2022/12/11 -愛知・刈谷あいおいホール- 第5試合～ファイナル(中日本ボクシング観戦記)　ボクシング選手名鑑ピックアップ！

津田康光　デビュー戦
久郷舜平　デビュー戦

俊敏にリングを飛び回りながら、鋭利に拳を突き刺す津田。
デビュー戦のゴング直後からしっかりと出入りを見せる。
対して久郷はどっしりと構え丁寧に拳を突き出しながら、
2R後半に入ると、素早い踏み込みで飛び込み、
相手をロープに押し付ける場面を作り始める。

3R、久郷が強いプレスで徐々に津田のスペースを奪い、
ロープ伝いの足運びが目立つようになったころ、
津田が強烈に拳をヒットさせ渡りかけた主導権を奪い返す。

サイドへのステップで津田の後続打の多くに空を切らせるが、
避けきれる数ではなく、複数の被弾。

ここで試合は決定付かず、強打がヒットする度に主導権は行き来し、
最後は久郷がテンプルへ強烈な一撃を浴びせ、津田がクリンチに逃れたところで
タイムアップのゴング。

マイジャッジは39-37で津田。
公式ジャッジも39-37×3の3-0で津田。

デビュー戦から上々の立ち上がりを見せた津田に対し、

落ち着いて期を待ち、一撃を当ててから攻め込んだ久郷。
迫力のある拳をぶつけ合った両者。
バンタム級よりもはるかに重い階級の戦いに見えた。

強烈な一撃をもらっても、そこから展開を取り返すことを繰り返した二人。
今後タフな試合を重ねてくれそうな匂いもしたデビュー戦。
次が楽しみに思えた。

串田凌　デビュー戦
濱田広志　デビュー戦

ゴングが鳴るとスピードのある大きな左フックを鋭く突き刺す濱田。
後手に回りかける串田だったが、展開が落ち着くと、
素早い踏み込みの左ジャブを真っ直ぐ打ち出し、全く反応できなかった濱田がダウン。

再開後、取り返そうと攻めて出る濱田。
コーナーに串田を押し込んでの乱打戦になる中、
押し込まれていた方の串田が左フック一閃。
リングに倒れ込んだ浜田にレフリーは試合をノーカウントでストップ。

TKOタイムは1R 1:56

試合開始直後に見せた威力もスピードもある濱田の左フック。
わずか10秒でデビュー戦から期待値を高めた。
しかし、ここを耐えた串田は滅多に見れないジャブでのダウンシーンを演出。

さらには攻め込まれる中での左フック一閃。
いずれも鮮烈な印象を残すもの。
32歳と遅めのデビューだが、先を期待したくなる内容だと感じた。

濱田に関しては、攻撃力が高いのは間違いないと感じるが
まだまだ、そのフォルムを掴むのには戦った時間が短すぎた。
出せていないものも多くあると思う。
次に挑んで欲しいと思う。

■WBOアジア太平洋ミドル級タイトルマッチ
【ミドル級10回戦】
能嶋宏弥(薬師寺)　vs　可兒栄樹(T&T)

WBOアジア太平洋ミドル級王者
能嶋宏弥　11戦10勝(5KO)1敗

可兒栄樹　10戦6勝(2KO)2敗2分

左一発一発に威力がある…何とも嫌なクセモノ挑戦者。
しかし、能嶋はジャブで主導権を握りながら、主導権を握り続ける。
3Rには代名詞の”新幹線ストレート”を撃ち下ろし気味に放ってダウンを奪取。

新幹線のように真っ直ぐ伸びるストレート。
予備動作の少なこの右で数々の相手に甚大なダメージを与えて来た。
ここを立ち上がった可兒。窮地を脱すると中盤からはボディ攻めへ。

しかし…能嶋の足を止めるには至らず。
マイジャッジは98-91。

判定は95-94、98-91、97-92の3-0と思ったより接近したが
能嶋の完勝劇と言っていい内容だと感じた。

戦績としてはまだ10戦の若い挑戦者。
しかし、特殊な左を持ち、決して易しい相手ではない。
前の手が強い…厄介極まりなく、この前の手を軸とした
攻め手のパターンが増えてくれば攻略が難しい選手になる姿も想像できる。

タイトルマッチと言う大きな大きな経験を踏んだ。
より大きく、より強くなって欲しいと感じる好選手だった。

そして、可兒が見せた、足を使う能嶋に対しての腹攻めは定石の一つ。
決して間違いではなかったはずだ。
しかし、能嶋は崩れなかった。

挑戦者がどんなに正しい選択をしてもそれを弾き返す。
自分のボクシングを崩さず、強さを示して試合に勝つ。
チャンピオンのボクシングを見たように思う。

足を使い長いパンチを差し込んで行く。
必殺の新幹線ストレートでダウンを奪う。
能嶋が、能嶋のまま、より強くなり、王者として刈谷に凱旋した試合。

「このチャンピオン、俺、デビュー戦から見てたんだ。」

自慢がまた一つ増えた。
ありがとう、能嶋チャンピオン。

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