2017/9/3 刈谷あいおいホール-1試合目、2試合目(中日本ボクシング観戦記) ボクシング選手名鑑ピックアップ!
【64.5㎏契約4回戦】
ナビン・アチャラヤ(西遠) vs 片岡 晃誠(蟹江)
・ナビン・アチャラヤ デビュー戦
・片岡 晃誠 1戦1勝
拳法の日本王者だったナビン・アチャラヤ。
元総合格闘技の選手とも伝えられている。
デビュー戦をスーパーライト級で戦っている片岡は、少し上の契約ウェートでのこの試合。
片岡サイドが体重を歩み寄った形か…
だとすれば、来年の新人王戦は片岡がスーパーライト級、アチャラヤがウェルター級での出場が予想できる。
来年の新人王戦を楽しむためにも、押さえておきたい試合。
それが、僕の中でのこの試合の位置づけ。
デビュー戦で接近戦の強さを見せた片岡。
この試合でも圧力をかけていき、後ろに体重を乗せた構えのアチャラヤは下がりながらの応戦になる。
オープニングヒットはアチャラヤの右に合わせた片岡の右ストレート。
撃ち合いになると、距離の近過ぎる時間が長引くが、
アチャラヤはボディを叩いて優勢をアピール。
2R、アチャラヤが前に出て、二人は撃ち合いに。
アチャラヤが優勢になりかけるが、今度は片岡がボディに強烈なパンチを集め、
さらに前傾になった所にアッパーを突き上げて、展開を一気に変える。
片岡の強烈なアッパーが何度もアチャラヤの顔面を跳ね上げ、
ラウンド終了直前には一気のラッシュでアチャラヤを棒立ちにさせる。
3R前半、強烈なアッパーは相変わらずアチャラヤを捉え、
いくつか片岡がパンチをまとめたところでレフリーストップ。
アチャラヤには撃ち返す余力もあり、早めのストップに思えたが、2R終盤のアチャラヤの撃たれ方を見ると、
“もう一度いいのが入ったら…”の思いがレフリーにあったのかもしれない。
ストップ直後、足元が定まらなかったアチャラヤを見ても、ストップは妥当なものと思えた。
TKOタイムは3R 1:08。
圧巻の片岡。
デビュー戦でもこの試合でも、乱戦に近い状態になりそうな場面で
強烈なパンチを的確に撃ち込む姿は、なかなかの強さを感じさせてくれた。
近い将来、今年の中日本新人王、伊藤 為治(浜松堀内)との戦いも見てみたい。
アチャラヤは、体の強さもあるものの、右アッパーを最後までもらい続けてしまった部分など
ボクシングという意味ではまだまだ未完成なように感じる。
それでも、逆に、それは伸び代と言うべき部分な気もする。
特筆すべき柔らかさは武器になっていくと感じる。
今後、ぐんぐん実力を伸ばして、中日本をかき回してほしい選手。
【68.0㎏契約6回戦】
トミナガ シンペイ(中日) vs 浅原 亮弘(駿河男児)
・トミナガ シンペイ 10戦5勝(4KO)5敗
・浅原 亮弘 12戦6勝(1KO)4敗2分
昨年の中日本新人王同士の戦い。
ウェルター級を制したものの、中日本・西部日本新人王対抗戦で敗れたトミナガ。
ミドル級を制し、全日本新人王決定戦まで勝ち上がった浅原 亮弘。
両者が階級を歩み寄っての対戦となった。
階級的にも、実績的にも格上は浅原の方だが、
両者、この試合に勝てばA級昇格の権利を手に入れる立ち位置は同じ。
リングアナの眞野和之に名前をコールされると雄叫びをあげるトミナガ。
気合い充分、1Rのゴングが成ると、両手のグローブを胸の前で「ズバン!」と打ち鳴らして浅原と対峙する。
完全なベタ足でのっしのっしとプレスをかけるトミナガ。
以前より、少しスタンスが横に広い。
相手の逃げ場所を制限する意図か、檻の中で相手を追いつめるように歩いていく。
浅原のフックはトミナガのテンプルを捉えるも、トミナガは止まらない。
バランスが悪く、不格好なもらい方をしながら相手をロープに追い詰めると、
えげつない打撃音をさせながら、浅原のボディを捉える。
顔面を一切狙わない…足を殺しにかかったか…とにかくボディを狙う。
浅原は的確にパンチを叩き込み、押し込まれるシーンを作ってしまいながらも
数多くのヒットを奪い、まずは優勢にラウンドを進める。
トミナガのボディをどれだけ取るかで割れそうなラウンド。
2R、トミナガの入り際を捉えていく浅原。
手数も多く下がりながらではあるが、トミナガをしっかり捉える。
浅原のいきなりの左ストレートを被弾し、バランスを大きく崩すトミナガ。
踏み止まると、そのまま前に出てとにかく強烈なパンチを狙っていく。
思わず「そーれ!」なんて声を上げたくなるほど溜めて撃つ大きなパンチ。
洗練されたボクサーのそれとはまったく異質。
そんなパンチが2R後半に浅原の顔面をクリーンヒット。
3R、浅原の左ストレートはトミナガを捉え、トミナガは何度もバランスを崩す。
しかし、実はディフェンスのいいトミナガ…バランスの悪さから不格好ではあるものの、
致命傷は避けているように見える。
そのまま相手を押し込んで、左右フックをブンブン振るう。
強引に押し込んで、体制が崩れたところに撃ち込む形で、
ブサイクで強烈な左フックをヒットさせるトミナガ。
多くのパンチをヒットさせたのは浅原だが、衝撃音の大きさに、
トミナガのパンチがヒットするごとに会場に「おぉ…」という声が響く。
4R、体力を削がれてしまったか、浅原は押し込まれるシーンが増える。
試合はドロドロの形に…トミナガが浅原を自分の展開に引き摺り込むことに成功したように見えた。
こうなると、トミナガは強い。
ロープに押しつけて、揉み合いのような形から、自分のフックを一番強く当てれるポジションになると、
「そーれ!」と大きなパンチを浅原の顔面に叩きつける。
近づくまでの被弾でバランスを崩しても、なりふり構わずドタドタと浅原を追いつめる。
5R、密着戦の中、浅原が右目をカット。
バッティングとの裁定。
ここのドクターチェックでは続行。
大き過ぎるほど大きいトミナガのパンチ。
空振りした勢いでよろけてしまうほど。
試合はドロドロ…展開は膠着。
スピード感の全くない…これがトミナガ劇場…そんな風に思えてしまう。
6R開始直後からも、しつこく攻めていくトミナガ。
しかし、ここで浅原の出血がおびただしくなり、試合がストップ。
試合は負傷判定に…。
隣から聞こえてきた声は58-57。
マイジャッジでは58-56。
いずれもトミナガだが…ドローまでは許容範囲にも思えた。
判定が読み上げられる。
58-57が3名。
トミナガファンの自分としては祈るような思い…。
勝者…
赤コーナー トミナガ シンペイ。
浅原は…引分けを挟んでの4連敗を乗り越え、敵地での試合も多くこなした。
あと1勝でA級昇格…この負けにめげずにどうか上を叶えて欲しい。
トミナガファンから見ても、浅原のボクシングも愚直な部分があり…好感を持てるものだと思ってしまう。
どちらがボクサーとして洗練されていたか…当然、浅原だろうと思う。
得意の左ストレートはトミナガを揺らす場面を作り、この階級の大きく振る相手に
手数で勝って行くのも浅原の得意な形だったと思う。
しかし、トミナガがそれを自分の土俵に引き摺りこんだ。
軽いフットワークもない。
強振するフック一辺倒。
それしかない…と思える男が、それを存分に生かせる状況に持ち込んだ。
足りないづくしのトミナガ。
平均値は低いボクサーだと思う。
しかし、飛び抜けたガッツと細かい工夫で、相手を飲み込んでしまう。
相手もろともブサイクにしてしまうようなスタイルが面白くて仕方ない。
押し込んで、強く撃つ。
細かいことはさて置いて、端的に示せばただそれだけの形。
解りやすさはそのまま面白さに直結すると感じている。
騒がれて欲しい。
この男の魅力にみんな気付いて欲しい。
そんな思い。
いつか、この男が中日本の中量級シーンの主役になる姿を想像する。
丸木 和也(天熊丸木)や丸木 凌介(天熊丸木)、田岡 大(タキザワ)…
そんなところと戦ったら…コテンコテンにされるだろうなぁ…。
でも…トミナガのスタイルがハマったら、やっぱり解らない。
この日、トミナガはA級昇格の権利を手に入れた。
この先、目指していくのはやはり…そういうレベルの相手。
これからトミナガは、化物たちがウジャウジャいる世界に突入していく。
この男の、ブサイクさ加減が、どこまで通用するか…ワクワク感でたまらない。
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