2022/03/20 -愛知・刈谷あいおいホール- 前置き(中日本ボクシング観戦記) ボクシング選手名鑑ピックアップ!
矢吹 正道(緑)が敗れた。
WBC世界ライトフライ級タイトルマッチ、初防衛戦。
寺地 拳四朗(BMB)が大きくスタイルを変え、
徹底的にプレスをかけ、右ストレートを撃ち抜いた。
ショックだった。
衝撃だった。
その翌日、刈谷あいおいホールでの中日本ボクシングが開幕した。
Twitterのタイムラインは一夜明けても、矢吹が敗れた世界戦の話題で持ちきりだった。
自分の頭の中も、矢吹を貫いた右ストレートの映像が繰り返し繰り返しリピートされてしまう。
目の前でこれから始まろうとする戦いに対してどう気持ちを切り替えようか。
自分の気持ちをこねくり回しても、どうにも整理がつかない。
会場内でもこの話題になるかと思ったが、気を使ってか、それとも自然にか、
この話題を自分に向ける人はいなかった。
それぞれがどんな思いを抱えているかはわからない。
後輩思いで、憧れる選手たちも多い。
そして、そのドラマを噛み締めて来たファンも多い。
刈谷は矢吹がその多くの試合を戦った会場だ。
この場所に、昨夜のショックを引きずる人は多くいるはず。
話題は目の前の試合に関してのものばかりだった。
それが逆に、それぞれの思いの強さと、優しさを感じさせた。
配信が開始される少し前、会場の外へと抜け出し、刈谷あいおいホールを眺める。
この会場で戦った矢吹の姿を思い出す。
悪ふざけで、刈谷でボクシングを見る自分の顔をSNSを晒しまくった矢吹。
あまり顔を出すことのなかった自分だったが、なし崩し的に顔を露出させる機会が増えた。
そもそも、ボクシングは隠れて見ていたものだった。
矢吹のイタズラがなかったら、生配信なんて目立つマネはしなかっただろうと思う。
色んなきっかけを与えてくれた選手。
なのに、日本王座獲得の瞬間も、世界王座獲得の瞬間も…
コロナの都合で肉眼で見ることはできなかった。
そうこう思い返すうちに、ある矢吹の言葉が頭をよぎった。
急逝した4回戦ボクサー、田中 連志(トコナメ)の名前をトランクスに入れたときの言葉。
「自分は自分にできることを」
後輩思いの矢吹らしい、行動だった。
彼の名を刻んだトランクスで、矢吹は世界を獲った。
そして、まだその傷も引かぬまま、腫れあがった顔で田中の家を訪れ、仏前に手を合わせた。
自分にできること。
今から目の前で繰り広げられる戦いに、心から感動し震えること。
そして、その面白さを少しでも多くの人に知ってもらうこと。
後輩思いで、自分の事だけじゃなく、中日本のボクシングのことも思ってくれた矢吹。
だからこそ、矢吹が可愛がった後輩たちの戦いを全力で楽しんで
大声ですげーぞ!と騒ぎ倒す。
自分にできることはそれしかないじゃないかと思い直す。
会場に戻ると、もう観客が入り始めている。
この日のメインイベントにはラウンドガールも戻って来た。
少しずつ、少しずつ活気が戻りつつあることを感じる。
配信の準備も整い、第1試合のゴング。
今年の中日本が始まった。
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