2018/4/8 -サントピア岡山総社Ⅱ- (中日本ボクシング観戦記番外編) ボクシング選手名鑑ピックアップ!
13:00を迎え、ゴングが打ち鳴らされる。
【スーパーバンタム級4回戦】
谷口 政治(結花) 3-0(38-37、38-36、39-35) 武内 大輔(斉藤S)
ずんずん前に出ていく谷口が強烈にボディを捉えて行き、さらに上に返すパンチもヒット。
2Rにはダウンも奪う…頭を下げて向かっていくため再三注意が与えられ、減点が課されるが…。
かなり厳しくも見えた。
距離ができれば竹内の逆襲が待つが、減点で勢いが衰えそうになるところを、
勇気をもって詰め続け、谷口が判定勝利を飾った。
中日本のリングで勝ちに恵まれなかった谷口…遠い岡山まで来て彼の勝つところを見られて本当に嬉しい。
おめでとう、谷口。
押し切った。
竹内はこれでデビュー3連敗。
そういえば…中日本にはデビュー4連敗からランカーになった矢島 大樹(松田)がいる。
どれだけ負けても…どこで諦めるかは自分次第だと思う。
頑張れ!
【ライト級4回戦】
土井 栄一(倉敷守安) 3-0(40-36、40-36、40-35) 片山 奎志(結花)
ぐんぐん前に出ていくブルファイター土井。
距離を潰され思うように戦えない片山は完全に押し込まれしまう。
足を使い始めてから流れが片山に向きかける時間帯もあったが、
押し込まれるうちに頻発したホールドで減点1…。
そのまま土井に流れが戻り、試合はフルマークで土井の勝利。
倉敷守安らしい選手。
中日本のリングでは片岡 晃誠(蟹江)に撃たれ続けながら前に出続けた土井。
今回は相手を見事に飲み込んだ。
「己の肉体を限界まで練り込め」
そんな守安会長の言葉を体現してほしい選手。
片山は残念…厳しいデビュー戦になったが、持ち合わせのない選手ではないように見えた。
これから次第、強くなっていく要素は充分に感じた。
西日本スーパーバンタム級新人王準々決勝
【スーパーバンタム級4回戦】
武田 誠人(倉敷守安) 2RTKO 森田 誠(ワイルドB)
鋭利でスピードに溢れた二人の殴り合い、プレスをかけて追い込んでいく武田が1Rにダウン奪取。
2Rには一気のラッシュでTKO勝利。
森田は負け越し選手だが…少しずつ武田に上回られての敗北。
この少しの差がどうしたら埋まるのか…そこだけだと思う。
その差がはっきりと白黒出てしまうのがボクシングなのだけれど…いや、だけど面白い選手。
武田は…今年の西日本獲ってもおかしくない実力者。
中日本新人王の西軍代表戦の対戦相手になる可能性も充分あると感じた。
ここで彼の試合を見れたことは収穫…。
今年の中日本新人王トーナメント、スーパーバンタム級は激戦区、
超期待の新生に武骨に戦い続けた選手。
全日本まで駆け上がれるかは、この選手を基準に見てみたいと思う。
【ミドル級6回戦】
西原 成紀(仲里) 6R判定 3-0(58-57、59-56、59-56) リーゼント 楠本(倉敷守安)
体躯の大きなリーゼントに対し、押し込んでいく西原が判定をモノにした。
迫力のある試合だったが、リーゼントはもう少し距離のある戦いがしたかったか…。
そこをしっかり潰した西原が見事…とも感じた。
ロングのパンチに威力を感じたリーゼント。
試合が終わる頃にはキマッていた髪型もぐちゃぐちゃになっていたが…それはそれで激戦の証。
距離が潰れたときにどうするか、維持するためにどうするか。
まだまだ伸びていくと思う。
西原はなかなかいい選手だったと思う。
しっかりと潜ってヒットを積み重ねていたのは、スピードで差を作った結果だと感じた。
あと1勝でA級昇格…高橋 ルガー 大毅(駿河男児)のような選手との試合が噛み合いそう…ぜひ見てみたい。
【スーパーフライ級8回戦】
藤本 耕太(江見) 8R判定 3-0(77-75、77-75、77-75) 長田 瞬志(堺東ミツキ)
上体をせわしなく振ってペースを落とさずに戦い続けた藤本が判定をモノにした。
長田の固いガードを、あの手この手で崩しながらハイスピードで動き回った藤本。
松浦 克貴(岡崎)との試合が見てみたいようにも思うが…まだ松浦はB級選手。
数年後にぶつかれば、きっと面白い…IQ値の高い試合になると思う。
長田は固いガードで堅実に藤本の攻撃を止め、前進していったが…
藤本のスピードに翻弄されたようにも見えたが、完全に崩し切られたようには思えなかった。
この選手には脳内で畑中 建人(畑中)をぶつけてみる。
ホープがこういった相手をどう崩すのか…崩しきれずに窮地に陥ることはないか…。
厄介な相手になるだろうと思う。
【スーパーフライ級8回戦】
ユーリ阿久井 政悟(倉敷守安) 1RTKO 矢吹 正道(緑)
ゴングが鳴ると同時に、一気に緊張感が高まる…。
見合ったまま、静かな時間が流れていく。
ビリビリとした緊張感を切り裂いた、ユーリのワンツー。
その瞬間に、試合が終わる。
奥深くにグサりと刺された右ストレート…わずかに反応した矢吹の顎を貫き…。
効かされてしまった矢吹はそのまま防戦一方に。
幾度かユーリの攻撃を逃れるモノの…その後は反応も鈍ってしまい、被弾を重ねる。
最後はロープ際で足元をふら付かせる中、レフリーが矢吹を救出。
試合の最初に突き出されたユーリの右ストレート。
僕の肉眼で見た中で、それは最も美しく、最も残酷な右ストレート。
試合が終わった瞬間に、その場に座り込んでしまった。
あまりにも衝撃的な結末に呆然とし、そしてボクシングの残酷さに言葉が出ない。
俺達の矢吹が…。
その場にどれほどへたり込んでいたのか。
喫煙所で矢吹を応援しに来た中日本のファンと少し話すが…言葉が出ない。
ロビーでタクシーを待つ間も頭の中がぼうっとする。
そうこうしているうちに、帰路に就く矢吹陣営が目の前を通り過ぎようとしていく。
こちらに気付いた矢吹が「すいませんでした」と言いながらこちらに歩みを進めるが…
「お疲れさまでした。」とだけ答えて下を向いてしまった。
何を言えばいいのかわからない。
その少しあと、タクシーが到着しリュックを抱えて乗り込む。
運転手と力なく話した10分間…
「岡山から世界王者が出るから、応援してあげてください。
きっとこの町の誇りになる選手です。」
総社駅に着いたが30分程電車がない。
切れた煙草を買おうと思うが、コンビニもなく…しばらく徘徊。
最終的に煙草も買えずに駅に戻ると、緑ジムの村上トレーナーと電車が重なる。
同じ車両になったため、とりあえず声をかける。
「マッチョブログいつも見てます。」
彼が書いているブログは中日本の数少ない情報収集源だったりする。
矢吹の話で、意気消沈する電車内。
無理やりYAZAWAなリングアナの話にすり替える。
村上トレーナーが、JJファイト(オヤジファイト)でYAZAWAっぽい衣装を着て
リングアナを務めるのは刈谷の名物化している。
ワイワイと話している最中、電話が鳴っていたため、一旦倉敷で下車。
電話の先は、ユーリのことを教えてくれた元倉敷守安の選手。
「すげぇ右ストレートでした。あんなのこれまで見たことがありません。
すべてが完璧でした。こういう試合であんなのが出せる選手です。実力も、運命も握ってます。
きっとチャンピオンになると思います。」
とりあえず、倉敷で胃袋に食料を詰め込み、岡山へ…。
電車の中で一緒になったご婦人二人組に、「岡山からチャンピオンが…」
戸惑うご婦人達。
…奈良から来てる観光客だったらしい。
岡山に着いてそこから新幹線。
少し落ち着いたため、go-rockで手に入れたパンフレットの山から適当に一枚取り出す。
トリプル世界戦の分厚いもの。
選手のことが事細かく紹介されるそのパンフレットを見て、泣けてきた。
いつか…矢吹もここにこんなふうに載るはずだった。
それだけの力はあったと思う。
矢吹…移籍が現実味を増したとき、僕は彼が東日本の大手ジムに行くものだとばかり思っていた。
我らが中日本の矢吹が、みんなの矢吹になるものだと思っていた。
だから、刈谷で最後になった試合を見ながら。次に見るときはテレビの世界戦かもしれない…
なんて思いでいた。
「中日本でこんなに応援してくれる人がいる。」
そう言って名古屋の老舗、緑ジムを選んだ矢吹。
あれから…矢吹はまだ中日本のリングを踏んでいない。
矢吹の前で、何もできずに敗れていった中村 潔(ARITOMI)は、あの後…強くなった。
負けていいなんて、ボクシングにはあり得ない。
でも、負けてさらなる強さを手に入れるボクサーは何人もいる。
信じて待つ。
それしかできないから、信じて待つ。
運命が交錯した岡山総社。
離れ逝く運命の地に思いを馳せながら、ぐったりと新幹線の座席に座って名古屋を目指す。
目を閉じると、力石 政法(緑)の顔が浮かんだ。
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