2018/11/23 -立山町民会館- セミファイナル、ファイナル(中日本ボクシング観戦記) ボクシング選手名鑑ピックアップ!
【スーパーフェザー級4回戦】
岡田 和晃(富士) vs 中野 精(杉田)
岡田 和晃 10戦3勝(2KO)7敗
中野 精 1戦1勝(1KO)
1R、いきなりジャブを突き刺した中野。
さらに右フックで岡田の腰が落ちる…攻め込んでいく中野。
ペースを握られ、コンビネーション浴びる岡田だが左の相打ちで中野の勢いを止める。
岡田はラウンド終盤、遠い距離を維持しながら踏み込んで勝負し始める。
2R、岡田は立て直しに成功したか…一旦試合は落ち着く。
そんな中、飛び込みながら撃つ左フックが中野を捉え始める。
ラウンド終盤に差し掛かろうと言う所、飛び込んで左フックを撃ち込んだ後、右フックを続けた岡田。
強烈に捉えて中野がダウン…立ち上がった中野だが…。
ダメージはかなり深そう、一気に襲い掛かりラッシュを仕掛ける岡田。
手が出なくなった中野に対し試合はストップ寸前…レフリーが止めるタイミングを探る中、
間一髪クリンチに逃れた中野…まだまだ勝負は終わらない。
3R、攻勢を強める岡田に対して、中野の鋭利なコンビネーションが岡田を襲う。
逆転もあり得る危険な角度…だか、岡田の左フックは何度も中野の顔面を弾き、ダメージを植え付ける。
岡田の左はボディから顔面へ上下に襲う…足を使ってコンビネーションを撃ち込む中野だが…。
岡田の勢いは止まらない。
4R、お互いに振りの大きくなった最終ラウンド。
綺麗に捉えあう場面は減るが…、そんな中でも岡田の左フックはやはり有効に中野を捉える。
高山から来たであろうファンの大きな声援を受け、顔面を鮮血に染めながら逆転を狙う中野。
プロデビューから5年半、やっと手が届くB級昇格の4勝まであと数分の岡田。
二人の「勝ちたい」が絡み合う中、試合終了のゴングが鳴り響く。
マイジャッジ 39-36 岡田
公式ジャッジも39-36×3で岡田。
4年8カ月ぶりの勝利に歓喜の岡田サイド。
実は試合前、富士ジムから来ていたファンの方に話を聞いていた。
負け続けている4年以上…岡田は毎日毎日、ジムに通い続け、コツコツ努力してきた。
絶対に勝ってほしい…と。
そんな話を教えてくれたファンは、リングから笑顔で降りてくる岡田の前で、こらえきれずに涙を流す。
3勝7敗の大幅負け越し、4年以上白星なし…。
そんな選手でも、背負うドラマは濃厚で、そして見ている者の心を揺さぶる。
凄いのはチャンピオンだけじゃない。
地方のローカルなリングにも、ヒーローたちがいる。
この日の岡田は、ダウン寸前から試合を盛り返し、そして長い努力の月日を成就させた…
まさにリングの上のヒーローだった。
敗れた中野…。
これがプロ2戦目、プロのリングに立つ以上、そこには凄まじい努力があるのだろう。
しかし…当然の話だが、プロとして5年以上続けた岡田の努力を、
デビュー1年に満たない中野が上回ることは決して簡単ではない。
自分が努力している間、相手も努力している…。
洗礼と言う言葉がしっくりくる敗戦にも思える。
この日、横断幕も用意され、華々しかったプロ2戦目の中野のリング。
敗北してしまったが…飛騨のプロボクサーは、今のところ中野しかいない。
初の敗戦のダメージは大きいのかもしれないが、糧にして、より強くなる以外に選択肢はないと感じる。
負けに負けるな。
この試合の敗戦が、中野のドラマをより濃厚にする未来を信じていたい。
【60Kg契約4回戦】
長谷 和紀(トヤマ) vs 丸谷 雄亮(高崎)
長谷 和紀 1戦1勝(1KO)
丸谷 雄亮 4戦1勝(1KO)3敗 サウスポー
セミファイナルの中野が飛騨地方唯一のプロボクサーなら、
ファイナルには富山県のジム所属の唯一のプロボクサーが長谷。
デビュー2戦目から、富山のリングを背負う…メインイベンターとしてリングに登場。
対するは東日本のボクサー丸谷。
中日本のボクシングのファンとしては、
やはり東日本のボクサーには負けて欲しくない思いがある。
1R、サウスポーの丸谷に対していきなり右ストレートを撃ち込むと、コンビネーションで襲う長谷。
勢いに乗って一気に序盤を制した長谷。
近い距離での攻防で丸谷のパンチの合間に強烈な左右フックを撃ち込んでいく長谷。
2R、飛び込み際、丸谷の左ストレートが突き刺さる。
しかし、長谷は臆することなく、鋭く踏み込み、近い距離での攻防を圧倒する。
かなりダメージが蓄積されたようにも思える丸谷。
このままいけば…KOシーンが訪れるか…。
3R、序盤に丸谷側のコーナー近くで足を滑らせた長谷。
床に着いた水を拭くようにレフリーから指示が出る…レフリーも一緒になって水分を拭きとる。
試合再開後、今度はまた別のコーナーで足を滑らせる長谷。
もう一度リングの拭き取りが行われ、長谷はシューズに松脂を付け直す。
改めて試合が再開…この時間がこの試合の流れを変えたようにも見えた。
相変わらず、長谷はスピード豊かに、当て感よく丸谷を襲うが…。
この空白の時間の間に丸谷側の整理がついたか、それとも長谷にアクシデントがあったか…。
丸谷が手数で長谷を上回るようになる。
相手の顔面を綺麗に跳ね上げるのは長谷の方。
ダメージも長谷の方が与えているように見えるが…丸谷はがむしゃらに手を出す。
4Rになると、さらに長谷が失速。
手数の差は開いていき…試合終了のゴング。
マイジャッジ 39-37 長谷。
しかし、一抹の不安…丸谷の手数をとられれば…ドローもあり得る。
長谷サイドのセコンドの
「お前その距離以外、手数全部負けとるぞ!」の怒声も耳に残った。
ジャッジ1人目 39-36 長谷。
そして…2人目、3人目は…
38-38
1-0のドロー。
内容的には長谷の勝ちでもおかしくなかった試合だったと思う。
しかし、劣勢に立っていた丸谷が、がむしゃらに手を出し、試合をドローに持ち込んだ。
丸谷の根性の成した結果だったと思う。
ただ…あのスリップさえなければ。
そんな思いを抱きつつ、それを言い出せば、きっとボクシングの歴史が変わるだろうとも思う。
あの中断で変わった流れを引き戻す力が長谷になかったと見るのが妥当なのだろう。
逆に、あそこから手数でまくった丸谷が称賛されるべき試合だ。
力的には長谷が上…それでも、試合結果はそれとは別。
決して試合を投げず、手を出し続けた丸谷…素晴らしい試合をしたと思う。
That’s Boxing
自分の運命は二つの拳で切り開く以外にない。
ボクサーの拳は、時に不運でさえ討ち砕くものだ。
デビュー2戦目のメインイベンター。
ほろ苦い檜舞台となった。
誰よりドラマティックであれ。
この試合はきっと起点になる。
この日、元日本ランカーのユキヤ ハナブサ(カシミ)が一緒に観戦してくれた。
12月には弟の英 洸貴(カシミ)が全日本新人王戦に挑む。
そして、そのお父さんも一緒。
家族仲のいい英家。
礼儀正しく、人懐っこく、周りの人たちに愛されているように感じる。
これまで僕がおざなりにしてきてしまった北陸のボクシングの色んな話を教えてくれる。
帰り、富山駅まで送ってくれると言ってくれた英父ちゃんの誘いを断り、少し会場に残る。
英父ちゃんには世話になりっぱなしだ。
「英父ちゃんと仲良しだから、英 洸貴を推している」と思われてもかなわない。
誤解無きよう書いておくが、そんなこと関係なしに英 洸貴は注目の逸材だ。
きっと全日本新人王のリングで、東京のファンにもわかってもらえるだろうと思う。
持ってきたWINをトヤマジムのトレーナーさんに渡しに行く。
滅多に来れるわけではない土地、これを逃せば手渡す機会を失うかもしれないと思ってのこと。
そしてもう一つ、IBF女子世界アトム級王者の花形 冴美(花形)にサインをもらいたい…と、サインの列に並ぶ。
「せっかくならWINにサインをしてもらおう」
自分が書いた記事が載っているボクシングのフリーペーパーWIN。
ここに世界チャンピオンのサインをもらえれば、飛び切りの記念になる。
そう思ってカバンをごそごそしているうちに自分の番…しかし…
カバンごそごその間に自分の番を迎えた為、並んでいるとは思っていなかったようで…
自分が列の一番最後…。
最後のサインが終わったと思ったチャンピオンは手早く荷物を片付け始める。
その素早い動作は、帰りを急いでいるように見える…。
「サイ…」まで出た言葉を諦めて、試合会場を出る。
「生で試合見たこともないのにサインくれなんて…図々しいよな」
なんてことを言い聞かせて、泣く泣く自分を納得させ、
階段下に用意された喫煙スペースで煙草を吸っていると…
目の前に花形チャンピオン。
車を待っているようだ…。
チャンス!と思い、写真だけ撮らせてもらう。
快く応じてくれた。
荷物を片付けてしまったチャンピオンに、
ここでサインをねだるのも…と思い、手元に持っていたWINを
「せめて受け取ってもらおう」と思って差し出す。
すると…「これ、もう持ってます!」の返答。
頭がポーっとしてしまうくらいに感激して、そのあと何を言ったのか覚えていない。
世界チャンピオンも…読んでくれたんだ。
そこからフワフワした浮遊感で五百石駅に向かい、電車で富山駅へ。
名古屋行きの高速バスは最終より一本早い便がまだ残っていた。
富山で旨い海の幸でも食べたかったが、最終は混むと聞いたため、
うまい飯を犠牲にゆったりとした帰路を選ぶ。
朝と同じく、慌ててコンビニのおにぎりを胃袋に詰め込んでバスに乗り込む。
そのまま、ぐっすりと就寝。
行きと同じく、「ひるがの高原SA」で目が覚める。
朝降り始めた雪はやみ、凍てつくような寒さだけが残っていた。
「駆け出し」なんて言われることもある4回戦だが…
その言葉には何か違和感を感じる。
1試合、1試合…運命のかかった勝負が繰り返されるリング。
人生のかかった大勝負に立つ4回戦ボクサーたちは、れっきとしたヒーローたちに見える。
ヒーローたちが死闘を繰り広げた。
寝起きの頭で、そんな富山のリングを思い返す。
客席にいたのは選手への愛情の濃い人たちばかり。
地方で行われたオール4回戦。
空気感は抜群に気持ちいいものだった。
また来たい…富山のリングは何年も記憶に残る思い出の興行になったように思う。
休憩時間を終え、高速バスが走り出す。
明後日には久々に刈谷あいおいホールの興行。
名古屋が近づくにつれ、気持ちが切り替わっていく。
試合後の余韻から、試合前のワクワクへ…。
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