストレートを突き刺し、
太田がこのラウンド二度目のダウンを奪ってみせる。
2Rもまた、ストレートの撃ち合い。
強烈に被弾した今田が足元をふらつかせた瞬間。
今田コーナーからタオルが投入。
TKOタイムは2R 31秒
中日本激闘王決定戦…そんなことを言って騒いでいた自分を恥じる。
この試合、タオルがなければ、今田は何度も倒されながら太田に向かっていっただろう。
選手同士の仲がいいジム。
直前には同僚の引退式。
期するものがないはずがない。
今田はきっと「頑張り過ぎる」試合をしただろう。
三重で菅原 秀馬(市野)の強打に襲われながら
立ち向かっていった今田の姿を思えば尚更…どうしてもそう感じてしまう。
もしかすれば、後半に向かって逆転があったかもしれない。
しかし…激闘は様々なものを奪い去る。
投げ込まれたタオルに、目を覚まさせられた思いだった。
今田にはまた…次がある。
中日本を代表する激闘派である太田。
漆黒の弾丸の異名があまりにもしっくり来る。
被弾恐れずに突っ込んでいく選手は「弾丸小僧」と呼ばれる。
日サロで真っ黒に焼いた体で、文字通り弾丸となる…まさに漆黒の弾丸。
この先も、激闘派を貫くつもりなら…。
この日、今田をタオルが救い出したように、いつか太田にタオルが投げられる日が来るのかもしれない。
手を出していれば、レフリーは止めるタイミングを失う。
激闘派が極まれば極まるほど、それを救い出す比重はタオルにかかる。
激闘派にとってタオルはある意味、宿命だ。
タオルを投げれないセコンドは、激闘派を創ってはいけない。
だからこそ、いつかその時が来たとき、太田にはその負けに心折れない覚悟を持って欲しいと思う。
タオルが投げられたなら、仕方ない…激闘派の看板を背負うなら、そう割り切れるだけの覚悟を。
「撃たれるボクサーは長く続けるべきではない」というボクシングの鉄則もある。
激闘派は太く短くあれ…そこにもまた覚悟を。
勝利の瞬間、コーナーポストに駆け上がって勝利の喜びを爆発させようとした太田だが…
足を踏み外して、ズルズルとコーナーポストから滑り落ちる…。
人懐っこくて、どこか笑える太田らしい一幕。
叶うことなら、このボクサーをずっとずっと見ていたい。
今更、彼のスタイルに対してどうこう言うつもりもない。
ボクサーが、こうありたいと願う姿があるなら、そうあって欲しいと願うだけだ。
だらかこそ、太田が激闘派を貫く覚悟を持つのなら、こちらも、覚悟を持とうと思う。
愛すべきボクサーが、ずっと見ていたいボクサーが…そのボクサー生命を削るような戦いをしていく。
そこから、目を背けずにいる覚悟を…。
【ウェルター級6回戦】
相徳 恒彦(橋口) vs 松井 敦史(薬師寺)
相徳 恒彦 13戦4勝8敗1分
松井 敦史 5戦4勝(4KO)1敗
1R、どっしり構える松井に対し、回りながらジャブを突いていく相徳。
手数のよく出る相徳に対し、ガードでしっかりブロックしながら、的確に強打を撃ち込む松井。
捉える場面では強烈に効かせるが、圧倒的な手数で愛徳がラウンド先取か…。
ラウンド終了直前、松井の右ストレートが突き刺さり、相徳が揺れる。
2R、ガードを固めて前に出る松井に対し、とにかく撃ちまくる相徳。
松井に攻撃を繰り出す隙をなかなか与えず、ガードの上からでも叩きまくることで、
どんどんリズムに乗っていくように見える。
…しかし、6Rでこのハイペース、最後まで持つのだろうか。
手数少ない松井が、まるで撃たせて消耗を誘っているかのようにも見える。
強烈な左ボディを突き刺した松井。
手数は少ないが、時折繰り出す強烈な一撃で確実にダメージを与える。
ラウンド終盤、相徳の細かいパンチをもらいながら前に出て次々に捉えた松井。
相徳は何度もバランスを崩す。
3R、序盤は足を使っていた相徳だったが、徐々にその場にとどまる時間が増える。
しかし…まだ相徳の手数は止まらない。
松井が強烈に左ボディを差し込んだ次のシーン、お互いの右フックが相撃ちし相徳が揺れる。
やはり、一発の威力は段違いで松井に分がある。
しかし…猛烈な手数を全て防ぎきることはできず、松井の被弾も増え始める。
終盤、左を空振りした松井に相徳の右ストレートが突き刺さる。
これまでダメージを見せなかった松井だったが、ここで初めてバランスを崩す。
4R序盤は見合う時間が長くなったが、ラウンド中盤に入るとまた、
頭をくっつけた状態で、相徳が猛烈な手数で攻め立てていく。
松井が右フックを大きく空振りしたところに相徳の頭が当たり、松井が鼻血を吹き出す。
手数ばかりに目が行ってしまうが、松井が大きく撃ち込むシーンでは、
しっかりと外す相徳…近い場所でのディフェンスは巧い。
このラウンド、相徳に押し込まれて、松井がズルズルと下がり始める。
ここまでマイジャッジ…40-36で相徳。
残り2R…松井はどこかで勝負をかけなければ苦しい状況。
5R、ラウンド開始とともにラッシュを仕掛けた松井。
激しい撃ち合いの中、威力に分のあるのはやはり松井…効かされた相徳、手を出しながらも後退。
倒さなければ勝ちの怪しい状況、試合終盤のラッシュはイチかバチかだ…。
何度も効かされ、足元をグラつかせる相徳に強烈にパンチを浴びせる松井だったが、
なんとかクリンチに逃た相徳。
…耐えきった相徳。
その後、相徳は詰めてガチャガチャと攻め立て…消耗した松井は押し込まれてしまう。
6R、開始とともに距離を取った相徳。
ポイントアウトするか…しかし、距離が詰まると手数で攻め立てる。
時折強烈に松井が捉えても、また手数でそれ以上の松井の追撃を遮断してしまう。
どんどんどんどん押し込んでいく相徳…そのまま試合終了のゴングが鳴り響く。
マイジャッジ 60-54 相徳
公式ジャッジ 59-57、58-57、57-57
2-0 相徳
ダメージを獲ればドローもありか。
しかし…あまりにも手数が違い過ぎた。
1R時点で、相徳が消耗すると思った人も多かったはず。
しかし…その手数は6Rぶっ通しで繰り出された。
距離を詰めて細かく撃ちこむことで、
これまで何度もKO劇を演出してきた松井の右ストレートが走る距離がなくなった。
パンチ力はないように思える、スピードがあるわけでもない。
ただ、猛烈なスタミナと、近いところで要所要所のディフェンスがある。
自分の得手不得手をしっかり認識し、押し切った相徳。
九州にこんな奴がいるのか…驚きで呆然としてしまう。
誰しもに勝つような「勝ち続ける」選手ではない。
しかし…日本ランカークラスでも、この選手に苦戦する…勝ちをさらわれる選手はいると感じる。
そして、この選手の魅力にとりつかれるファンも大勢いるだろう。
現に敵地のはずのリングで、相徳に向けられる声援は後半に向けて大きくなって行った。
とんでもなく魅力的な選手だ。
松井はガードの上から撃たせたことで、相徳を乗せてしまったようにも感じる。
スピードもパンチ力も松井が上…しかし、試合に勝ったのは相徳。
5R、形勢不利の中、ラッシュを仕掛けた松井。
倒せなければ負け…それを覚悟したような一気のラッシュ。
あのラウンドに賭けに出た松井が…賭けに負けた。
賭けを行うタイミングとしては、最も適切な場面だったと思う。
選択は間違いではなかった…あの場面で賭けに出れる松井は、やはり強い選手だ。
現在36歳…松井のタイムリミットは近づいている。
手痛い敗北を喫した形だが…日本ランクを手に入れるような力はある選手。
まだ…終わったわけじゃない。
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